大おおきな注目ちゅうもくを集あつめていたヤマハ音楽振興会やまはおんがくしんこうかい他たの音楽おんがく教室きょうしつ対たいJASRACの音楽おんがく教室きょうしつでの演奏えんそうにおける著作ちょさく権けん裁判さいばんの第だい一いち審しん判決はんけつが出でました（NHKニュース）。「東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょは使用しよう料りょうを請求せいきゅうできるという判断はんだんを示しめし、教室きょうしつ側がわの訴うったえを退しりぞけました。」ということです。本日ほんじつ（2/28）のJASRAC側がわ記者きしゃ会見かいけんにも出席しゅっせき予定よていなので追加ついか情報じょうほうがあれば、ここに追記ついきします。

まずは、関連かんれん情報じょうほうをまとめておきましょう。この件けんについては、Yahoo!個人こじんニュースで何なん本ほんか書かいてきていますので以下いかにまとめます。

• 「JASRACが音楽おんがく教室きょうしつからも著作ちょさく権けん使用しよう料りょうを徴収ちょうしゅうしようとする法的ほうてき根拠こんきょは何なにか？」（2017/02/02）
• 「JASRAC vs 音楽おんがく教室きょうしつ：法廷ほうていで争あらそった場合ばあいの論点ろんてんを考かんがえる」（2017/02/06）
• 「JASRACと音楽おんがく教室きょうしつの最新さいしんのい分いぶんを検討けんとうする」（2017/3/2）
• 「著作ちょさく権けん法ほうにおける「一人ひとりでも公衆こうしゅう」理論りろんを説明せつめいする」（2017/05/16）
• 「対たいJASRAC訴訟そしょう、ヤマハに勝かち目めはあるか」（2017/5/16）
• 「JASRACの「潜入せんにゅう調査ちょうさ」は合法ごうほうか？」（2019/07/08）
• 「JASRAC「潜入せんにゅう調査ちょうさ」の歴史れきしについて」（2019/07/09）

また、たまに誤解ごかいされている重要じゅうようなポイントを以下いかにまとめます。

• この訴訟そしょうは、JASRACがヤマハ音楽振興会やまはおんがくしんこうかいを訴うったえたのではなく、ヤマハ音楽振興会やまはおんがくしんこうかいらが著作ちょさく権けんに基もとづく請求せいきゅう権けんがないことの確認かくにんを求もとめてJASRACを訴うったえたものです。
• 私立しりつ・公立こうりつ、および、小しょう・中なか・高だか・大学だいがく・音大おんだい問とわず学校がっこうでの授業じゅぎょうにおける演奏えんそうは今回こんかいの話はなしには関係かんけいありません（これらの演奏えんそうは著作ちょさく権けん法ほう上じょうの規定きていにより、著作ちょさく権けんの許諾きょだくは不要ふようです）。JASRACは学校がっこうから徴収ちょうしゅうするとは言いっていませんし、著作ちょさく権けん法ほう上じょうそれは不可能ふかのうです。
• JASRACは、音楽おんがく教室きょうしつでJASRAC管理かんりの楽曲がっきょくを使つかうなとか、法外ほうがいな使用しよう料りょうを払はらえと言いっているわけではありません、年額ねんがく受講じゅこう料りょう収入しゅうにゅうの2.5%を著作ちょさく権けん料りょうとして支払しはらうことを求もとめています（生徒せいと側がわに全額ぜんがく負担ふたんが行いくと仮定かていすると月謝げっしゃ10,000円えんの場合ばあい月謝げっしゃ10,250円えんになるということです）（追記ついき：2.5%はJASRAC管理かんり曲きょくを使つかったレッスンの受講じゅこう料りょう収入しゅうにゅうにかかります、クラシック曲きょくのみのようなJASRAC管理かんり曲きょくをまったく使つかわないレッスンから著作ちょさく権けん使用しよう料りょうが徴収ちょうしゅうされることはありません）。もちろん、大たいした金額きんがくではないので黙だまって払はらえばいいじゃないかとは思おもいませんが、これによって「日本にっぽんの音楽おんがく教育きょういくが死しぬ」「子供こどもたちから音楽おんがくが奪うばわれる」と批判ひはんするのは針小棒大しんしょうぼうだいと思おもいます。
• JASRACが、音楽おんがく教室きょうしつから徴収ちょうしゅうした使用しよう料りょうは作詞さくし家か・作曲さっきょく家かに分配ぶんぱいされますが、全曲ぜんきょく報告ほうこく方式ほうしきが採用さいようされますので、本来ほんらいの権利けんり者しゃに分配ぶんぱいされないという批判ひはんはあたりません。
• 音楽おんがく教室きょうしつというと著作ちょさく権けん切きれのクラシック曲きょくのピアノ演奏えんそうを教おしえるようなイメージが強つよいかもしれません。確たしかに、そういう教室きょうしつもあるのでしょうが、ヤマハ音楽振興会やまはおんがくしんこうかいが提供ていきょうする教室きょうしつでの中なかにはJ-POPを使つかったカルチャースクール（既すでにJASRACへの使用しよう料りょう支払しはらい対象たいしょうになっています）と事実じじつ上じょう同おなじような教室きょうしつもあります（たとえば、「青春せいしゅんポップス」「青春せいしゅんポップス」は今回こんかいの訴訟そしょうの対象たいしょう外がいであったことがわかりました、ただし、カルチャースクールにかなり近ちかい「ヤマハの大人おとなの音楽おんがくレッスン」は対象たいしょうです）。

裁判さいばんでは、上記じょうき記事きじでも予測よそくしたように、著作ちょさく権けん法ほう22条じょうの「著作ちょさく者しゃは、その著作ちょさく物ぶつを、公衆こうしゅうに直接ちょくせつ見みせ又または聞きかせることを目的もくてきとして（略りゃく）上演じょうえんし、又または演奏えんそうする権利けんりを専有せんゆうする。」の解釈かいしゃくが重要じゅうような争点そうてんになったようです（その他たの争点そうてんは、既すでに判例はんれいの相当そうとうな積つみ重かさねがあり覆くつがえすことは困難こんなんです）。ここで、音楽おんがく教室きょうしつ側がわのレッスンでの演奏えんそうはき手きてに感動かんどうを与あたえることを目的もくてきとする演奏えんそうではないので、公衆こうしゅうに直接ちょくせつ見みせ又または聞きかせることを目的もくてきとしたものではないというような主張しゅちょうをしたようです。しかし、これはちょっと無理むり筋すじの解釈かいしゃくに思おもえますし、ヤマハ音楽振興会やまはおんがくしんこうかいのパンフレット中ちゅうに「講師こうしのピアノ演奏えんそうを楽たのしめる」等とうと書かいている点てんとも矛盾むじゅんしています。裁判官さいばんかんが画期的かっきてき解釈かいしゃくを行おこなう可能かのう性せいもなくはないと思おもっていましたが、そうはなりませんでした。

ヤマハ側がわが控訴こうそするかどうかはわかりません（追記ついき：控訴こうそ検討けんとう中ちゅうとのことです）が、現行げんこう著作ちょさく権けん法ほうの解釈かいしゃく的てきには支払しはらいの義務ぎむなしとするのはなかなか困難こんなんでしょう（別べつ裁判さいばんや交渉こうしょうにて2.5%の妥当だとう性せいについて争あらそう余地よちは残のこっていると個人こじん的てきには思おもいます）。著作ちょさく権けん法ほう改正かいせいという手てもありますが、たとえば、米国べいこくを初はじめとする諸しょ外国がいこくにおいても、学校がっこう以外いがいの営利えいり目的もくてきの音楽おんがく教室きょうしつ、ダンス教室きょうしつとの営利えいり目的もくてきでの利用りようでは著作ちょさく権けん者しゃの許諾きょだくを得える必要ひつようがあることを考かんがえると、なぜ日本にっぽんだけ特別とくべつ扱あつかいしなければならないかという議論ぎろんは生しょうじるでしょう。