爆風ばくふうスランプのドラマーであるファンキー末吉すえきち氏しが、JASRACの運営うんえいに関かんして文化庁ぶんかちょうに上申じょうしん書しょを提出ていしゅつしたというニュースがありました。

末吉すえきち氏しが既すでにJASRACと裁判さいばんで争あらそっていたことについては既すでに書かいています（過去かこ記事きじ「JASRAC対たいファンキー末吉すえきち氏しの地裁ちさい判決はんけつ文ぶんが公開こうかいされました」、「JASRAC、第だい二に審しんでもファンキー末吉すえきち氏しに勝訴しょうそ」）。これらの裁判さいばんでは末吉すえきち氏し側がわの主張しゅちょうはほとんど認みとめられていません（なお、記事きじにはしていないですが最高裁さいこうさいへの上告じょうこくも棄却ききゃくされています（末吉すえきち氏しによる関連かんれんブログ記事きじ））。

裁判さいばんではいくつかの争点そうてんがありましたが、その重要じゅうようなもののひとつがJASRACの作曲さっきょく家か・作詞さくし家かに対たいする分配ぶんぱい金きんの計算けいさん方法ほうほうが不透明ふとうめいであるという末吉すえきち氏し側がわの主張しゅちょうです。この点てんについて、判決はんけつ文ぶんでは、それは作曲さっきょく家か・作詞さくし家かとJASRAC間あいだの問題もんだいであって、利用りよう者しゃ（たとえば、ライブハウス経営けいえい者しゃ）とJASRAC間あいだの問題もんだいではないとされています。たとえて言いえば、税金ぜいきんの使つかい方かたが不透明ふとうめいだと思おもうので税金ぜいきんを払はらわないというのは通とおらない（不満ふまんがあるなら別途べっと行政ぎょうせい訴訟そしょうするなり、議員ぎいんに陳情ちんじょうするなりせよ）というようなものでしょう。ということで、末吉すえきち氏しが作曲さっきょく家か・作詞さくし家かの立場たちばとして問題もんだい改善かいぜんを求もとめたというのが今回こんかいの話はなしの中心ちゅうしんです（それ以外いがいの争点そうてんもありますがまた後日ごじつ）。

ところで、本件ほんけんに関かんして、たとえば、ハフィントンポストの記事きじでは「JASRACからの分配ぶんぱい、1円えんもない」とタイトルに書かいてあったりすることもあってか「JASRACが丸々まるまるピンハネしてる」なんて与太よた話ばなしをネットに書かいている人じんがいたりしますが、末吉すえきち氏しが爆風ばくふうスランプ時代じだいの楽曲がっきょく（特とくにCMで使つかわれたRunner）によってJASRACから数すう千せん万まん円えん単位たんいの収入しゅうにゅうを得えていたことはご本人ほんにんも認みとめています（参照さんしょう記事きじ）。今回こんかいのケースは、あくまでも、同氏どうしの最近さいきんのバンド「X.Y.Z.→A」の楽曲がっきょくのライブハウスでの演奏えんそう料りょうが適切てきせつに支払しはらわれていないのではという話はなしです。

この問題もんだいを正ただしく理解りかいするためには、JASRACの著作ちょさく権けん使用しよう料りょう分配ぶんぱいの仕組しくみを知しる必要ひつようがあります（参照さんしょう過去かこ記事きじ「JASRACの使用しよう料りょう分配ぶんぱい方法ほうほうを批判ひはんする前まえに知しっておきたいこと」）。

CD（セルおよびレンタル）、出版しゅっぱん、カラオケ、コンサートでの演奏えんそう、（ほとんどの）放送ほうそう等とうは、利用りよう楽曲がっきょくに応おうじて著作ちょさく権けん料りょうが作詞さくし家か・作曲さっきょく家かに分配ぶんぱいされています。問題もんだいになるのは分配ぶんぱい金きんがサンプリング調査ちょうさによって計算けいさんされる形態けいたいです。ライブハウスにおける生なま演奏えんそうがこれに相当そうとうします。サンプリングでやっている以上いじょう、多おおくのアーティストにカバー演奏えんそうされるスタンダード曲きょく（想像そうぞうですが、ビートルズやカルロスジョビン等とうの作品さくひんがそれにあたるのではないかと思おもいます）以外いがいは、分配ぶんぱいの対象たいしょうから漏もれてしまう可能かのう性せいが生しょうじるのはやむを得えません。

すべてのライブハウスにおけるすべての演奏えんそう楽曲がっきょくを捕捉ほそくできれば理想りそう的てきですが、現実げんじつ的てきにはそれは不可能ふかのうであり、ある程度ていどのアバウトさは避さけられません。人件じんけん費ひなど考かんがえずにすべての演奏えんそう権けん使用しよう料りょうを正確せいかくに1円えん単位たんいで分配ぶんぱいせよ（ただし、事務じむ手数料てすうりょうは現状げんじょう維持いじ）と言いう人ひとがいたとすれば、それはモンスターカスタマーの発想はっそうです（誤解ごかいを避さけるために念ねんのために言いっておくと末吉すえきち氏しがそう主張しゅちょうしているという意味いみではありません）。

ライブハウスでの演奏えんそうの分配ぶんぱいについては、JASRACのサイトに以下いかの情報じょうほう（FAQのQ10）があります。

というわけでまったくのブラックボックスというわけではないのですが、より多おおくの情報じょうほうを開示かいじせよ、そして、より公平こうへいな分配ぶんぱいが実現じつげんされるようにせよという末吉すえきち氏しの主張しゅちょう自体じたいは真まっ当とうなものだと思おもいます（とは言いっても具体ぐたい的てきな店名てんめいと調査ちょうさ時期じきまで公表こうひょうしてしまうとサンプリング調査ちょうさの無む作為さくい抽出ちゅうしゅつの意味いみがなくなってしまうので自みずから限界げんかいはありますが）。

最終さいしゅう的てきには、上記じょうきの「利用りよう楽曲がっきょく報告ほうこくシステム」（J-OPUS）を普及ふきゅうさせ、ライブハウスでの生なま演奏えんそうも包括ほうかつ契約けいやく＋サンプリングではなく楽曲がっきょく別べつ報告ほうこくの形態けいたいに進すすめていくべきと思おもいます（聞きいた話はなしではJ-OPUSは結構けっこう使つかいにくいらしいので改善かいぜんが必要ひつようかもしれません）。また、その前提ぜんていとして作品さくひんデータベースの整備せいびとモダナイズも重要じゅうような案件あんけんになってくるでしょう（関連かんれん過去かこ記事きじ）。