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宇宙広場で考える: 【改悪入管法を読む】監理措置とはなにか?〈3〉

2023ねん12月14にち

改悪かいあく入管にゅうかんほうむ】監理かんり措置そちとはなにか?〈3〉


改悪かいあく入管にゅうかんほうむ】監理かんり措置そちとはなにか?〈1〉〈2〉からのつづき


1.はじめに

 改悪かいあく入管にゅうかんほう創設そうせつされることになっている監理かんり措置そち制度せいどについての記事きじは、3かいとなる今回こんかい最後さいごです。この制度せいど最大さいだい問題もんだいてんは、「監理かんりじん」として入管にゅうかん選定せんていした人間にんげんに、「監理かんりしゃ」(監理かんり措置そちけて収容しゅうようかれたひと)の生活せいかつ行動こうどう監視かんしさせるというところにあります。監理かんりじん」には入管にゅうかんへの届出とどけで報告ほうこく義務ぎむされ、報告ほうこくをおこたると罰則ばっそく対象たいしょうになります。

 今回こんかい記事きじでは、その「監理かんりじん」について、あたらしい入管にゅうかんほう条文じょうぶんでどう規定きていしているのか、というところからみていきます。



2.「監理かんりじん」について

 改定かいていほうで「監理かんりじん」について規定きていしているのは、監理かんり措置そちAはだい44じょうの3の各項かくこう監理かんり措置そちBはだい52じょうの3の各項かくこうです。この「監理かんりじん」の規定きてい内容ないようは、監理かんり措置そちAと監理かんり措置そちBとでほぼおなじです。なので、ここでは基本きほんてきには監理かんり措置そちBのほうの条文じょうぶんだけをみていくことにします。


(1)監理かんりじん選定せんてい

52じょうの3だい1こう監理かんり措置そちB)

監理かんりじんは、次項じこうからだいこうまでに規定きていする監理かんりじん責務せきむ理解りかい当該とうがい監理かんりしゃ監理かんりじんとなることを承諾しょうだくしているものであつて、その任務にんむ遂行すいこう能力のうりょく考慮こうりょして適当てきとうみとめられるものなかから、監理かんり措置そち決定けっていをする主任しゅにん審査しんさかん選定せんていするものとする。」


 監理かんりじん選定せんていするのは主任しゅにん審査しんさかんかく地方ちほう入管にゅうかんきょく局長きょくちょうなど)です。



(2)監理かんりじん責務せきむ

 うえでみた52じょうの3だい1こうかれているように、どうじょうだい2こうからだい5こうで「監理かんりじん責務せきむ」なるものが規定きていされています*1

 さて、現行げんこうかり放免ほうめん制度せいどにおいては、入管にゅうかんきょくかり放免ほうめん許可きょかするにあたって、おおくの場合ばあい身元みもと保証人ほしょうにんをたてることをもとめてきます。かり放免ほうめんされるひと家族かぞく親族しんぞく友人ゆうじんのほか、支援しえんしゃ弁護士べんごし身元みもと保証人ほしょうにんになっています。監理かんり措置そち制度せいどにおける「監理かんりじん」は、このかり放免ほうめん保証人ほしょうにん一見いっけんているようにみえますが、じつはまったくことなります。

 かり放免ほうめん保証人ほしょうにんは、「下記かきものかり放免ほうめん許可きょかされたうえは、法令ほうれい遵守じゅんしゅする(させる)とともに、かり放免ほうめんされたしたがう(したがわせる)ことを誓約せいやくします」とかれた書面しょめん署名しょめいもとめられます。しかし、そもそも入管にゅうかんほうじょう、「保証人ほしょうにん」についての規定きていなにもありません。

 これにたいし、監理かんり措置そち制度せいどにおける監理かんりじんには、入管にゅうかんほうで「監理かんりじん責務せきむ」なるものが規定きていされているわけです。まずこのてんが、監理かんり措置そちかり放免ほうめんおおきくことなるてんです。

 では、その「責務せきむ」の内容ないようをひとつひとつみていきましょう。


だい52じょうの3だい2こう監理かんり措置そちB)

監理かんりじんは、自己じこ監理かんりする監理かんりしゃによる出頭しゅっとう確保かくほその監理かんり措置そち条件じょうけん遵守じゅんしゅ確保かくほのために必要ひつよう範囲はんいないにおいて、当該とうがい監理かんりしゃ生活せいかつじょうきょう把握はあくならびに当該とうがい監理かんりしゃたいする指導しどうおよ監督かんとくおこなものとする。」


 ここが監理かんり措置そち制度せいど問題もんだい核心かくしん部分ぶぶんです。監理かんり措置そちとは、監理かんりじん監理かんりしゃ生活せいかつじょうきょう監視かんし把握はあくさせ、監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんしていないかその行動こうどう見張みはらせるという制度せいどであるわけです。


だい52じょうの3だい3こう監理かんり措置そちB)

監理かんりじんは、自己じこ監理かんりする監理かんりしゃによる出頭しゅっとう確保かくほその監理かんり措置そち条件じょうけん遵守じゅんしゅ確保かくほするため、当該とうがい監理かんりしゃからの相談そうだんおうじ、当該とうがい監理かんりしゃたいし、住居じゅうきょ維持いじかか支援しえん必要ひつよう情報じょうほう提供ていきょう助言じょげんその援助えんじょおこなうようにつとめるものとする。」


 このこうむと、このあたらしい制度せいど監理かんりじんけるものとして、支援しえんしゃなども想定そうていされているようにおもえます。現行げんこうかり放免ほうめん制度せいどでは、支援しえんしゃ弁護士べんごし身元みもと保証人ほしょうにんけているケースがすくなくありません。入管にゅうかん施設しせつ収容しゅうようされたひとのなかには、かり放免ほうめん保証人ほしょうにんたのめる家族かぞく親族しんぞく日本にっぽんにおらず、たよりにできる同国どうこくじんのコミュニティもないというひとすくなくありません。そうしたひとは、支援しえんしゃ弁護士べんごし保証人ほしょうにんけてもらわなければ、かり放免ほうめん申請しんせいすることができないわけです。

 入管にゅうかん収容しゅうよう収容しゅうようされるひとにとってきわめて過酷かこくなものであること、医療いりょう放置ほうち職員しょくいんによる暴行ぼうこうなどの人権じんけん侵害しんがい事件じけん横行おうこうしていることは、近年きんねんたびたび報道ほうどうされ、おおくのひとるところとなっています。そもそも、このブログでもなんいてきたように、劣悪れつあく環境かんきょうでの長期ちょうき収容しゅうよう入管にゅうかん帰国きこく強要きょうよう手段しゅだんとして意図いとてき戦略せんりゃくてきにもちいてきたのであり、そのことを法務大臣ほうむだいじん入管にゅうかん幹部かんぶらはかくしてすらいません*2

 まぎれもなく入管にゅうかん収容しゅうよう施設しせつでおこなわれていることは拷問ごうもんであり、長期間ちょうきかん収容しゅうようされて心身しんしん破壊はかいされるひとはあとをたたず、難民なんみん申請しんせいしゃ外部がいぶとの通信つうしんをいちじるしく誓約せいやくされた環境かんきょう収容しゅうようされて自分じぶん難民なんみんであることの立証りっしょう作業さぎょう入管にゅうかんによって日々ひび妨害ぼうがいされています。

 支援しえんしゃ弁護士べんごしかり放免ほうめん保証人ほしょうにんけてきたのは、こうした入管にゅうかんによる人権じんけん侵害しんがいゆるせないからであって、またそこに支援しえん切実せつじつ必要ひつようとされているからにほかなりません。入管にゅうかん手先てさきになるために保証人ほしょうにんけている支援しえんしゃ弁護士べんごしなどおりません。

 ところが、監理かんり措置そちにおいては、監理かんりじんはいわば入管にゅうかん手先てさきとして監理かんりしゃ監視かんしし、その行動こうどう監督かんとくすることがその「責務せきむ」としてされるのです。監理かんりしゃにとっては、監理かんり措置そちによって収容しゅうよう施設しせつからることができても、生活せいかつじょうきょう行動こうどう日々ひびどのようにすごしているのか、外出がいしゅつさき家賃やちん医療いりょう生活せいかつなどをそれぞれどうやって捻出ひねりだしているのか、報酬ほうしゅうける活動かつどうをしていないか、など*3)を、入管にゅうかんへの届出とどけで報告ほうこく義務ぎむされた監理かんりじんによってかん監督かんとくされるということになります。

 (1)でみたように、監理かんりじん選定せんていするのは入管にゅうかん主任しゅにん審査しんさかん)ですから、現在げんざいかり放免ほうめん保証人ほしょうにんけている支援しえんしゃのすべてを、入管にゅうかん監理かんりじんとして選定せんていするとはかぎらないわけですけれども、支援しえんしゃにとって、かり放免ほうめん保証人ほしょうにんになるのと監理かんり措置そちにおける監理かんりじんになるのとでは、その意味いみあいはまったくことなってきます。



(3)監理かんりじんされる届出とどけで義務ぎむ

 「監理かんりじん責務せきむ」としてつぎに規定きていされているのは、主任しゅにん審査しんさかんたいする届出とどけで報告ほうこく義務ぎむです。

 まず、届出とどけで義務ぎむについて。どのようなときに監理かんりじんとどをしなければならないとされるのか、以下いかにまとめておきます*4


監理かんり措置そちA(だい44じょうの3だい4こう)

監理かんりしゃがつぎのいずれかに該当がいとうすることをったとき。

  • 逃亡とうぼうし、また逃亡とうぼうするとうたがうにりる相当そうとう理由りゆうがある。
  • 証拠しょうこ隠滅いんめつし、また隠滅いんめつするとうたがうにりる相当そうとう理由りゆうがある。
  • 監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんした。
  • 主任しゅにん審査しんさかん許可きょかけないで報酬ほうしゅうける活動かつどうおこなった、また収入しゅうにゅうともな事業じぎょう運営うんえいする活動かつどうおこなった。
  • 監理かんりしゃされた届出とどけで義務ぎむ(だい44じょうの6)に違反いはんした。

監理かんりしゃ死亡しぼうしたとき。

上記じょうきのほか、監理かんり措置そち継続けいぞくすることに支障ししょうしょうずる場合ばあいとして法務省ほうむしょうれいさだめる場合ばあい該当がいとうするとき。


監理かんり措置そちB(だい52じょうの3だい4こう)

監理かんりしゃがつぎのいずれかに該当がいとうすることをったとき。

  • 逃亡とうぼうし、また逃亡とうぼうするとうたがうにりる相当そうとう理由りゆうがある。
  • 収入しゅうにゅうともな事業じぎょう運営うんえいする活動かつどうしくは報酬ほうしゅうける活動かつどうおこない、またはこれらの活動かつどうおこなうとうたがうにりる相当そうとう理由りゆうがある。
  • 監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんした。
  • 監理かんりしゃされた届出とどけで義務ぎむ(だい52じょうの5)に違反いはんした。

監理かんりしゃ死亡しぼうしたとき。

上記じょうきのほか、監理かんり措置そち継続けいぞくすることに支障ししょうしょうずる場合ばあいとして法務省ほうむしょうれいさだめる場合ばあい該当がいとうするとき。


 前回ぜんかい記事きじべたように、監理かんり措置そちBは全面ぜんめんてき就労しゅうろう禁止きんしされる(例外れいがいなし)のにたいし、監理かんり措置そちAは就労しゅうろう報酬ほうしゅうける活動かつどう)が許可きょかされる場合ばあいがあります。

 監理かんり措置そちAにおいて監理かんりしゃ許可きょかがい就労しゅうろうをした場合ばあい監理かんり措置そちBにおいて監理かんりしゃ就労しゅうろうした場合ばあい監理かんりじん主任しゅにん審査しんさかんにこれをとどなければならないということになります。また、監理かんりしゃの「逃亡とうぼう」や監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんにも監理かんりじん届出とどけで義務ぎむされています。

 なお、うえ監理かんりじん届出とどけで義務ぎむづけられている事項じこうのうち黄色きいろくマークした部分ぶぶんは、監理かんり措置そち取消とりけ事由じゆう監理かんり措置そちA:だい44じょうの4だい2こう, 監理かんり措置そちB:だい52じょうの4だい2こう)にもなっています。したがって、これらを監理かんりじんとど場合ばあい監理かんり措置そちされて監理かんりしゃ収容しゅうようされてしまうということになりえます。

 そして、あとでべるように届出とどけでをしなかったり、虚偽きょぎ届出とどけでをした場合ばあい監理かんりじん罰則ばっそく(10まんえん以下いか過料かりょう)の対象たいしょうとなります。たとえば、監理かんりしゃ自身じしん家族かぞく生活せいかつのためにアルバイトをしたのをったとき、監理かんりじんがこれを入管にゅうかんとどれば監理かんりしゃ収容しゅうようされてしまうでしょう。しかし、とどなければ監理かんりじん自身じしん罰則ばっそくされるかもしれないということです。



(4)監理かんりじんされる報告ほうこく義務ぎむ

 うえ届出とどけで義務ぎむにくわえ、監理かんりじん主任しゅにん審査しんさかんたいする報告ほうこく義務ぎむ規定きていされています。


監理かんり措置そちB:「主任しゅにん審査しんさかんは、監理かんりしゃによる出頭しゅっとう確保かくほその監理かんり措置そち条件じょうけん遵守じゅんしゅ確保かくほのために必要ひつようがあるときは、法務省ほうむしょうれいさだめるところにより、監理かんりじんたいし、当該とうがい監理かんりしゃ生活せいかつじょうきょう監理かんり措置そち条件じょうけん遵守じゅんしゅじょうきょうその法務省ほうむしょうれいさだめる事項じこう報告ほうこくもとめることができる。この場合ばあいにおいては、監理かんりじんは、法務省ほうむしょうれいさだめるところにより、当該とうがい報告ほうこくをしなければならない。」(だい52じょうの3だい5こう)


 監理かんり措置そちAについても、ほぼおな内容ないよう規定きていがあります(だい44じょうの3だい5こう)。

 条文じょうぶんは、「主任しゅにん審査しんさかんは、……監理かんりじんたいし……報告ほうこくもとめることができる」というかたをしているので、一見いっけんしたところ、なにか特別とくべつ場合ばあいにだけ「報告ほうこくもとめる」のかなという印象いんしょうけるのですけれども。しかし、「報告ほうこくもとめる」かどうかの判断はんだん結局けっきょく入管にゅうかんがすることになるので、すべてのケースで監理かんりじん報告ほうこく要求ようきゅうされるとかんがえたほうがよいでしょう。そして、入管にゅうかん主任しゅにん審査しんさかん)がもとめたら、監理かんりじんは「当該とうがい報告ほうこくをしなければならない」とその報告ほうこく義務ぎむづけられます。

 このように、監理かんりじん監理かんりしゃ生活せいかつ行動こうどう日常にちじょうてきかんさせて入管にゅうかん報告ほうこくさせ、監理かんりしゃがアルバイトして報酬ほうしゅうったり監理かんり措置そち条件じょうけんへの違反いはんがあったりすればそれを入管にゅうかんにたれめと要求ようきゅうするのが、この監理かんり措置そち制度せいどです。

 従来じゅうらいかり放免ほうめん制度せいどにおいても、入管にゅうかんは「動静どうせい監視かんし」としょうして、かり放免ほうめんしゃ生活せいかつ行動こうどう調査ちょうさ把握はあくしようとしてきました。この「動静どうせい監視かんし」を民間みんかんじんである監理かんりじんにも一部いちぶアウトソース(外部がいぶ委託いたく)しようというのが、監理かんり措置そち制度せいどであるとえるでしょう。監理かんりじん監理かんりしゃをスパイする役割やくわりわされることになります。

 監理かんりしゃにとってみれば、家族かぞく友人ゆうじん、あるいは支援しえんしゃ弁護士べんごしなど、自分じぶん支援しえんする立場たちば人間にんげんをつうじて、自身じしん行動こうどう監視かんし監督かんとくされるということです。自分じぶんにとって身近みぢか存在そんざい、しかも自分じぶん必要ひつよう生活せいかつじょう資源しげん情報じょうほう提供ていきょうしてくれるものから見張みはられるとなれば、あるめんでは入国にゅうこく警備けいびかんかんされる以上いじょうにその監視かんし強度きょうどたかくなるでしょう。

 入管にゅうかん視点してんからいえば、監理かんりしゃたいする支援しえんしゃらの親密しんみつさや信頼しんらい関係かんけい資源しげんとして利用りようすることで、より強度きょうどたかかん管理かんりをおこなおうというのが、監理かんり措置そち制度せいど創設そうせつした意図いととしてあるでしょう。入管にゅうかんという組織そしきうごかしている連中れんちゅうはん社会しゃかいせい邪悪じゃあくさがよくあらわれています。



(5)監理かんりじんたいする罰則ばっそく行政ぎょうせいばつとしての「過料かりょう」)

 入管にゅうかんほうだい70じょう以下いか罰則ばっそく規定きていとなっています。

 だい77じょうの2は「つぎ各号かくごういずれかに該当がいとうするものは、10まんえん以下いか過料かりょうしょする。」としており、今回こんかいほう改定かいていでは、そのだい2ごうからだい6ごうがそれぞれ監理かんりじん届出とどけで報告ほうこく義務ぎむ違反いはんへの罰則ばっそくとして新設しんせつされました。各号かくごう以下いかのとおりです。


  • だい2ごうだい44じょうの3だい4こう規定きていによる届出とどけでをせず、また虚偽きょぎ届出とどけでをしたもの」(→監理かんり措置そちAについての届出とどけで義務ぎむ違反いはん
  • だい3ごうだい44じょうの3だい5こう規定きていによる報告ほうこくをせず、また虚偽きょぎ報告ほうこくをしたもの」(→監理かんり措置そちAについての報告ほうこく義務ぎむ違反いはん
  • だい4ごうだい44じょうの3だい7こうだい52じょうの3だい6こうにおいて準用じゅんようする場合ばあいふくむ。)の規定きていによる届出とどけでをせず、また虚偽きょぎ届出とどけでをしたもの」(→監理かんり措置そちAおよびBについて、監理かんりじん辞任じにんする場合ばあい届出とどけで義務ぎむ違反いはん
  • だい5ごうだい52じょうの3だい4こう規定きていによる届出とどけでをせず、また虚偽きょぎ届出とどけでをしたもの」(→監理かんり措置そちBについての届出とどけで義務ぎむ違反いはん
  • だい6ごうだい52じょうの3だい5こう規定きていによる報告ほうこくをせず、また虚偽きょぎ報告ほうこくをしたもの」(→監理かんり措置そちBについての報告ほうこく義務ぎむ違反いはん



3.監理かんりしゃたいする罰則ばっそく規定きてい

 今回こんかいほう改定かいてい創設そうせつされた監理かんり措置そち制度せいどでは、監理かんりしゃたいする罰則ばっそく刑事けいじばつ!)が規定きていされています。このてんも、従来じゅうらいかり放免ほうめん制度せいどとのおおきなちがいです。


(1)就労しゅうろうたいする罰則ばっそく

だい70じょう つぎ各号かくごうのいずれかに該当がいとうするもの3ねん以下いか懲役ちょうえきしくは禁錮きんこしくは3ひゃくまんえん以下いか罰金ばっきんしょし、また懲役ちょうえきしくは禁錮きんこおよ罰金ばっきん併科へいかする

……

だい9ごう新設しんせつ) だい44じょうの2だい7こう規定きていする監理かんり措置そち決定けっていけたもので、だい44じょうの5だい1こう規定きていによる許可きょかけないで報酬ほうしゅうける活動かつどうおこなったものまた収入しゅうにゅうともな事業じぎょう運営うんえいする活動かつどうおこなったもの(在留ざいりゅう資格しかくをもって在留ざいりゅうするもののぞく。)

だい10ごう新設しんせつ) だい52じょうの2だい6こう規定きていする監理かんり措置そち決定けっていけたもので、収入しゅうにゅうともな活動かつどうおこなったものまた報酬ほうしゅうける活動かつどうおこなったもの


 だい9ごう監理かんり措置そちA、だい10ごう監理かんり措置そちBについての規定きていです。

 かり放免ほうめんについては、現行げんこうほう改定かいていほういずれにおいても、就労しゅうろうかり放免ほうめん条件じょうけん違反いはんにはわれうるものの、刑事けいじばつ対象たいしょうではありません。今回こんかい創設そうせつされる監理かんり措置そち制度せいどは、就労しゅうろう監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんうだけでなく、これを犯罪はんざいして刑罰けいばつ対象たいしょうにするというてんで、あるしゅ一線いっせんをこえた悪法あくほうだとうべきです。

 ごくごくたりまえのことをいますが、家族かぞくなどをふくめて支援しえんけられる人間にんげん関係かんけいがとぼしいひと、あるいは資産しさんのないひとにとって、就労しゅうろうきていていくのにかせない重要じゅうよう条件じょうけんになることがあります。社会しゃかい保障ほしょうからほとんど排除はいじょされている正規せいき滞在たいざい外国がいこくじんにとっては、なおさらそうです。したがって、就労しゅうろう禁止きんしするということが、ときとして「ね」とっているにひとしい場合ばあい存在そんざいするわけです。就労しゅうろう犯罪はんざい刑事けいじばつ監理かんり措置そち制度せいどは、きること、きようとすること自体じたい犯罪はんざいとしてばっしようとするものです。これは、たかが(とあえていますが)国家こっか出入国しゅつにゅうこく管理かんり業務ぎょうむを、人間にんげん生存せいぞんけんよりも大事だいじにする立法りっぽうであり、物事ものごと軽重けいちょうについての価値かちのつけかたが完全かんぜんくるっているとしかいようがありません。

 なお、2の(3)(4)でべたように、監理かんりじんには届出とどけで報告ほうこく義務ぎむされます。監理かんりじんにとっては、ほう規定きていされた義務ぎむたすことで、なんのつみもない、たんに仕事しごとをしてその対価たいかとして報酬ほうしゅうっただけの監理かんりしゃ刑務所けいむしょおくるということに、なりかねません。



(2)「逃亡とうぼう」にたいする罰則ばっそく

だい72じょう つぎ各号かくごうのいずれかに該当がいとうするものは、1ねん以下いか懲役ちょうえきしくは20まんえん以下いか罰金ばっきんしょし、またはこれを併科へいかする

……

だい3ごう新設しんせつ) だい44じょうの2だい1こうしくはだい6こうまただい52じょうの2だい1こうしくはだい5こう規定きていもとづきされた条件じょうけん違反いはんして、逃亡とうぼうし、また正当せいとう理由りゆうがなくて呼出よびだしにおうじないもの

……

だい6ごう新設しんせつ) だい54じょうだい2こう規定きていによりかり放免ほうめんされたもので、どうこう規定きていもとづきされた条件じょうけん違反いはんして、逃亡とうぼうし、また正当せいとう理由りゆうがなくて呼出よびだしにおうじないもの


 監理かんり措置そち制度せいどにおいては、上記じょうきだい6ごうのとおり、監理かんりしゃの「逃亡とうぼう」についても、監理かんり措置そち条件じょうけん違反いはんうばかりではなく、刑事けいじばつ規定きていされています。

 うえだい3ごうは、かり放免ほうめんしゃの「逃亡とうぼう」についての罰則ばっそく規定きていで、これも今回こんかい改定かいていほう新設しんせつされたものです。現行げんこうほうでは、かり放免ほうめんしゃの「逃亡とうぼう」はかり放免ほうめん条件じょうけん違反いはんわれ、かり放免ほうめん取消とりけし(→収容しゅうよう)の理由りゆうにはなりましたが、刑事けいじばつ対象たいしょうではありませんでした。



4.おわりに

 以上いじょう監理かんり措置そち制度せいど問題もんだいてんをみてきました。改悪かいあく入管にゅうかんほうは2024ねん6がつまでの施行しこう予定よていされているわけですけれど、ここで創設そうせつされる監理かんり措置そち制度せいどもまた、この法律ほうりつ施行しこうゆるしてはならない重要じゅうよう理由りゆうのひとつとえます。

 監理かんり措置そちについては、入管にゅうかん民族みんぞく差別さべつ人権じんけん侵害しんがいたたか全国ぜんこく市民しみん連合れんごうが「人間にんげん破壊はかいの『監理かんり措置そち制度せいど導入どうにゅう反対はんたい入管にゅうかんへの要請ようせい」とだいする反対はんたい声明せいめいしています。みじか文章ぶんしょうでわかりやすく監理かんり措置そち問題もんだいせい指摘してきしていますので、一読いちどくをおすすめします。

監理かんり措置そち制度せいど反対はんたい  声明せいめいぶん | 入管にゅうかん闘争とうそう市民しみん連合れんごう



ちゅう

*1: 監理かんり措置そちAにおいてはだい44じょうの3だい2こうからどう5こうで「監理かんりじん責務せきむ」が規定きていされています。条文じょうぶん内容ないよう監理かんり措置そちBのそれとほぼおなじ。 

*2: 入管にゅうかん長期ちょうき収容しゅうよう帰国きこく強要きょうよう手段しゅだんとして意図いとてき戦略せんりゃくてきにもちいてきたということは、以下いか記事きじなどでべました。 
「すがってはいけないワラ」とかうならでもげてだすけろよ 入管にゅうかんほう審議しんぎでの維新いしん梅村うめむら発言はつげんについて(2023ねん5がつ13にち
強制きょうせい送還そうかん忌避きひ」させないための期限きげん収容しゅうよう 入管にゅうかんちょう西山にしやま次長じちょう国会こっかい答弁とうべん憲法けんぽう36じょうへの挑戦ちょうせんではないのか?(2023ねん4がつ21にち
送還そうかん忌避きひしゃ発生はっせい抑制よくせいする適切てきせつ処遇しょぐう」とはなにか? 国家こっか犯罪はんざいとしての入管にゅうかん収容しゅうよう(2021ねん10がつ28にち
公然こうぜんされつつある拷問ごうもん――出国しゅっこく強要きょうよう手段しゅだんとしての期限きげん長期ちょうき収容しゅうよう(2021ねん4がつ3にち

*3: ここであげたれいは、いずれも現行げんこうかり放免ほうめん制度せいどにおいて、入国にゅうこく警備けいびかんが、自宅じたく訪問ほうもん隠密おんみつにおこなうかん尾行びこう本人ほんにんとの面接めんせつなどをつうじて、げん調査ちょうさしている事項じこうです。つまり、収容しゅうようかれたひとについてこういったことを入管にゅうかん把握はあくしたいということであって、それは監理かんり措置そちにおいても同様どうようだと推測すいそくできます。 

*4: 条文じょうぶんをそのままくとややわずらわしいので、言葉ことばをかえたり省略しょうりゃくしたりしながらまとめています。

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