未成年みせいねん仮かり放免ほうめん者しゃへの在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかについて 特例とくれい措置そちを「特例とくれい」たらしめているもの

 　日本にっぽんの入管にゅうかん体制たいせいは、いわば「あべこべな世界せかい」とでも言いうべきものです。そこでは、「異常いじょう」としか言いいようのないことがらが「普通ふつうのこと」としてまかりとおっている。「当あたり前まえ」のようにおこなわれていることは、ことごとく「おかしい」。そういう世界せかいです。

　入管にゅうかんに関かんするニュースに接せっするとき、私わたしたちはそこで報ほうじられた出来事できごとが「ニュース」、すなわち新奇しんきな出来事できごととして報ほうじられるということの異常いじょうさに、しばしばめまいのような感覚かんかくをいだくことになるのです。報ほうじられた出来事できごとそのものに驚おどろくというよりも、そこに「めずらしい」「特異とくいな」「異例いれいな」出来事できごとであるという意味いみを与あたえている文脈ぶんみゃくのほうにこそ、驚おどろかされることになります。

　たとえば、つぎのようなニュースに接せっしたときに。

「うれしいし驚おどろきも」タイ人じんの母親ははおやのもとで日本にっぽんで生うまれた高校生こうこうせいと中学生ちゅうがくせいの姉あね弟おとうとに在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょか　これまでは在留ざいりゅう資格しかくなく「仮かり放免ほうめん」 | SBC NEWS | 長野ながののニュース | SBC信越放送しんえつほうそう(2023年ねん12月26日にち(火)か 12:09)

　ここで報ほうじられているのは、高校生こうこうせい・中学生ちゅうがくせいの姉あね弟おとうとが在留ざいりゅう資格しかくを得えたという事実じじつです。しかし、そもそもこの事実じじつにニュースとして報ほうじるべき価値かち・意味いみを与あたえている文脈ぶんみゃくは何なになのかということにこそ、着目ちゃくもくしなければならないように思おもいます。

　それは、日本にっぽん生うまれの人ひとが、高校生こうこうせい・中学生ちゅうがくせいの年齢ねんれいにまでなりながら、在留ざいりゅう資格しかくをえられず、退去たいきょ強制きょうせい処分しょぶんの対象たいしょうになっていたということ、またそういうことが起おこりうるのだということです。これは、法ほう制度せいどそのもの、あるいはこれまでの入管にゅうかん政策せいさくそのものに根本こんぽん的てきな欠陥けっかんがあるというほかない事態じたいです。

　ところで、この姉あね弟おとうとへの在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかは、上うえの記事きじでも少すこしふれられていますが、今年ことし8月がつに発表はっぴょうされた政府せいふ方針ほうしんにもとづくものです。入管にゅうかん法ほうの改定かいてい法ほうの可決かけつ・成立せいりつ（6月がつ）を受うけて、8月がつ4日にち、法務大臣ほうむだいじんは、在留ざいりゅうが長期ちょうき化かした子こどもに対たいして、家族かぞく一体いったいとして在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかをし在留ざいりゅう資格しかくを与あたえる方向ほうこうで検討けんとうするとの政府せいふ方針ほうしんを発表はっぴょうしました^*1。

　以下いかの画像がぞうは、その法務大臣ほうむだいじん会見かいけんの資料しりょうです。

2023.8.4法務大臣ほうむだいじん記者きしゃ会見かいけん資料しりょう

入管にゅうかん法ほう改定かいてい法ほうの施行しこうまでに「今回こんかい限かぎり」のいわば特例とくれい措置そちとして

・日本にっぽんで出生しゅっしょうして

・小学校しょうがっこう、中学校ちゅうがっこう又または高校こうこうで教育きょういくを受うけており、

・引ひき続つづき本邦ほんぽうで生活せいかつをしていくことを真しんに希望きぼうしている

子こどもとその家族かぞく

を対象たいしょうとして在留ざいりゅう資格しかくの付与ふよを検討けんとうするとのことです。
　ただし、「親おやに看過かんかし難がたい消極しょうきょく事情じじょうがある場合ばあい」は除外じょがいするとのこと。

　ここでもやはり問とうべきなのは、そもそもこの特例とくれい措置そちを「特例とくれい」たらしめている文脈ぶんみゃくが何なになのかということです。日本にっぽん生うまれの学齢がくれい期きの子こどもたちが、在留ざいりゅう資格しかくを与あたえられずにいわば送還そうかん対象たいしょうとされた状態じょうたいで、200人にん以上いじょうもこんにちまで放置ほうちされてきたわけです。これは、入管にゅうかん政策せいさくの不ふ作為さくいによるものにほかなりません。

　いま「特例とくれい」として在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかをするかどうか入管にゅうかんは検討けんとうするのだといっているのですけれども、そもそも、その検討けんとうの対象たいしょうとなっている200人にんあまりの子こどもたちにいまのいままで在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかを「しない」という方針ほうしんをとってきたのが入管にゅうかんです。親おやが超過ちょうか滞在たいざいだったり非ひ正規せいき入国にゅうこくした経緯けいいがあったりということで、その子こも在留ざいりゅうの資格しかくを認みとめないまま放置ほうちしてきた。この、あきらかにおかしな従来じゅうらいの入管にゅうかんの方針ほうしんが、今回こんかいの特例とくれい措置そちを「特例とくれい」たらしめているのです。常態じょうたいがめちゃくちゃに異常いじょうなので、日本にっぽん生うまれの学齢がくれい期きの子こどもの在留ざいりゅうは正規せいき化かしましょう、その子こが日本にっぽんで暮くらしていくにあたって家族かぞく分離ぶんりが生しょうじないよう家族かぞく一体いったいで正規せいき化かしましょうという、ごくごく当あたり前まえの措置そちが「特例とくれい」としてなされることになるのです。

　さて、さきの姉あね弟おとうとのケースでは、「2人ふたりの母親ははおやは過去かこに非ひ正規せいき入国にゅうこくした経緯けいいがあ」るということで、今回こんかいの措置そちでは在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかがなされなかったということです。

　上うえの画像がぞうの法務大臣ほうむだいじんの会見かいけん資料しりょうでも、「親おやに看過かんかし難がたい消極しょうきょく事情じじょうがある場合ばあい」は今回こんかいの措置そちの対象たいしょうから除外じょがいするとし、その「看過かんかし難がたい消極しょうきょく事情じじょう」の例れいとして「不法ふほう入国にゅうこく・不法ふほう上陸じょうりく」をあげています。

　この件けんにかかわらず、入管にゅうかんは、同おなじ入管にゅうかん法ほう違反いはんでも、超過ちょうか滞在たいざい（入管にゅうかんの呼よぶところの「不法ふほう残留ざんりゅう」）とくらべて非ひ正規せいき入国にゅうこく（入管にゅうかん用語ようごで言いう「不法ふほう入国にゅうこく・不法ふほう上陸じょうりく」）をかなり重おもくみる方針ほうしんをとっています。しかし、入管にゅうかんがこうしてとっている方針ほうしんについて、それが妥当だとうなのかどうか、市民しみんの側がわからも批判ひはん・検討けんとうされるべきではないかと思おもいます。

　今回こんかい報道ほうどうされている東京とうきょう入管にゅうかんの措置そちは、姉あね弟おとうとに在留ざいりゅう資格しかくを認みとめる一方いっぽうでその母親ははおやには認みとめない（依然いぜん、退去たいきょ強制きょうせい処分しょぶんが取とり消けされていない状態じょうたいに置おく）というものですから、家族かぞくをバラバラに引ひき裂さくものです。子こどもたちの在留ざいりゅうは認みとめてやるが、母親ははおやは日本にっぽんから出でて行いけと。ひどいものです。たんに（とあえて言いいますけども）入国にゅうこくのさいに入管にゅうかん法ほうに規定きていされた手続てつづきにのっとらなかったというだけのことで、国家こっかがその権力けんりょくを使つかって家族かぞくをバラバラにするような措置そちをとるのが許ゆるされるのでしょうか。私わたしにはとうていそうは思おもえません。

　未成年みせいねんの仮かり放免ほうめん者しゃとその家族かぞくに在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかをせよという署名しょめいが呼よびかけられています。オンラインでも署名しょめいできます。

オンライン署名しょめい ・ 日本にっぽんに生うまれ育そだった未成年みせいねんの仮かり放免ほうめん者しゃとその家族かぞくに在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかを！ ・ Change.org

　入管にゅうかん法ほう改悪かいあく法ほうの可決かけつ・成立せいりつに先立さきだつ23年ねん5月がつ4日にちに始はじまった署名しょめい募集ぼしゅうですが、いまも募集ぼしゅうは続つづいているので、よかったらぜひ署名しょめいや情報じょうほう拡散かくさんをお願ねがいします。

注ちゅう

*1: 法務省ほうむしょう：法務大臣ほうむだいじん臨時りんじ記者きしゃ会見かいけんの概要がいよう（２０２３年ねん８月がつ４日にち（金かね））および画像がぞうの会見かいけん資料しりょう「送還そうかん忌避きひ者しゃのうち本邦ほんぽうで出生しゅっしょうした子こどもの在留ざいりゅう特別とくべつ許可きょかに関かんする対応たいおう方針ほうしんについて」（出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょう）参照さんしょう。