キーワードはLLMの多様たよう化か。民主みんしゅ化かをキーワードに進すすむAI開発かいはつのこれから

2023年ねんは「生成せいせいAI元年がんねん」とも呼よばれ、ChatGPTに代表だいひょうされる生成せいせいAIが急速きゅうそくに普及ふきゅう。2017年ねん頃ごろから提唱ていしょうされていた、専門せんもん知識ちしきを持もたない多おおくの人々ひとびとがAIを使つかえるようになる「AIの民主みんしゅ化か」という概念がいねんがここにきてあらためて注目ちゅうもくされるようになりました。そうしたなかで日本電信電話にほんでんしんでんわ（NTT）は独自どくじ開発かいはつした言語げんごモデル（LLM）を用もちいた生成せいせいAIのサービス「tsuzumi」の提供ていきょうを2024年ねん3月がつに開始かいし。ChatGPTのような対話たいわ型がたAIが大だい規模きぼLLMを志向しこうする一方いっぽうで、軽量けいりょうで専門せんもん性せいや高度こうど化かといったカスタマイズが比較的ひかくてき容易よういなtsuzumi のようなLLMの登場とうじょうは、AIの恩恵おんけいをさらに多おおくの人ひとに届とどけることを可能かのうにします。こうした「LLMの多様たよう化か」も、AIの民主みんしゅ化かの1つの姿すがたといえるでしょう。

急速きゅうそくに進すすむAI開発かいはつの波なみのなかで、AIの民主みんしゅ化かはどのような意味いみを持もつものなのか？ tsuzumiの開発かいはつをリードしたNTT人間にんげん情報じょうほう研究所けんきゅうじょ上席じょうせき特別とくべつ研究けんきゅう員いんの西田にしだ京介きょうすけ、同どう研究所けんきゅうじょにて視覚しかく読解どっかい技術ぎじゅつの研究けんきゅう開発かいはつに携たずさわる田中たなか涼太りょうた、企業きぎょうに対たいする生成せいせいAIを活用かつようしたビジネスコンサルティングやソリューション提供ていきょうに携たずさわるNTTコミュニケーションズ ジェネレーティブAIタスクフォース長ちょうの荒川あらかわ大輝だいきとともに、「AIの民主みんしゅ化か」の現在地げんざいちと、発展はってんの先さきにあるべき姿すがたを探さぐりました。

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ユーザーと提供ていきょう者しゃ、双方そうほうにとっての「AIの民主みんしゅ化か」が始はじまった

――ChatGPTに代表だいひょうされるAIツールの普及ふきゅうに伴ともない、「AIの民主みんしゅ化か」という言葉ことばを目めにすることが多おおくなりました。まず、この「AIの民主みんしゅ化か」というキーワードについて、皆みなさんはどのようにお考かんがえでしょうか？

西田にしだ京介きょうすけ（以下いか、西田にしだ）：ChatGPTのような生成せいせいAIが登場とうじょうしたことで、AIを活用かつようして生産せいさん性せいや効率こうりつ性せいを高たかめることのハードルが大おおきく下さがりました。昨今さっこん「AIの民主みんしゅ化か」といわれるようになった所以ゆえんは、こうした変化へんかによってAIの活用かつようが多おおくの人ひとにとって身近みぢかなものになったことが背景はいけいにあると思おもいます。ただ、一般いっぱんの人々ひとびとがAIを使つかうことができるシーンはまだまだ限定げんてい的てきであり、現実げんじつには民主みんしゅ化かの一いち歩ほ手前てまえの状況じょうきょうともいえると感かんじています。

一方いっぽうで、AIの研究けんきゅうのあり方かたも大おおきな変化へんかを迎むかえており、ある意味いみでAIが研究けんきゅう者しゃの手てを離はなれつつあると感かんじます。何なにが起おこっているのかというと、長年ながねんAIについて研究けんきゅうしてきた私わたしたちのような専門せんもん家かだけでなく、より多様たようで幅広はばひろい領域りょういきから人材じんざいを集あつめ、知見ちけんを持もち寄より、AIの研究けんきゅう開発かいはつを加速かそくさせていく機運きうんが高たかまっているのです。利用りようと研究けんきゅう開発かいはつの両面りょうめんにおいて、AIの分野ぶんやに新あたらしい人材じんざいや知見ちけんがものすごい勢いきおいで入はいってきている状況じょうきょうなのだと思おもいます。

「民主みんしゅ化か」にはさまざまな意味合いみあいが含ふくまれると思おもいますが、「民主みんしゅ主義しゅぎ化か」という観点かんてんでは、現状げんじょうChatGPTが生成せいせいAI分野ぶんやではかなりのシェアを占しめているという意味いみでまだまだ発展はってん途上とじょうにあると感かんじています。特とくにLLM（大だい規模きぼ言語げんごモデル）という視点してんで、真しんの「民主みんしゅ化か」を目指めざすにあたっては、1つの巨大きょだいなLLMですべてを解決かいけつしようとするだけではなく、多様たようなLLMの選択肢せんたくしが増ふえていくことが重要じゅうようだと考かんがえています。

私わたしたちNTT人間にんげん情報じょうほう研究所けんきゅうじょでは、AIが星座せいざのようにつながりながら問題もんだいを解決かいけつしていく「AIコンステレーション」というコンセプトを掲かかげているのですが、tsuzumiのような新あらたなLLMの開発かいはつを通つうじてこのコンセプトを実現じつげんしつつ、「AIの多様たよう化か」「AIの民主みんしゅ化か」に貢献こうけんしていきたいと考かんがえています。

田中たなか涼太りょうた（以下いか、田中たなか）：ChatGPTの登場とうじょう以降いこう、「プロンプトエンジニアリング」と呼よばれる技術ぎじゅつが脚光きゃっこうを浴あびています。これはAIから望のぞましい出力しゅつりょくを得えるために、指示しじや命令めいれいを設計せっけい、最適さいてき化かする技術ぎじゅつなのですが、ChatGPTはその活用かつようにおいて非常ひじょうに画期的かっきてきだったと思おもっています。これまでのAI技術ぎじゅつは、企業きぎょうや大学だいがくの研究けんきゅう者しゃが中心ちゅうしんとなって、データを集あつめたりモデルのアーキテクチャを変更へんこうしたりと、1年ねんから2年ねんの単位たんいで技術ぎじゅつ構築こうちくを行おこなってきました。しかし現在げんざいは、ChatGPTや私わたしたちが開発かいはつしたtsuzumiのような基盤きばんモデルさえあれば、普段ふだん使つかっているような言葉ことばで指示しじを与あたえるだけで、例たとえば文章ぶんしょうの要約ようやくや翻訳ほんやくをするプログラムを組くむなど新あらたなAIシステムを個人こじんで構築こうちくできるようになりました。これは非常ひじょうに大おおきなブレイクスルーであり、「AIの民主みんしゅ化か」を表あらわす現象げんしょうの1つであると考かんがえています。

荒川あらかわ大輝だいき（以下いか、荒川あらかわ）：従来じゅうらいのAIと違ちがい、生成せいせいAIでは「データがなくても何なにかしらの結果けっかが得えられるようになった」というのが大おおきなポイントといえます。従来じゅうらいはAIを活用かつようしたアプリケーションやシステムを動うごかす場合ばあい、まずは用意よういされた大量たいりょうの既存きそんデータが起点きてんとなり、そのデータをいかにして加工かこう、利用りようするかが主要しゅような論点ろんてんでした。

しかし、ChatGPTのような生成せいせいAIでは、あらかじめ学習がくしゅうデータを用意よういしなくてもAIが何なんらかの成果せいか物ぶつを生成せいせいしてくれます。データ面めんでの導入どうにゅうハードルの低ひくさから、さまざまなアプリケーションやシステムのUXパーツとしてAIが組くみ込こまれるようになり、結果けっかとして多おおくの人々ひとびとがAIに触ふれたり利用りようしたりする機会きかいが増ふえたこともAIの民主みんしゅ化かが進すすんだと言いわれる所以ゆえんだと思おもいます。

生成せいせいAIがもたらしたインパクトとは？