気候きこう変動へんどうによる地球ちきゅう規模きぼ自然しぜん災害さいがい新型しんがたコロナウイルス感染かんせんしょう蔓延まんえん紛争ふんそう問題もんだい深刻しんこく――。地球ちきゅう環境かんきょう国際こくさい情勢じょうせい激変げきへんするなか、国際こくさい協力きょうりょく国際こくさい協調きょうちょう重要じゅうようせいはますますたかまっている。そこで今回こんかい日本にっぽん国際こくさい協力きょうりょく実施じっし機関きかんである独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん国際こくさい協力きょうりょく機構きこう(JICA)の北岡きたおか伸一しんいち理事りじちょうと、世界せかい活躍かつやくする映画えいが監督かんとく河瀨かわせ直美なおみ2人ふたりによる特別とくべつ対談たいだんおこなった。活躍かつやくするフィールドはことなるものの、北岡きたおか理事りじちょう河瀨かわせ監督かんとくはともにグローバルな舞台ぶたい活躍かつやくし、「日本にっぽんひと)ならでは」といえる活動かつどう表現ひょうげんにより世界せかい各国かっこくからたか評価ひょうかている。両者りょうしゃ対談たいだんで、日本にっぽん世界せかいけて発信はっしんすべきこと、日本にっぽんにふさわしい国際こくさい協力きょうりょく未来みらいぞうなどをあつかたった内容ないようをここで紹介しょうかいする。

世界中せかいじゅう人々ひとびとが、もり自然しぜんおなじような感覚かんかくっている

――河瀨かわせ監督かんとく映画えいがには、さんがわなど日本にっぽんうつくしい自然しぜんや、田舎いなか人々ひとびといとなみがおお登場とうじょうします。そうしたご自身じしん作品さくひん世界せかいれられているのはなぜだとおかんがえですか。

河瀨かわせもえ朱雀すじゃく』(1997ねん)でカンヌ映画えいがさいのカメラドール(新人しんじん監督かんとくしょう)をいただいたときは、わたし自身じしんおどろいたんです。なぜわたしなのかと。それでフランスじん関係かんけいしゃいてみると「ぼくいまパリにいるけど、ぼくにも田舎いなかがある。くん映画えいがのようにひかりし、ふうき、そこにはちちははがいる。この感覚かんかく世界せかい共通きょうつうだ」とわれたんですね。

受賞じゅしょう当時とうじは20だいなかばで、まだ世界せかいなんてわからないわたしでしたが、「そうか、世界中せかいじゅう人々ひとびともり自然しぜんおなじような感覚かんかくっているんだ」と漠然ばくぜんおもったというのが当時とうじ記憶きおくです。

河瀨かわせ直美なおみ(かわせ・なおみ)
映画えいが監督かんとく
故郷こきょう奈良なら拠点きょてん映画えいがつくつづけ、一貫いっかんしたリアリティーの追求ついきゅうによる作品さくひん国内外こくないがいたか評価ひょうかける。代表だいひょうさくは『もえ朱雀すじゃく』『もがりもり』『2つまど』『あん』『ひかり』『あさる』など。DJ、執筆しっぴつ、プロデューサーなど表現ひょうげん活動かつどうひろげながらも、2010ねんから「なら国際こくさい映画えいがさい」をげ、後進こうしん育成いくせいにもちかられる。東京とうきょう2020オリンピック競技きょうぎ大会たいかい公式こうしき映画えいがそう監督かんとく担当たんとうするほか、2025ねん大阪おおさか関西かんさい万博ばんぱくテーマ事業じぎょうプロデューサーけんシニアアドバイザー、ユネスコ親善しんぜん大使たいし、バスケットボール女子じょし日本にっぽんリーグ会長かいちょうなどをつとめる。

北岡きたおかわたしはあの映画えいが舞台ぶたいちかくにある(奈良ならけん吉野よしのぐん吉野よしのまち出身しゅっしんで、祖父そふちちおとうと代々だいだい吉野よしのまち町長ちょうちょうをしているんですが、吉野よしのまちなが歴史れきしなかつちかわれた伝統でんとう文化ぶんかふか根差ねざまちです。戦前せんぜんまではにぎやかだったんですが、1970年代ねんだいごろから経済けいざい衰退すいたいはじめまして、ひとがどんどん近隣きんりん大阪おおさかなどの大都市だいとしって過疎かそすすみました。ところが90年代ねんだいになるとバブル経済けいざい崩壊ほうかいして、日本にっぽん全体ぜんたい停滞ていたいはじめました。一方いっぽう吉野よしのまちではふるいおてら仏像ぶつぞう大事だいじにしようという文化ぶんかつづいている。そのころからわたしおもっているのは、人々ひとびとにとっては経済けいざいとか軍事ぐんじよりも、その土地とち根差ねざ文化ぶんかのほうが重要じゅうようなのではないか。それは世界せかいどこでも共通きょうつうのはずだろう、ということなんです。

「あなたのくになに必要ひつようか、一緒いっしょかんがえよう」という精神せいしん

――国際こくさい協力きょうりょくはなしはいりましょう。日本にっぽんは60ねん以上いじょうわたって世界せかい開発かいはつ途上とじょうこく政府せいふ開発かいはつ援助えんじょ(ODA)による国際こくさい協力きょうりょくおこなってきました。その独自どくじのモデルが世界せかいから評価ひょうかされていますが、日本にっぽん国際こくさい協力きょうりょくにはどのような特徴とくちょうがあるのでしょうか。

北岡きたおか欧米おうべい援助えんじょ機関きかんは「aid」や「assistance」など、「支援しえん」を意味いみする言葉ことば使つかいます。そこにはどこかチャリティのにおいがするんですね。わかりやすくいうと、「うえから目線めせん」なんです。それにくらべて日本にっぽん国際こくさい協力きょうりょくは、「あなたのくになに必要ひつようか、一緒いっしょかんがえよう」という対等たいとう目線めせんでやっています。相手あいてこくとの信頼しんらい関係かんけい重視じゅうしする方法ほうほうで、国際こくさい協力きょうりょく機構きこう(JICA)の名前なまえとおり「協力きょうりょく」です。

国民こくみんそう所得しょとく(GNI)にたいするODA事業じぎょうりょうでいえば北欧ほくおう諸国しょこく英国えいこく、ドイツのほうが日本にっぽんよりおおきいですが、この日本にっぽんのやりかたおおくの途上とじょうこくから支持しじています。最近さいきんになって、フランスなどで「援助えんじょ」という言葉ことばではなく「協力きょうりょく」という言葉ことばえようといううごきもあります。

河瀨かわせ協力きょうりょく」という言葉ことばめた、日本にっぽん理念りねん世界せかいから評価ひょうかされているのですね。

北岡きたおかそうなんです。その理念りねんなかでもいま、JICAがとくに大事だいじにしているのが「人間にんげん安全あんぜん保障ほしょう」というコンセプトです。安全あんぜん保障ほしょうとは普通ふつうくにくに関係かんけいかんがえるものですが、「人間にんげん安全あんぜん保障ほしょう」はくにという枠組わくぐみをえてすべてのひと恐怖きょうふ欠乏けつぼうからまぬかれ、尊厳そんげんをもってきる権利けんりがあるというかんがかたです。

途上とじょうこく人々ひとびと堂々どうどうきる権利けんりがあります。かれらに協力きょうりょくするのは我々われわれ義務ぎむであり、かれらにはそれを権利けんりがある。本来ほんらいはそのくに政府せいふがやるべきことですが、国境こっきょうえてでも協力きょうりょくしましょうというかんがかたでやっています。

この「人間にんげん安全あんぜん保障ほしょう」を国内外こくないがいひろめたのは、JICA理事りじちょうまえにんしゃである緒方おがた貞子さだこで、当時とうじ紛争ふんそうによる難民なんみんなど人道的じんどうてき危機ききおも対象たいしょうでした。近年きんねん気候きこう変動へんどう新型しんがたコロナウイルスに代表だいひょうされる感染かんせんしょうなど、人々ひとびとにとっての脅威きょうい多様たようしています。また、外国がいこく介入かいにゅうするだけでは解決かいけつすることがむずかしいことがわかってきており、そのくに人々ひとびとみずからが強靭きょうじんきょうじん社会しゃかいつくっていくために協力きょうりょくするというアプローチに転換てんかんする必要ひつようがあります。こういった背景はいけいから、人道的じんどうてき危機ききだけでなく幅広はばひろ課題かだい対応たいおうするように、「人間にんげん安全あんぜん保障ほしょう」のかんがかたをバージョンアップしました。

北岡きたおか伸一しんいち(きたおか・しんいち)
独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん国際こくさい協力きょうりょく機構きこう(JICA)理事りじちょう
東京とうきょう大学だいがく名誉めいよ教授きょうじゅ
1948ねん奈良ならけんまれ。東京大学とうきょうだいがく法学部ほうがくぶ卒業そつぎょうどう大学院だいがくいん法学ほうがく政治せいじがく研究けんきゅう博士はかせ課程かてい修了しゅうりょう法学ほうがく博士はかせ)。立教大学りっきょうだいがく教授きょうじゅ東京大学とうきょうだいがく教授きょうじゅざいニューヨーク国連こくれん代表だいひょう大使たいし国際こくさい大学だいがく学長がくちょうなどを歴任れきにん。2011ねん紫綬褒章しじゅほうしょう受章じゅしょう著書ちょしょに『清沢きよさわきよし日米にちべい関係かんけいへの洞察どうさつ』(サントリー学芸がくげいしょう受賞じゅしょう)、『日米にちべい関係かんけいのリアリズム』(読売よみうり論壇ろんだんしょう受賞じゅしょう)、『自民党じみんとう政権せいけんとうの38ねん』(吉野よしの作造さくぞうしょう受賞じゅしょう)、『世界せかい地図ちずなおす』など多数たすう。2015ねんより現職げんしょく

河瀨かわせわたしは「なら国際こくさい映画えいがさい」の企画きかく運営うんえいたずさわっています。当初とうしょはカンヌ(映画えいがさい)でしょうをとった河瀨かわせ直美なおみが、おおきなイベントをつくって経済けいざい効果こうかをもたらしてくれるものと期待きたいしていたひとおおいとおもうんです。でもわたしは、このまち見過みすごされてしまっている(自然しぜん文化ぶんか、コミュニティなどの)宝物ほうもつを、次世代じせだいになどもたちに発見はっけんしてもらうシステムをつくる、という地道じみちみをしているんですね。そこはJICAとかんがかたおなじだとおもいました。

あたえるがわたされたものの、かたというのはとてもむずかしいですよね。もちろん相手あいてよろこんでもらいたい。それで、あれもこれもとなってしまう。けれど、ぎるとそのひと自立じりつうばってしまうことになります。

あくまで当事とうじしゃかれらであることをわすれてはいけない。わたし常々つねづね、やってあげたがわ評価ひょうかされるのではなく、かれ自身じしんいのちかがやかせたことを世界せかい評価ひょうかし、よろこぶべきだとおもっているんです。

女性じょせいこまっているひとまな機会きかい提供ていきょうする

北岡きたおか途上とじょうこく発展はってんのためには、もちろんはし鉄道てつどうといったインフラも必要ひつようです。でもやっぱり大事だいじなのはひとづくりです。「なぜ日本にっぽん西洋せいようなのに近代きんだいげ、ゆたかで自由じゆう民主みんしゅてきくにとなったのか、戦後せんごどう復興ふっこうしたのか、おしえてほしい」というこえ世界せかい各国かっこくからあるんです。そこで、日本にっぽんまなびにるJICAの留学生りゅうがくせいに、母国ぼこく発展はってん参考さんこうにしてもらえそうな日本にっぽん成功せいこうれい失敗しっぱいれいまなんでもらおうと、2018ねんに「JICA開発かいはつ大学院だいがくいん連携れんけいプログラム」をげました。

日本にっぽんてもらって、日本にっぽん魅力みりょくってもらって、日本にっぽんきになってもらえば、日本にっぽんとそのひととの関係かんけいは30ねん、40ねんわたってつづきます。JICA留学生りゅうがくせいなかには、帰国きこく政府せいふ要職ようしょくいたり民間みんかん企業きぎょう活躍かつやくしたりするほうおおく、日本にっぽんとそのほうくにとの長期ちょうきてき関係かんけい強化きょうかにもつながります。

またその一環いっかんとして、途上とじょうこく大学だいがくにおける日本にっぽん研究けんきゅう講座こうざ設立せつりつ協力きょうりょくするプログラム「JICAチェア」(JICA日本にっぽん研究けんきゅう講座こうざ設立せつりつ支援しえん事業じぎょう)も開始かいししました。ビデオ教材きょうざい英文えいぶん書籍しょせき、そして日本人にっぽんじん講師こうしによる講義こうぎ提供ていきょうして、西洋せいようとはちが日本にっぽんならではの近代きんだい開発かいはつ経験けいけんつたえています。

――河瀨かわせ監督かんとくさきほど話題わだいた「なら国際こくさい映画えいがぎわ」の運営うんえいをはじめ、昨年さくねん(2021ねん)にはユネスコ親善しんぜん大使たいし就任しゅうにんされました。つね世界せかいとつながりをち、各国かっこくとの文化ぶんかてき交流こうりゅう協力きょうりょくみをおこなっていますね。

河瀨かわせいま準備じゅんびしているのは、アフリカの女性じょせい監督かんとくたちを奈良ならもりなかまねいて、こもってもらうというワークショップなんです。まったくちが環境かんきょうまれそだった彼女かのじょたちに、日本にっぽん山間さんかんらしをつめてもらいながら、ひとってもいい、文化ぶんか風習ふうしゅうってもいいということで、ごしてもらいます。ユネスコ親善しんぜん大使たいし就任しゅうにんして最初さいしょのプロジェクトとして、今夏こんか実施じっしできればとおもっています。

そのきっかけは、アフリカの映画えいがプロデューサーから「才能さいのうあるアフリカの女性じょせい映画えいが監督かんとくには世界せかい進出しんしゅつする機会きかいがないから、(河瀨かわせ直美なおみ撮影さつえい現場げんば参加さんかさせてやってほしい」と相談そうだんされたことでした。

しかし、協力きょうりょくけるがわ主役しゅやくであるべきというわたしかんがえからすると、すこしズレている。わたし映画えいが現場げんばはいってもらっても、結局けっきょくわたしのアシスタントでしかありませんから。

そこで彼女かのじょたちが主体しゅたいとなって映画えいがをつくる現場げんばをつくったほうがいいと提案ていあんして、実現じつげんしたものなんですね。これはわたしの「ひとづくり」なんです。

北岡きたおかそれは興味深きょうみぶかみですね。女性じょせい社会しゃかい進出しんしゅつといえば、たとえばパキスタンのようなくにでは、イスラム教いすらむきょうかんがえで、女性じょせいとおくへくとあぶないからいえにいなさいといった理由りゆうで、学校がっこうにもけなくなっている女児じょじもたくさんいます。そうした女児じょじふくめ、貧困ひんこん社会しゃかい環境かんきょう災害さいがい、パンデミックなどのさまざまな理由りゆうから、義務ぎむ教育きょういく対象たいしょう年齢ねんれい(5~16さい)のどもや若者わかもののうち、44%にあたる2280まんにんもが学校がっこうっていないという実態じったいがあります。

そうした状況じょうきょうけて、パキスタンでJICAは学校がっこう以外いがい身近みぢか場所ばしょまな機会きかい提供ていきょうするノンフォーマル教育きょういく普及ふきゅう協力きょうりょくしています。女性じょせいこまっているひと自己じこ実現じつげんにつながる協力きょうりょくだとかんがえています。

スポーツをつうじた途上とじょうこく平和へいわ促進そくしん外国がいこくじん労働ろうどうしゃれに協力きょうりょく

――JICAでは「人間にんげん安全あんぜん保障ほしょう」の理念りねんつうじて、スポーツをつうじた協力きょうりょくにもんでいますね。

北岡きたおかみなみスーダンという紛争ふんそうつづくにで、日本にっぽんでの国民こくみん体育たいいく大会たいかい相当そうとうする、「国民こくみん結束けっそく」(National Unity Day)の開催かいさい協力きょうりょくしています。国内こくないにはさまざまな部族ぶぞくがいて、たがいに固定こてい観念かんねん判断はんだんしてしまうことで、地域ちいき社会しゃかいあいだあらそいがえないのが現状げんじょうです。

そこで2016ねんに、全国ぜんこくのさまざまな部族ぶぞく若者わかものたちが1つの場所ばしょあつまり、サッカーや陸上りくじょう競技きょうぎといったスポーツ大会たいかいおこなったところ、これがだい成功せいこうした。スポーツをつうじてたがいを理解りかいし、参加さんかしゃたちのあいだに、自分じぶんたちは1つのくに国民こくみんだという結束けっそくまれました。

それをきっかけに選手せんしゅ国際こくさいてきなスポーツ大会たいかいたいとつよおもうようになりまして、急遽きゅうきょJICAが、みなみスーダンにとってははつ参加さんか大会たいかいとなる、2016ねんのリオデジャネイロ大会たいかいへの参加さんか協力きょうりょくしました。すると今度こんど東京とうきょう大会たいかいにも、ということになった。

そこで群馬ぐんまけん前橋まえばしみなみスーダン選手せんしゅだん長期ちょうき合宿がっしゅくをホストしてくれることになり、選手せんしゅらは2019ねん年末ねんまつって来日らいにちしました。コロナ大会たいかいが1ねん延期えんきになっても、前橋まえばしつづ滞在たいざい協力きょうりょくして、無事ぶじ出場しゅつじょうたしました。

河瀨かわせみなみスーダンの選手せんしゅたちはわたし取材しゅざいをしています。とくに選手せんしゅだんのリーダーかくだったグエム・アブラハム選手せんしゅのことは印象いんしょうのこっていて、かれどもたちに自分じぶんくにほこりにおもってもらいたい、だから自分じぶんはしって活躍かつやくしたいんだとっていたんですね。東京とうきょう大会たいかいでは予選よせん敗退はいたいしたものの、その言葉ことばどおり、みなみスーダン記録きろくしました。

わたしかれて、こんなふうに自分じぶんくにのことをかたれる若者わかものたちがえることが、そのくに未来みらいかがやかしいものにしていくのだろうと実感じっかんしました。

北岡きたおかかれらの奮闘ふんとう日本人にっぽんじんにも影響えいきょうあたえましたね。こういうひとたちを応援おうえんしようというこえこっています。そうした状況じょうきょうなかで、JICAはいま外国がいこくじん労働ろうどうしゃ受入うけいれ支援しえんにもちかられています。

途上とじょうこくなかには外国がいこく出稼でかせぎにったひとたちの送金そうきんで、なんとか生活せいかつしているという家庭かていがたくさんあって、それがGDP(国内こくないそう生産せいさん)の1わり程度ていど相当そうとうするくにがいくつもあります。その観点かんてんかられば、外国がいこくじん労働ろうどうしゃれることは、かれらのくにたいする協力きょうりょく活動かつどうでもあります。

JICAの関係かんけいしゃなかには文化ぶんか言語げんごひとこまったときに、タガログ(フィリピン)でもスワヒリ(ケニア・タンザニアなど)でも、手助てだすけできる能力のうりょくひとがたくさんいます。一般いっぱんにJICAというと、海外かいがい協力きょうりょく活動かつどうをしているひとおおいというイメージがあるかもしれませんが、日本にっぽん国内こくない協力きょうりょく活動かつどうをしている関係かんけいしゃ結構けっこういるんですよ。

多様たようせい発展はってんちからだとかんがえています。ことなる文化ぶんか言語げんごほうともまなうことで、日本にっぽんがわにも影響えいきょうをもたらしています。

JICAの活動かつどうは「日本人にっぽんじん精神せいしんせい復興ふっこう

――最後さいごになりますが、おにんから、今日きょう対談たいだん感想かんそうと、あらためていまこそ日本人にっぽんじん大事だいじにすべきことなどおかせください。

河瀨かわせ今日きょうはぜひおいしたかった北岡きたおかさんとおはなしができ、JICAの理念りねん活動かつどう内容ないようについておしえていただき、とてもありがたくおもっています。

わたし奈良ならひとたちと映画えいがりながらまなんだのは、敬虔けいけんけいけん気持きもちというところなんですね。人間にんげん偉大いだい自然しぜんまえに、一人ひとりではきていけない。

ところが世界せかいはどんどん経済けいざい優先ゆうせんかんがかたになっていって、人間にんげんはすべてをコントロールできるとおもがってしまった。いまはとくにコロナひと距離きょりをつくることがたりまえになったこともあり、ひと自然しぜんとともにきていく、という大事だいじなことがわすれられてきています。

しかしむかしいまわりなく、みずがなければわたしたちはきられないし、空気くうきがないときられない。もちろん作物さくもつそだたなければ、動物どうぶつきられないわけです。その根本こんぽんのところをわすれてはいけない。

今日きょうはなしをうかがってかんじたのは、JICAの活動かつどう日本人にっぽんじん精神せいしんせい復興ふっこうでもあるな、ということでした。こまっている途上とじょうこく対等たいとう立場たちばうJICAの活動かつどうは、わたしたち日本人にっぽんじんにとってのほこりであり、しんゆたかさにつながるもので、まなばせてもらうことがたくさんありました。本当ほんとうにありがとうございました。

北岡きたおかありがとうございます。わたしは、日本にっぽん政治せいじ外交がいこう専門せんもんなんですが、その視点してんからえば、日本にっぽん戦前せんぜん軍事ぐんじ大国たいこくになろうとして失敗しっぱいし、戦後せんご経済けいざい大国たいこくになろうとしてづまった。しかし、日本にっぽんには明治維新めいじいしん以来いらい近代きんだい経験けいけんや、日本にっぽん社会しゃかい根差ねざ平等びょうどうかんがかた文化ぶんかなど、世界せかいほこれるものが数多かずおおくあります。国際こくさい協力きょうりょくつうじてこういった日本にっぽん得意とくいわざ途上とじょうこくほうにもっと共有きょうゆうしていきたいとおもっています。

また、現代げんだいは、経済けいざい理屈りくつだけでなく、もっとちがったかたち自然しぜんとの共生きょうせいを、いまのテクノロジー(科学かがく技術ぎじゅつ)を前提ぜんていにしつつかんがえていく必要ひつようがある。そういう時代じだい河瀨かわせさんの活躍かつやく貴重きちょうで、素晴すばらしいとおもっています。今日きょうはJICAが国際こくさい協力きょうりょくおこなっていくうえで、大事だいじ視点してんをもらいました。

河瀨かわせ監督かんとくの『沙羅双樹さらそうじゅ』(2003ねん)のクライマックスで印象いんしょうてきなセリフがありました。それは「人間にんげんかがやけるときにかがやかなくちゃいけない」という趣旨しゅしのセリフなのですが、河瀨かわせさんはいままさにそのかがやいているときだとおもいます。いま本当ほんとうにおいそがしいとおもいますが、充実じゅうじつした活動かつどうかさねていかれて、できればJICAと途上とじょうこくって発展はってんしていく姿すがたげていただければうれしいですね。

ほんインタビューは、新型しんがたコロナウイルス感染かんせんしょう予防よぼう徹底てっていしたうえでおこないました。