需給調整市場の応札はなぜ増えないのか。発電事業者の声に耳を傾けると、応札を阻む経済的・技術的な理由が多数あることが見えてくる。「これでは応札できない」。そんな感想が漏れるほどの明らかな障壁が放置されたまま、需給調整市場は全面開場したのだ。
4月に全面開場した需給調整市場の応札不足が、一向に解消の兆しを見せていない(「需給調整市場は大失敗、全面的な応札不足で国民負担増大も」参照)。三次調整力②については、緊急避難的な募集量削減によって見かけ上の平静を確保したが、一次調整力などの週間商品への対策が手つかずの状況にあるからだ。
応札不足を解消するには、募集量と応札量を近づけるしかないため、対応策は「募集量を減らす」と「応札量を増やす」とに大別される。三次調整力②のように募集量を削減するという対策も考えられるが、東京・中部エリアの一次調整力や二次調整力①のように、ほぼ応札がゼロ、もしくは「開場以来約定ゼロ」という商品もある(図1)。応札がない状況で募集量をいくら減らしても、未達の状況は解決しないから、「応札量を増やす」ことは避けて通れない。
東京・中部エリアの一次・二次調整力①は極度の応札不足が続く
図1●東京・中部エリアの一次・二次調整力①の募集量と落札量(出所:電力需給調整力取引所の速報値を基に著者作成)※各日の全ブロックの総計
現在の日本の調整力は、火力発電と揚水発電が大半を占めている。つまり、需給調整市場の応札不足とは、火力・揚水が応札していないことに起因しているが、なぜ火力と揚水が応札しにくい状況にあるのか。発電事業者の声などを元に、その原因を見ていきたい。
余力活用の方がもうかる
需給調整市場の制度設計は、資源エネルギー庁、電力広域的運営推進機関、電力・ガス取引等監視委員会(電取委)のそれぞれの審議会で検討する複雑な体制となっており、応札不足の原因分析も各審議会で行われている。審議会では発電事業者(調整力提供者)へのヒアリング結果が報告されており、その内容を見るとかなりの事業者が「応札障壁がある」と考えていることが見えてくる。審議会の議論などを基に、主たる要因をまとめたものが図2だ。
経済的・技術的に大きな応札障壁になりうる要因が存在する
図2●発電事業者が主張する需給調整市場の応札不足の主な要因(出所:各審議会の議論と取材を基に著者作成)
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