電力広域的運営推進機関は6月20日、2024年4月分の「容量拠出金算定通知書」を発行。2020年に実施した容量市場の初回オークション結果に基づく容量拠出金の支払いが、いよいよ始まる。小売電気事業者が2024年度に負担する容量拠出金の総額は1兆4650億円に上る。各社の負担額は負荷率などで異なるとはいえ、非常に大きな追加コストであり、多くの新電力が電気料金に転嫁し始めている。一方、大手電力小売部門は価格転嫁していない。なぜなのか。
小売電気事業者の会員組織「日経エネルギーNextビジネス会議」の会員企業に対して、低圧・高圧それぞれについて、容量拠出金の支払い開始に伴い電気料金値上げを実施したかどうかを聞いたところ、約3割が値上げを実施したと回答した。
新電力は3割が値上げし、4割が据え置き
図1●容量市場値上げの実施状況(出所:日経エネルギーNextビジネス会議、2024年5月18日開催幹部交流会にてアンケートを実施)
その一方で、約4割が値上げせず、経営努力で吸収していることも明らかとなった。理由を問うと、「大手電力が値上げをしない以上、競争面から値上げできない」という声が多く聞かれた。
「発電設備の固定費を小売電気事業者も負担することに異論はない。だが、発電と小売りが一体となった大手電力が容量市場値上げをしないという状況は不公平としか言いようがない」。ある新電力幹部はこう憤る。
容量市場値上げを巡る不公平論
容量市場値上げを巡っては、大手電力小売部門と新電力の間の不公平論が取りざたされている。
容量拠出金の負担額は、ごくごく簡単に説明すると、4年前のオークションで決まる総額を、小売電気事業者のピーク時のkWに応じて案分するというものだ。大手電力小売部門と新電力の負担額は、電力広域的運営推進機関が定めた算定式で決まる。この点において、不公平という話にはならない。
不公平論が出てくるのは、その後だ。
容量市場は発電設備の固定費をカバーするための制度だ。例えば、発電事業者と小売事業者が相対契約を締結していた場合、新電力は固定費に相当する基本料金を支払っている。この発電事業者が容量確保金を受け取ってしまうと、固定費を二重取りすることになり、制度の趣旨に反する。このため、資源エネルギー庁は、容量市場で落札した電源については、既存の相対契約の見直しを実施するよう求めている(「容量市場に関する既存契約見直し指針」)。
だが実際には、発電事業者から契約の見直し、つまり値引きを得ることができた小売事業者とそうでない事業者がいる。
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