「高速こうそく化かするＪPOP」をどう受うけ止とめるか　音楽おんがくジャーナリスト３人にんが徹底てってい討論とうろん

ヒャダイン『20112012(初回しょかい限定げんてい盤ばん)(DVD付づけ)』（ランティス）

　リアルサウンドでもおなじみのライター・物語ものがたり評論ひょうろん家かのさやわか氏しが、音楽おんがくジャーナリストの宇野うの維正氏し、柴しば那な典のり氏しを招まねいて、2013年ねんの音楽おんがくジャンルを再さい総括そうかつするトークイベント『さやわか式しき☆現代げんだい文化ぶんか論ろん　第だい2回かい』のレポート後編こうへん。前編ぜんぺん「今いま、ボカロやアイドルをどう語かたるべきか　音楽おんがくジャーナリスト３人にんが2013年ねんのシーンを振ふり返かえる」では、芸能げいのうと音楽おんがくの関係かんけい性せいについての考察こうさつから、ボカロシーンの是非ぜひ、さらにはJPOPシーン全体ぜんたいの傾向けいこうの変化へんかについてまで話はなしが及およんだ。後編こうへんでは、最近さいきんの楽曲がっきょくの傾向けいこうから、ボカロシーンの可能かのう性せいについてまで、ざっくばらんに語かたった。

さやわか：前半ぜんはんではシーン全体ぜんたいについての話はなしが多おおかったんですが、今いまの音楽おんがく批評ひひょうの問題もんだいとして楽曲がっきょくじたいに対たいする議論ぎろんがなかなかうまく広ひろがらない気きがしています。そこで今日きょうは音おとについても、もう少すこし話はなしをしたいのですが。

柴しば那な典てん（以下いか、柴しば）：いろんなところで言いってきた話はなしなんですけど、最近さいきんBPMが高速こうそく化かしているというか、音おと数すうが多おおい楽曲がっきょくが増ふえているという流ながれがあって。すべてのJ-POPが高速こうそく化かしているとは思おもっていないんですけど、明あきらかに高密度こうみつどな音楽おんがくが、ロックバンドとアニソンとアイドルとボカロに生うまれている。沢山だくさんの言葉ことばと沢山だくさんのフレーズと沢山だくさんのメロディが3~4分ふんに入はいっている楽曲がっきょくが増ふえた。

さやわか：同おなじことは僕ぼくもヒャダインさんから伺うかがいました。彼かれはニコニコ動画どうがで人気にんきが出でたタイプなんですが、「2分ふんで人ひとは飽あきると言いっていました。だからニコニコ動画どうがで2分ふん以内いないに動画どうがの視聴しちょう者しゃから面白おもしろがってもらうためには、BPMを超ちょう速はやくして、とにかく展開てんかいをごちゃごちゃ入いれなきゃいけない。その話はなしを聞きいて何なにを思おもったかっていうと、曲きょくを聴きく状況じょうきょう――場所ばしょとかメディアにカスタマイズされた曲きょくが増ふえたというか、リスナーがいる場所ばしょに合あわせて曲きょくを作つくるようになっていて、それによってシーン全体ぜんたいで楽曲がっきょくの方向ほうこう性せいが生うまれているんじゃないかって。

柴しば：なぜJ-POPが高速こうそく化かしているか？という理由りゆうなんですけれど、まずアニソンの分野ぶんやでは、作つくり手しゅでもあるfhánaの佐藤さとう純一じゅんいちさんが面白おもしろいことを言いっていて。89秒びょうというTVサイズの尺しゃくの中なかに展開てんかいを詰つめこむために試行しこう錯誤さくごした挙あげ句く、BPMがどんどん上あがっていったという話はなしで。つまり情報じょうほう量りょうを詰つめ込こむためにテンポが上あがっている。アイドルやボカロのシーンで、そういう高密度こうみつど化か現象げんしょうが起おこっています。今いまのアイドルの主流しゅりゅうはグループアイドルで、ということは沢山たくさんの女おんなの子こがいっぺんに歌うたっている。そうするとどうなるかというと、声こえの情報じょうほう量りょうがなくなるんですね。つまり声ごえに色気いろけを乗のせたり、声こえにフェイクを乗のせたり、しゃくりあげたり、こぶしをきかせたりとか、そういう風ふうに歌うたの上手じょうずさを見みせる場所ばしょが少すくなくなる。ボカロにいたっては、そもそも基本きほん的てきにフラットな声こえですからね。圧倒的あっとうてきに歌うたの上手うまい人ひとがスターになっている海外かいがいシーンとは大おおきく違ちがう。そういうところに、逆ぎゃくに言いえばDIVAの時代じだいの退潮たいちょうも感かんじていて。僕ぼくはやっぱり「宇多田うただヒカルの不在ふざい」は大おおきいと思おもいます。宇多田うただヒカルさんはいろんな意味いみで天才てんさいだと思おもうけれど、まずあの人ひとの声こえには圧倒的あっとうてきに情報じょうほう量りょうがあるわけで。