2016.10.30 18:00

METAFIVEが提示ていじする“2016年ねんのテクノ”の可能かのう性せいーー宗像むねかた明あきら将しょうによる新作しんさく『METAHALF』評ひょう

　日本にっぽんのテクノのオリジネーターのひとりである高橋たかはし幸宏ゆきひろを中心ちゅうしんにした、2016年ねんにおけるテクノの決着けっちゃく。そんな大だい風呂敷ふろしきを広ひろげて語かたりたくなるのが、METAFIVEの5曲きょく入いりミニアルバム『METAHALF』だ。

　METAFIVEは、高橋たかはし幸宏ゆきひろ、小山田おやまだ圭吾けいご、砂原すなはら良徳よしとく、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井いまいによるバンド。小山田おやまだ圭吾けいごはCorneliusとして活動かつどうし、Yellow Magic Orchestraのライブにも参加さんかしてきた。砂原すなはら良徳よしとくは電気でんきグルーヴを脱退だったい後ご、ソロで活動かつどう。TOWA TEIもディー・ライトで活動かつどう後ご、ソロに転身てんしんしたアーティストだ。ゴンドウトモヒコは、pupaで高橋たかはし幸宏ゆきひろとともに活動かつどうしてきたほか、Yellow Magic Orchestraのライブにも参加さんかし、フリューゲルホルンなどの管楽器かんがっきも響ひびかせてきた。LEO今井いまいは、ソロのほか向井むかい秀徳ひでのり（ZAZEN BOYS）とのユニット・KIMONOSでも活動かつどう。高橋たかはし幸宏ゆきひろの2013年ねんのアルバム『LIFE ANEW』のレコーディング・メンバーであったIn Phase（ジェームス・イハ、高桑たかくわ圭けい、堀江ほりえ博久ひろひさ、ゴンドウトモヒコ）のライブに、ゲストとしてLEO今井いまいが参加さんかしたこともあった。

　この顔かおぶれは、そもそもはEX THEATER ROPPONGIで開催かいさいされたライブシリーズ『EX THEATER OPENING SERIES 2014 NEW YEAR PREMIUM GO LIVE vol.1』に2014年ねん1月がつ17日にちに出演しゅつえんしたメンバーだ。その音源おんげんは「高橋たかはし幸宏ゆきひろ & METAFIVE」名義めいぎによる『TECHNO RECITAL』としてリリースされている。

　そのライブ盤ばん『TECHNO RECITAL』を聴きいた段階だんかいでは、正直しょうじきなところ『METAHALF』への進化しんかは想像そうぞうできなかった。ゴンドウトモヒコによる管楽器かんがっきも鳴なる、新鮮しんせんなアコースティック解釈かいしゃくのアレンジの楽曲がっきょくもあったものの、やはりYellow Magic Orchestraの「CUE」や「中国ちゅうごく女おんな」、そして高橋たかはし幸宏ゆきひろの1981年ねんのアルバム『NEUROMANTIC（ロマン神経症しんけいしょう）』に収録しゅうろくされていた名曲めいきょく「Drip Dry Eyes」といったセルフ・カバーの存在そんざいが大おおきかったからだ。この時点じてんでは、高橋たかはし幸宏ゆきひろが豪華ごうかメンバーをバックバンドにして、往年おうねんの名曲めいきょくをサービス精神せいしんたっぷりに演奏えんそうしている、という雰囲気ふんいきだった。「テクノ・リサイタル」というアルバムタイトルそのままに。

　しかし、彼かれらは高橋たかはし幸宏ゆきひろがキュレーターを務つとめる野外やがいフェス『WORLD HAPPINESS』にも出演しゅつえんし、2015年ねんには「METAFIVE」へ改称かいしょう。2016年ねんの年明としあけすぐにオリジナルアルバム『META』をリリースした。

　いわば「高橋たかはし幸宏ゆきひろとバックバンド」による作品さくひんであった『TECHNO RECITAL』と、「高橋たかはし幸宏ゆきひろがメンバーのひとりであるバンド」による『META』では、まるで感触かんしょくが異ことなった。「Don't Move」はカットアップされた音おとに彩いろどられたファンクのようだ。「Luv U Tokio」には、Yellow Magic Orchestraの「テクノポリス」の「TOKIO」というボイスが一瞬いっしゅんだけ引用いんようされている。「Albore」の終盤しゅうばんでは、バリ島ばりとうのガムランやケチャが模もされていた。Yellow Magic Orchestraの系譜けいふを隠かくすことなく、しかし堂々どうどうと新あたらしいサウンドをひとつのバンドとして提示ていじしていたのが『META』だった。

　この『META』について公式こうしきサイトに掲載けいさいされたインタビューの中なかで、高橋たかはし幸宏ゆきひろは「今回こんかいはみんな、自分じぶんがつくった元もとの曲きょくを他たのメンバーに投なげかけていくという作業さぎょうが一番いちばん楽たのしかったみたいですね」と語かたっている。制作せいさく段階だんかいで、各自かくじに明確めいかくな作業さぎょう分担ぶんたんがあるわけではないようだ。同どうインタビューで「METAFIVEは自己じこ完結かんけつできる人ひとばかり」と語かたっているのは砂原すなはら良徳よしとくだが、我わが道みちを行いく6人にんがわざわざバンドを組くんだ結果けっか、お互たがいの手癖てくせを殺ころし合あって別べつの可能かのう性せいを広ひろげていることも感かんじたものだ。

　そして、『META』から10カ月かげつ後ごに届とどけられたのが『METAHALF』だ。作詞さくし作曲さっきょくに砂原すなはら良徳よしとくとLEO今井いまいがクレジットされた「Musical Chairs」はいきなりのエレクトロ・ファンク。作詞さくし作曲さっきょくに小山田おやまだ圭吾けいごとLEO今井いまいがクレジットされた「Chemical」のリズムにはニュー・ウェーヴをも連想れんそうした。

　「Egochin」は、作詞さくし作曲さっきょくに高橋たかはし幸宏ゆきひろ、ゴンドウトモヒコ、TOWA TEI、LEO今井いまいと4人にんがクレジットされている。高橋たかはし幸宏ゆきひろのソロ路線ろせんの楽曲がっきょくかと思おもいきや、ギターに導みちびかれてどこかへさまよいだしているかのようなサウンドだ。リード・ボーカルが高橋たかはし幸宏ゆきひろとLEO今井いまいのふたりであることの意義いぎも大おおきく、高橋たかはし幸宏ゆきひろのカラーだけには染そまらない。

　『METAHALF』の中なかでも、「Peach Pie」は中期ちゅうきのYellow Magic Orchestraを連想れんそうさせるサウンドだ。作詞さくし作曲さっきょくのクレジットは、TOWA TEI、LEO今井いまい、砂原すなはら良徳よしとく。しかし、LEO今井いまいのボーカルもサウンドも熱ねつを帯おびており、テクノがベースでありながらも生なまっぽい感触かんしょくの演奏えんそうを聴きかせていく。

　最後さいごの「Submarine」は、作詞さくし作曲さっきょくに高橋たかはし幸宏ゆきひろ、LEO今井いまい、ゴンドウトモヒコがクレジットされた楽曲がっきょく。バンドのサウンドは、エレクトロニックな枠組わくぐみを軽々かるがると飛とび越こえていく。

　「テクノポップ」という言葉ことばは長ながく使つかわれてきたが、それはとても曖昧あいまいな概念がいねんであり、そして飽和ほうわしたジャンルでもある。そのテクノには2016年ねん現在げんざいどんな可能かのう性せいがあるのかを、高橋たかはし幸宏ゆきひろとその影響えいきょう下かにあるミュージシャンたちは『METAHALF』で提示ていじしているかのように感かんじられるのだ。

　そして『METAHALF』は、Yellow Magic Orchestraを知しらない世代せだいにも新鮮しんせんな音楽おんがくだろう。それこそ、METAFIVEのふたりのリード・ボーカルである高橋たかはし幸宏ゆきひろとLEO今井いまいは、それぞれ1952年ねん生うまれと1981年ねん生うまれ。約やく30歳さい差さのメンバーを擁ようするバンドならではのサウンドが鳴なっているのが『METAHALF』なのだ。

■宗像むねかた明あきら将しょう
1972年ねん生うまれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降いこうの日本にっぽんのロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流ながれをくむ欧米おうべいのロックやポップス、ワールドミュージックや民俗みんぞく音楽おんがくについて執筆しっぴつする音楽おんがく評論ひょうろん家か。近年きんねんは時流じりゅうに押おされ、趣味しゅみの範囲はんいにしておきたかったアイドルに関かんしての原稿げんこう執筆しっぴつも多おおい。Twitter

『METAHALF』

■リリース情報じょうほう
『METAHALF』
発売はつばい：2016年ねん11月9日にち
価格かかく：￥1,800（税ぜい抜）

■ライブ情報じょうほう
『METAFIVE “WINTER LIVE 2016"』
11月30日にち（水みず）　広島ひろしまクラブクアトロ
12月1日にち（木き）　大阪おおさかなんばHatch
12月3日にち（土ど）　東京とうきょう ZEPP DiverCity
12月5日にち（月つき）　札幌さっぽろペニーレーン24
12月6日にち（火ひ）　札幌さっぽろペニーレーン24