サマソニとSpotifyに共通きょうつうするマインドとは？　2社しゃのトップが語かたり合あう

　8月がつ16日にちから18日にちの3日間にちかんに行おこなわれる、国内こくない最大さいだい級きゅうの夏なつフェス『SUMMER SONIC 2019』。今年ことしはB'z、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ザ・チェインスモーカーズといったヘッドライナーのほか、ベテラン／若手わかて、洋楽ようがく／邦楽ほうがくの垣根かきねを超こえたラインナップが勢揃せいぞろいしており、1日にち目め、2日にち目めの深夜しんやには、“MIDNIGHT SONIC”として、「Spotify on Stage in MIDNIGHT SONIC」「NF in MIDNIGHT SONIC」が開催かいさいされる。

　今回こんかいは、「Spotify on Stage in MIDNIGHT SONIC」の開催かいさいを記念きねんし、『SUMMER SONIC』を主催しゅさいするクリエイティブマンプロダクションの代表だいひょう・清水しみず直樹なおき氏しと、スポティファイジャパン株式会社かぶしきがいしゃの社長しゃちょう・玉木たまき一郎いちろう氏しの対談たいだんを企画きかく。お互たがいの関係かんけい性せいや、サマソニにおける深夜しんやイベントの立たち位置いち、清水しみず氏しが“音楽おんがくの聴きき方かたの変化へんか”について思おもうことなど、たっぷりと語かたり合あってもらった。（編集へんしゅう部ぶ）

『Early Noise Night』を通つうじて確認かくにんした、お互たがいの共通きょうつう点てん

ーーまずは2社しゃとお2人ふたりの関係かんけい性せいについて聞きかせてください。

清水しみず：会社かいしゃとしては一緒いっしょに『Early Noise Night』をなんども展開てんかいさせてもらっていますし、個人こじん的てきにも年としに何なん度どかクラブで会あって話はなしをしたり、お互たがいに食事しょくじもするような関係かんけい性せいですし、その都度つどアイデアを出だし合あったりするような仲なかですね。

玉木たまき：2社しゃ、2人ふたりの関係かんけい性せいは清水しみずさんにお話はなしいただきましたが、いち音楽おんがくファンとしては『SUMMER SONIC』（以下いか、サマソニ）というフェスを見みてきた中なかで、20年間ねんかん常つねに音楽おんがくシーンの最先端さいせんたんを切きり開ひらいてきたことに対たいするリスペクトがまずあります。海外かいがいの新あたらしい才能さいのうをいち早はやく日本にっぽんの市場いちばに紹介しょうかいして、世界せかいと日本にっぽんの音楽おんがくの関係かんけい性せいを広ひろげていくような機会きかいを作つくってきたのはサマソニだ、という印象いんしょうが非常ひじょうに強つよいです。

　Spotifyもストリーミングを通つうじて新あたらしい音楽おんがくとの出会であいの場ばを創つくり、音楽おんがくファンの裾野すそのを広ひろげたいし、洋楽ようがくだから、邦楽ほうがくだから、ロックフェスだからという枠わくにとらわれずに、音楽おんがくとの出会であい方かた自体じたいにも新あらたな風かぜを吹ふき込こんでいきたいんです。それこそ、清水しみずさんとクリエイティブマンが『サマソニ』という形かたちで表現ひょうげんされてきたように。『Early Noise Night』を一緒いっしょに展開てんかいしてきたなかで、お互たがいの目指めざしている世界せかいが非常ひじょうに似にているということが、おそらく音楽おんがくファンにも伝つたわっていると思おもいます。

清水しみず：『サマソニ』のブッキングというのは、当初とうしょからステージが少すくない中なかで、その中なかでもColdplayやSigur Rósのようなバンドを発掘はっくつしつつ、その中なかにもしっかりヒップホップや色いろんなジャンルを混まぜながらボーダーレスに大おおきくなってきたので、それは非常ひじょうにありがたい言葉ことばですね。

玉木たまき：『Early Noise Night』はそんなマインドを定期ていき的てきに確認かくにんさせてくれる場ばになっています。音楽おんがく業界ぎょうかい全体ぜんたいにとって、いろんなジャンルの新人しんじんにフォーカスを当あてて、そこからリスナーを拡大かくだいしながら、国民こくみん的てきなヒットに繋つなげるかはとても大事だいじなことだと思おもってるんですけど、その課題かだいについてこれまで10回かい以上いじょう一緒いっしょに向むき合あわせていただいてきました。実際じっさいに今いまや全国ぜんこく的てきな人気にんきを博はくすアーティストが複数ふくすう出でてきた実感じっかんもありますし、この春はるには『Ealry Noise Special』という1つの集大成しゅうたいせいを六本木ろっぽんぎEX THEATERでファンの皆みなさんにもお披露目ひろめすることができました。

ーー現在げんざいは11回かい開催かいさいされていて、あいみょんやCHAI、RIRIなど、国内外こくないがいで活躍かつやくするアーティストを輩出はいしゅつしています。現げん段階だんかいだけでも、広ひろく聴きかれている人ひとたちがここまで続々ぞくぞくと出でてくるイベントは稀まれですよね。

玉木たまき：そう言いっていただけると嬉うれしいですね。キャパの小ちいさい渋谷しぶやSPACE ODDに敢あえてセンターステージを立たてて、超ちょう至近しきん距離きょりで体験たいけんした新人しんじんアーティストが徐々じょじょにブレイクしていく過程かていも一緒いっしょに楽たのしめるわけで、コアな音楽おんがくファンが人ひとに自慢じまんできるような体験たいけんをしていただけてるのかなと（笑）。

ーー度々どど遊あそびに行いっていて、そういった体験たいけんが本当ほんとうに貴重きちょうだなと感かんじさせられました。今回こんかい『サマソニ』の深夜しんやイベントである「MIDNIGHT SONIC」の枠わくで「Spotify on Stage」を実施じっしするに至いたったきっかけは？

清水しみず：前提ぜんていとして、今年ことしの『サマソニ』が20周年しゅうねん・3Daysなので、いつもは1日にち目めの前まえにやっていた「SONICMANIA』をやらないことにしたんです。そのぶん、金曜きんようの夜よると土曜どようの夜よるに何なにかやろうと思おもった時ときに、サカナクションがすぐ手てを挙あげてくれたんです。その後ごも、いくつかの企業きぎょうさんからお声こえがけいただいたんですが、僕ぼくらの中なかでパッと浮うかんだのは、『Early Noise Night』を一緒いっしょにやっているSpotifyとのコラボレーションでした。諸しょ事情じじょうでブッキングのスタートは少すこし遅おくれてしまったんですが、こうして実現じつげんできてよかったです。

ーー「Spotify on Stage」は世界せかいでもいくつかの国くにで展開てんかいされているイベントですが、日本にっぽんでの開催かいさいは初はじめてですよね。

玉木たまき：Spotifyがグローバルで展開てんかいしているイベントは大おおきく2種類しゅるいに分わけられるのですが、1つはフラッグシッププレイリストを実際じっさいのイベントに落おとし込こむ『RapCaviar』や『¡Viva Latino!』、UKにおける『Who We Be』のような形かたち。もう1つは“新あたらしい音楽おんがくとの出会であいという軸じくの『Early Noise』やアジアの『Spotify on Stage」というイベントです。『Spotify on Stage』は2017年ねんに初はじめてジャカルタで開催かいさいして、日本にっぽんからもオープニングアクトとしてAmPmが出演しゅつえんしたんですが、そこで日本にっぽんのアーティストがアジアの国々くにぐにに広ひろがるスピードやパワーを肌はだで感かんじました。だからこそ、この熱狂ねっきょうを次つぎは日本にっぽんで、大おおきなスケールでやりたいなと思おもったときに、新あたらしい音楽おんがくに飢うえていて、それを受うけ取とれる力ちからのあるオーディエンスがいる『SUMMER SONIC』と組くみたい、と思おもったわけです。

ーー清水しみずさんに伺うかがいたいのですが、「SONICMANIA」「MIDNIGHT SONIC」のような『サマソニ』における深夜しんやイベントの立たち位置いちは、開始かいしからこれまでどのように変化へんかしてきたのでしょうか。

清水しみず：正直しょうじき、当初とうしょは「1日にち目めが終おわっても会場かいじょうに残のこっている人ひとがいるなら、そのお客きゃくさんに何なにか提供ていきょうしなきゃいけないよね」というくらい、コンセプトもないところからスタートしたんです。そのスタンスが飛躍ひやく的てきに変かわったのは、「SONICMANIA」が新あらたに金曜きんようの夜よるとして始はじまってから。コンセプトがしっかりした深夜しんやイベントが始はじまって、「SONICMANIA」にだけ行いくお客きゃくさんも出でてきたことで、1日にち目めと2日にち目めの間あいだにはそれに見合みあったクオリティのものを作つくらなければいけないと感かんじ取とり、「MIDNIGHT SONIC」も「HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER」のようにコンセプトを特とく化かさせる方向ほうこうに向むかって行いきました。

ーーそうやって、『サマソニ』本編ほんぺんとは違ちがう形かたちを目指めざす方向ほうこうに変かわってきた。

清水しみず：だから逆ぎゃくにいうと、深夜しんやは『サマソニ』以上いじょうに冒険ぼうけんができる。ステージングの自由じゆう度ども高たかかったり、しっかりとコンセプトにフォーカスしたものも作つくれるから、違ちがった面白おもしろさがあるんですよ。ブッキングも全然ぜんぜん方向ほうこう性せいが変かわるし、当日とうじつどれだけの人ひとが『サマソニ』から残のこってきてくれるかも見みえにくい部分ぶぶんがあるので、そのバクチ感かんにもワクワクします。

玉木たまき：ところで『サマソニ』におけるSpotifyとのコラボって、これが初はじめてではないんです。昨年さくねんの『サマソニ』では、公式こうしきサイト上じょうから参加さんか者しゃ1人にん1人にんの好このみに合あったプレイリストを自動的じどうてきに作つくってくれるカスタムプレイリスト機能きのうを作つくったり、ステージ別べつの公式こうしきプレイリストを展開てんかいしたり、ステージ終了しゅうりょう後ごにセットリストをプレイリストで公開こうかいしたり。あと、実じつはバックステージにはSpotifyゲームセンターを作つくったんです。

ーーそんなところまで！

玉木たまき：規模きぼ感かんとしても結構けっこう大おおきいものを設置せっちして、アーティスト同士どうしが交流こうりゅうする場ばになればいいなと思おもったんです。日本にっぽんのアーケードゲームが好すきな海外かいがいアーティストも多おおいですし。そこからどういうアーティスト同士どうしのコラボレーションとか新あたらしい人間にんげん関係かんけいが生うまれるかなみたいなのも楽たのしみですし、そういった遊あそびもやらせていただける寛容かんようさが『サマソニ』らしいと思おもわされました。

清水しみず：そこで『スターウォーズ』のアーケードゲームに張はり付ついていたのがうちの子供こどもだったんですけど（笑）。

ーーリスナーから見みえるところ以外いがいでも、遊あそびを通とおしてアーティストに体験たいけんを提供ていきょうしたり、コミュニケーションを生うむ施策しさくを展開てんかいしているというのは驚おどろきました。

玉木たまき：『Early Noise Night』にも通つうずるんですが、我々われわれはそこで何なにか短期たんき的てきな実利じつりを得えようというのではなく、面白おもしろいと思おもうからやってみようというスタンスなんです。ファンやアーティストにとって面白おもしろいのであれば、そこから何なにかが生うまれるかもしれないという期待きたいはあります。