ここ最近、TikTokで話題になっている曲がある。それがMAISONdes「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」だ。今年5月に発表されたこの曲は、7月下旬頃から火が付き始め、現在TikTokの投稿数は5万6,000件を突破(記事執筆時点)。TikTokの楽曲人気急上昇ランキングでも1位を獲得している。『恋とオオカミには騙されない』(ABEMA)出演でも知られるなえなのや山之内すずといったタレントも使用したことでその流れに拍車が掛かり、ハッシュタグ「#ヨワネハキ」の総動画視聴数はすでに2,500万回を超えるなど、驚異的なスピードでバズを巻き起こしている。さらに、SpotifyやLINE MUSICといったストリーミングサービス上のバイラルチャートも急激に駆け上がり、楽曲としても今年を代表する作品になる勢いを見せているのだ。
この曲で印象深いのは、まずその歌詞であろう。冒頭の歌い出しのリズミカルな〈そういやさ そういやさ〉もさることながら、〈薄っぺらい人間です〉と少々自虐気味な告白をするフレーズのインパクトに加え、続く〈一歩前に出るのはやめときます/絡まれたくないはないからさ〉と綴られた控えめな姿勢が耳に残る。
リズムや振り付けもシンプルで、誰でも踊りやすい作りになっているのもポイントだ。特に両手で拒否する仕草と、腕で「×」を作る振りがキャッチーで、音頭的なリズムと相まって、なんとも言えない可愛さを醸し出している。
例えば、なえなのの投稿を見てみると、楽曲の持つその可愛らしい魅力が彼女の脱力感と絶妙にマッチしている。ある種の“消極的”な弱い自分を歌った歌詞が、キュートに、かつ明るく表現されているのもポイントかもしれない。
作詞・作曲は、今年上半期に自身初のオリジナル曲「寄り酔い」で大きな注目を集めたシンガーソングライターの和ぬか。「寄り酔い」では女性の赤裸々な恋心を歌っていたが、今作はそれとはまた異なるタイプの楽曲である。動画で使われているのはサビ部分のみだが、楽曲全体を通して見てみると、主人公がこれまでしてきた生き方を独白するような歌詞が特徴だ。
〈私は怖がりで/知らないことには手をつけず/誰かがやって来て/毒味をするまで待っていた〉
〈マニュアル通りな生活を/来る日も淡々と過ごしていた〉
このように、徹底してこの曲は自分の平凡さを炙り出していく。マニュアル通りで意気地なしな自分。主人公はそんな自分の性格を、臆病で薄っぺらいと歌う。しかし、最後には〈試しにちゃんと生きてみよう〉と前向きな姿勢で締めくくるのだ。いわば、自分のマイナス面を自覚した上で、でもこれからはしっかりと生きていこうと改心する歌である。
【102】[feat. 和ぬか, asmi] ヨワネハキ / MAISONdes