Skoop On Somebody、25周年しゅうねんの足跡あしあと刻きざんだアルバム『1997』　KO-HEY復帰ふっきライブの裏側うらがわから合宿がっしゅくでの制作せいさく秘話ひわまで

　Skoop On Somebodyが、約やく3年ねん4カ月かげつぶりとなるアルバム『1997』をリリース。今年ことしデビュー25周年しゅうねんを迎むかえ、オリジナルメンバーのKO-HEYが12年ねん半はんぶりに復帰ふっきしてから初はつのライブを2月がつに、5月から9月がつにかけて10都市とし63公演こうえんのツアーを開催かいさい。ファンにとってもメンバーにとっても特別とくべつな喜よろこびにあふれた25周年しゅうねんとなった。そんな周年しゅうねんを締しめくくるアルバムは、彼かれらがデビューした年としから『1997』と名なづけられた。経験けいけんとキャリアが活いかされた、ちょっと遊あそび心ごころのある大人おとなのサウンド、初期しょき衝動しょうどうを感かんじさせる熱あつさ、決けっして廃すたれることのない愛あいとメッセージ……一周いっしゅうも二に周しゅうも回まわったエモーショナルさで包つつみ込こんでくれる同どう作さくについて、TAKE（Vo）、KO-ICHIRO（Key）、KO-HEY（Dr）に聞きいた。（榑林史し章あきら）

Skoop On Somebody撮とり下おろし写真しゃしん

12年ねん半はんぶりのKO-HEY復帰ふっきライブは「人生じんせいで一番いちばん緊張きんちょうした日ひ」

――2月がつ27日にちに東京とうきょう・LINE CUBE SHIBUYAで開催かいさいされた25周年しゅうねん記念きねんライブ『Skoop On Somebody「25th anniversary LIVE Vol.1～REJOIN～」』は、KO-HEYさん復帰ふっきライブということもあり、温あたたかい空気くうきで“お帰かえり感かん”がすごかったですね。

KO-HEY：僕ぼくもあの空気くうきは初はじめてでした。12年ねん半はんぶりだったので、久ひさしぶりに大おおきなステージに立たった時ときの空気くうきって、こういう感かんじだったよなと。“気き”というものが目めに見みえるような感覚かんかくでした。あの日ひを思おもい出だすと未いまだにブルッとなるくらい、人生じんせいで一番いちばん緊張きんちょうした日ひでした。正直しょうじきステージでのことは、ほとんど覚おぼえていません。

TAKE：僕ぼくもあの場ばにいたようでいなかったような、どこか現実味げんじつみがありませんでした。なるべく冷静れいせいにいようと思おもいつつも、何なん度ども自分じぶんの感情かんじょうがレベルオーバーしそうになりました。「KO-HEYがおるやん！」って（笑）。ただ、3人にんに戻もどった意味いみをお披露目ひろめする場ばだったわけですから、エンターテインメントとしてどう成立せいりつさせるか、ショーを進行しんこうする立場たちばとして同時どうじにすごく考かんがえていましたね。

KO-ICHIRO： 2時間じかん以上いじょうのライブでドラムを叩たたくためにはスタミナが必要ひつようで、ハイキングしていない人ひとがいきなり富士山ふじさんに登のぼらされるようなものです。だからこそ、KO-HEYに不安ふあんを感かんじさせないように、なるべく普段ふだん通どおりにやろうと意識いしきはしていました。いつもやってくれているバンドの仲間なかまたちに来きてもらえたことは、一ひとつ安心あんしん材料ざいりょうだったと思おもう。あとはちゃんとやれれば、みんなから合格ごうかく通知つうちをもらえるんじゃないかと。

――その後ご、間髪かんぱつ入いれず5月がつから全ぜん63本ほんのツアー『Skoop On Somebody「25th anniversary LIVE Vol.2～club SOS～」』を回まわって。今回こんかいのアルバムはその過程かていで制作せいさくへの機運きうんが高たかまり、作つくることになったのですか？

TAKE：もともと「25周年しゅうねんの節目ふしめで出だしましょう」とは決きめていたんです。今回こんかいのアルバムの曲きょくのほとんどは、昨年さくねん12月がつに発表はっぴょうしたKO-HEYの“REJOIN”の半年はんとし前まえに行いった、山奥やまおくでの合宿がっしゅくの中なかでできたものなんです。一度いちど脱退だったいした人間にんげんが戻もどるということは、たくさんの大人おとなを巻まき込こむことになるから、一回いっかい3人にんで答こたえ合あわせをしよう、と。山奥やまおくでレコーディングセッションをする時ときに、KO-HEYやKO-ICHIROが持もち寄よった曲きょくに、僕ぼくが仮かり歌うたを乗のせた楽曲がっきょくが、アルバムの中核ちゅうかくを為なしています。ツアーの勢いきおいのまま、合宿がっしゅくでできた曲きょくを含ふくめて、今いまの3人にんの新あたらしい形かたちを皆みなさんにお届とどけしよう、と。12年ねん半はんバンドにはいなかったとは言いえ、僕ぼくたちの中なかにはずっとKO-HEYがいたので、決けっして空白くうはくではなかった。だからこそ3人にん揃そろった25周年しゅうねんのアルバムタイトルは、デビュー年ねんの『1997』がいいんじゃないかと。

――今いまの言葉ことばで言いうと、すごく“エモい”ですね（笑）。

TAKE：そうなんです。オジサンたち、結構けっこうエモいんです（笑）。僕ぼくはミュージカルで修行しゅぎょうさせていただいたり、KO-ICHIROは鈴木すずき雅之まさゆきさんやいろいろなアーティストの方ほうのバックやプロデュースを務つとめたり、個々ここの側面そくめんは育そだててきたけど、一人ひとりのミュージシャンのエモさみたいなもの×3がSkoop On Somebodyなんだよということは、KO-HEYが思おもい出ださせてくれた部分ぶぶんが大おおきいです。Skoop On Somebodyの歴史れきしの中なかで、今いま最もっともエモいかもしれません。

――そのエモさというのは、1stアルバム『SKOOP』を制作せいさくした時ときの初期しょき衝動しょうどうのようなものでしょうか？

TAKE：僕ぼくは、デビューの時ときは邪念じゃねんの塊かたまりでした（笑）。日本にっぽんにこういう音楽おんがくが浸透しんとうしていなかったから、「カマしてやるぜ！」みたいな、気負きおいのほうが大おおきかったかもしれない。今いまも気負きおっていますけど方向ほうこう性せいが違ちがっていて、「伝つたえたい！」という、思おもいや願ねがいに変かわりました。

KO-ICHIRO：合宿がっしゅくの時ときは、3人にんでやれることの喜よろこびが一番いちばん強つよかった。だから僕ぼくは、「こんな曲きょくがやりたい」よりも、50代だいの僕ぼくらが3人にんでこれから奏かなでていきたい音楽おんがくを、合宿がっしゅくに持もって行いきました。2人ふたりだとどうしてもデュオになってしまうけど、そこにもう一声いっせいが加くわわることでハーモニーが成立せいりつする。その喜よろこびが、曲きょくを書かいている時点じてんからあったから、素直すなおに形かたちにした曲きょくたちが、結局けっきょく最後さいごまでアルバムに残のこった。それが初期しょき衝動しょうどうの強つよさだと思おもいます

――KO-HEYさんは、合宿がっしゅくってどうでしたか？

KO-HEY：僕ぼくはこのバンドのファンなんです。TAKEの歌うたのファンで、KO-ICHIROのキーボードのファンで。そのことに改あらためて気きづいた時ときに、ファンとして自分じぶんが聴ききたい音楽おんがくは何なにだろうかと考かんがえました。20代だい～30代だいではない、50歳さいを過すぎた男おとことして、このバンドがやっている音おとは何なにだろうと思おもったことを曲きょくにしました。例たとえば、今いまさら流行りゅうこうの服ふくを着きたって似合にあわないみたいな、どうしようもないこともある。ここからまたスタートしたら、きっとすぐ30周年しゅうねん、35周年しゅうねんになると思おもうので、25周年しゅうねんの足跡あしあととして相応ふさわしいものはどんなものなのか。そんな思おもいで、デモを作つくっていました。

――そういう3人にんの思おもいがあふれた記念きねんすべき1枚まいが、直球ちょっきゅうのラブソングで幕まくを開あけるというのが、S.O.S.らしいなと思おもわせてくれました。

KO-HEY：1曲きょく目めの「LOVINʼ YOU」は、誤解ごかいを恐おそれずに言いうと「また逢あう日ひまで」の2022年版ねんばんを作つくりたかったんです。

――尾崎おざき紀おさむ世よ彦さんの？

KO-HEY：はい。「また逢あう日ひまで」は別わかれの曲きょくでしたけど、朗々ろうろうと歌うたい上あげるシンガー像ぞうがあって、ああいった感かんじでTAKEに朗々ろうろうと愛あいを振ふりまいてほしくて。

TAKE：作詞さくしもKO-HEYなんですけど、我々われわれのREJOINにまつわる思おもいをラブソングとして成立せいりつさせるスキルを発揮はっきしていて。思おもいだけでは越こえられない壁かべもあるけど、思おもいがなければ何なにも始はじまらない。そのバランスが絶妙ぜつみょうで、25年ねん経たってみんな大人おとなになっただけのことはあるなって。

――ブラックミュージックには、色褪いろあせない魅力みりょくもありながら、追求ついきゅうしようと思おもえばいくらでも追求ついきゅうできる、年月としつきが経たてば経たつほど味あじわい深ぶかさが増ます側面そくめんもあります。それが最もっとも表あらわれていると思おもうのが、「ORGEL」です。相手あいてへの思おもいをオルゴールに例たとえているのが、すごくおしゃれです。

TAKE：作曲さっきょく・編曲へんきょくは、「sha la la」を書かいてくださったFace 2 fAKEさんです。僕ぼくらが初はじめて作家さっかさんの曲きょくを使つかうことになった節目ふしめの時とき、それまで飲のみ友ともだちだったFace 2 fAKEのOh!Beさんが、「僕ぼくらが書かくよ」と言いってくれて「sha la la」が生うまれた。やっぱり節目ふしめの今いま作さくでも、またFace 2 fAKEにお願ねがいしよう、と。Face 2 fAKEはサウンドトラックも手てがけていることを受うけて、今いまの3人にんの年齢ねんれいで歌うたえるもの、ちょっとスタンダードで現代げんだいのフランク・シナトラみたいなものがいい。そういうアイデアを、Face 2 fAKEが曲きょくにしてくれました。

――イントロからミュージカル映画えいがのような壮大そうだいさです。

TAKE：歌うたい上あげて「どうだ」みたいなスタンダードではなく、なるべく素朴そぼくなほうがいいと思おもって歌詞かしを書かきました。僕ぼくの中なかのイメージは、「大おおきな古こ時計とけい」です。ああいう誰だれもが目めにしたことがあるワードで、誰だれもが経験けいけんしたことのある恋愛れんあいや別わかれを歌うたうことで、「sha la la」と同おなじように、いろんな人ひとに歌うたい継つがれていくイメージでした。

――〈いくつかのピンが 壊こわれちゃったから〉とあって。

TAKE：思おもい出での中なかでしか会あえない人ひともいて、大人おとなになるとその数かずも増ふえていく。それは思おもい出でが増ふえるということで、大人おとなであればこその特権とっけんです。それが人ひとを優やさしく豊ゆたかにする。年としを重かさねるということは、枯かれていくばかりではなく、豊ゆたかになっていくんだよということを、五十路いそじバンドとして伝つたえたいと思おもいました。

KO-ICHIRO：Face 2 fAKEの底力そこぢからを感かんじる曲きょくです。生なま演奏えんそうという部分ぶぶんにすごくこだわってくれて、ストリングスだけで14名めい、そこに我々われわれとバンド、TAKEも一緒いっしょに「せーの」で録ろくったんです。それによって、デモにオーバーダビングを重かさねていくのでは絶対ぜったいに出だせない“喜よろこび感かん”とか、ヒリヒリとしたスリルがあって、きっと聴きく人ひとのハートを摑む。その中なかでしっかり歌うたい切きったTAKEもさすがでした。

TAKE：ここではミュージカルで培つちかったことが役立やくだっています。ミュージカルは演者えんじゃが気持きもちよく歌うたってしまった時点じてんで終おわり。歌うたはセリフの代かわりだから、言葉ことばが伝つたわらないといけない。地球ちきゅうゴージャスのプロデュース公演こうえん『The PROM』というミュージカルにホーキンス校長こうちょう役やくで出演しゅつえんさせていただいた時とき、岸谷きしたに五朗ごろうさんからそのことをすごく指摘してきされました。だからここでは、歌うたうことを捨すて、言葉ことばを伝つたえることを意識いしきしました。歌詞かしも、オーディエンスが絵えを思おもい浮うかべられる行間ぎょうかんを意識いしきしていて、それもミュージカル経験けいけんがなければ、生うまれてこなかった言葉ことばたちです。