AmamiyaMaako、SNSの批判ひはんに対たいする憤いきどおりを音楽おんがくに　「多様たよう性せいが叫さけばれているけど全然ぜんぜん認みとめ合あっていない」

　サントリーPepsiや航空こうくう会社かいしゃピーチ・アビエーションなどの企業きぎょうCMの楽曲がっきょくを手てがけ、3人組にんぐみユニット“はるかりまあこ”（HALLCA、仮谷かりやせいら、AmamiyaMaako）として活動かつどうするほか、元もとWHY@DOLLのHau.のアルバム『STEP BY STEP』も手てがけるなど活動かつどうの場ばを広ひろげているトラックメイカー／シンガーソングライターのAmamiyaMaakoが、デジタルシングル「ひどいこと言いっちゃダメよ」をリリースした。

　SNSの誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうや批判ひはん的てきなコメントに対たいする考かんがえをテーマにした楽曲がっきょくで、軽快けいかいなバンドサウンドに乗のせて中毒ちゅうどく性せいの高たかいウィスパーボイスのラップを聴きかせている。タイトルの「ダメよ」という優やさしく諭さとすムードに反はんして、ラップの内容ないようは実じつに辛辣しんらつで、可愛かわいいからとナメてかかると火傷かしょうをしてしまう楽曲がっきょく。同どう曲きょくについて、楽曲がっきょく制作せいさくに対たいする思おもいなど話はなしを聞きいた。（榑林史し章あきら）

相手あいては匿名とくめいで誰だれかも分わからないのはフェアーじゃない

――「ひどいこと言いっちゃダメよ」は、どういうきっかけで作つくったのですか？

AmamiyaMaako（以下いか、Amamiya）：サウンド面めんで言いうと、2021年ねんから雑誌ざっし『月刊げっかんサイゾー』で、著名ちょめいなプロデューサーやトラックメイカーをインタビューする『スタジオはいります』という連載れんさいをさせていただいていて、そこで伺うかがったお話はなしを糧かてにして、セルフプロデュースで作詞さくし・作曲さっきょく・編曲へんきょくも全部ぜんぶ自分じぶんで手てがけたアルバムを作つくることを目標もくひょうに、2022年ねんはトラックメイクに精進しょうじんした1年ねんでした。2023年ねんは逆ぎゃくにバンドサウンドをやりたいと思おもって作つくったのがこの曲きょくです。

――バンドサウンドと打うち込こみの両方りょうほうが入はいっていますね。

Amamiya：打うち込こみも使つかっていますけど、ドラムとギターとベースは生せいで弾ひいてもらいました。デモ段階だんかいでは私わたしがギターを弾ひいて、私わたしが考かんがえたフレーズを活いかしてもらうところがあったり、新あたらしく考かんがえてもらうところがあったり、そういうディレクションもやらせてもらいました。コツコツとパソコンに向むき合あう作つくり方かたとは、また違ちがった制作せいさくになりました。

――最初さいしょはソロでDTMをやっていて、その後ご“はるかりまあこ”というユニットをやって、今年ことしはバンドサウンドに目めを向むけた。つまりAmamiyaMaakoの第だい三さん章しょうみたいな。

Amamiya：軸じくは変かわらずDTMですけど、その上うえでできる自分じぶんなりのアプローチをいろいろやっている感かんじですね。ずっと同おなじことはやりたくないのと、そもそも飽あき性しょうだというのもあって。コロナ禍かに入はいってギターを本格ほんかく的てきに練習れんしゅうし始はじめたことも手伝てつだって、打うち込こみでは感かんじられない生なまでやることの感覚かんかくも大事だいじにしたいなと思おもっていて。それが第だい三さん章しょうなのか分わかりませんけど、“何なにとか期き”みたいなことで言いったら“バンドサウンドお熱ねつ期き”みたいな（笑）。

――歌詞かしは、SNSの誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうとか個人こじん攻撃こうげきに対たいしてもの申もうしていますが、どうしてこういう歌詞かしを書かこうと？

Amamiya：コロナ禍かの時ときからSNSで問題もんだいになっていて、X（旧きゅうTwitter）なんかでも、議論ぎろんではなく、ただ批判ひはんし合あっていることが多おおいなと思おもって。誰だれかがバズると、必かならず真ま逆ぎゃくのことを言いって盛もり上あがりに水みずを差さすコメントがあったり。漠然ばくぜんと「嫌いやだな〜」と思おもっていたんですが、今年ことしに入はいってマスクをするかしないかは個人こじんの自由じゆうだということになったタイミングの時ときに、私わたしがマスクをした自じ撮とり写真しゃしんをXに上あげたら、それにたくさん「いいね」がついたんです。そうしたら、「誰だれだか知しらないけど、いつまでマスクしてるんだよ」ってコメントがきて。「いやいや、誰だれだか知しらないのはこっちのセリフで、そんな人ひとに何なんでそんなこと言いわれなきゃいけないんだよ」と思おもって。マスクをするもしないも自由じゆうだと政府せいふが示しめしてニュースにもなっているのに、どうしてマスクをする人ひととしない人ひとに、分断ぶんだんするんだろうと思おもったんです。何なにか事情じじょうがあるかもしれないし、はずしたい人ひとははずせばいいし。特とくに音楽おんがく界かいは新型しんがたコロナウィルスの蔓延まんえんが始はじまった時ときに、真まっ先さきにライブハウスがやり玉だまに上あがって、声こえ出だしはOKになったものの、今いまもいろいろな思おもいを抱かかえながらマスクをしている人ひともいるわけで。そんな人ひとの思おもいをよそに、誰だれだか知しらない人ひとにそういうことを言いわれるのは納得なっとくいかなくて。私わたしは顔かおも名前なまえも出でているのに、相手あいては匿名とくめいで誰だれかも分わからないのはフェアーじゃない。そんな経験けいけんをきっかけに、単純たんじゅんに「そんなひどいこと言いっちゃダメよ」って思おもって書かき始はじめました。

――タイトルの「ダメよ」とか、歌うたパートの〈噛かみつかないでね〉とかは優やさしく言いっている雰囲気ふんいきですけど、ラップはストレートに厳きびしいことを言いっていて。

Amamiya：口調くちょうは「ダメよ」と優やさしいですけど、内容ないようは全然ぜんぜん優やさしくはないです。私わたしにいろいろ言いってくる人ひとは、私わたしがいつもニコニコしててい返いかえさないと思おもっている人ひとが多おおくて、そうじゃないんだよってことを伝つたえたくて。あと、2022年ねんにリリースしたアルバム『Drops』に「Girl’s worry」という曲きょくを収録しゅうろくしたのですが、その曲きょくでは「男女だんじょに関係かんけいなく嫌いやなことを言いってくるヤツや自分じぶんのことを嫌きらいだと言いってくるヤツのことは、もう無視むししていこうぜ」と、ちょっと強つよめの歌詞かしを書かいたんです。それに対たいしてファンの方ほうがちょっとザワついて、「刺ささった」とか好意こうい的てきに受うけ取とってくれた人ひとが多おおくて、私わたしも思おもっていることをもっとストレートに言いっていいんだなと思おもったのもあって。それに、ラップって自分じぶんの言いいたいことを言いうためのツールという側面そくめんもあるので、自分じぶんの中なかの怒いかりみたいなものや思おもっていることをストレートに歌詞かしにしました。

――リリースして以降いこう、ファンの反響はんきょうはどういう感かんじですか？

Amamiya：曲きょくの説明せつめいにある「クソリプ」という言葉ことばに「フフッ」て反応はんのうしてもらえて、ライブの時ときに「すごく刺ささりました」と言いってくださる方ほうがいたり、泣なきながら聴きいてくださっている人ひともいて。きっとその人ひとたちも嫌いやな思おもいを経験けいけんしたことがあったのかもしれないですね。私わたしは「分断ぶんだんし合あっている」というところに、すごく疑問ぎもんを感かんじていて、多様たよう性せいが叫さけばれている世よの中なかだけど、多様たよう性せいを全然ぜんぜん認みとめ合あっていないと思おもってます。

――思おもっていたことなだけに、歌詞かしは割わりと早はやく書かけたんですか？

Amamiya：そうですね。ただ、書かき終おえた後のちに、稲垣いながき吾郎ごろうさんと新垣あらかき結衣ゆいさんの主演しゅえんで映画えいが化かされた朝井あさいリョウさんの『正せい欲よく』という本ほんを読よんだんですけど、すごくショックを受うけました。2番ばんの歌詞かしで〈誰だれも彼かもカテゴライズ〉とか〈マジョリティーは心地ここちいいですか？〉とか書かいているんですけど……朝井あさいさんの『正せい欲よく』は、マイノリティの中なかのマイノリティの人ひとの話はなしなんですね。LGBTに分わけられない、性せいの対象たいしょうが人ひとではない人ひとが主人公しゅじんこうのお話はなしで、マイノリティの中なかのマイノリティの人ひとにしたら、世よの中なかが言いう多様たよう性せいは、マイノリティの中なかのマジョリティだと言いっていて。そんな人ひとがいるなんて考かんがえたこともない、みんなの普通ふつうがその人ひとには普通ふつうじゃないということがテーマになっている本ほんで。私わたしも全まったく知しらなかった世界せかいにすごく衝撃しょうげきを受うけて、私わたしもまだまだ考かんがえが浅あさかったなって少すこし反省はんせいしました。考かんがえ方かたとしてリンクする部分ぶぶんもあるけど、その部分ぶぶんまでは考かんがえて書かいていなかったなと。

――本ほんを読よんだり映画えいがを観みるなどして発見はっけんや気きづきがあったら、それも歌詞かしにしっかり活いかしていきたいと？

Amamiya：そうですね。歌詞かしを書かくために読よんだり観みたりすることはないですけど、本ほんを読よんだり映画えいがを観みたりして引ひっかかったことは、必かならず携帯けいたいのメモに残のこしておくようにしていて。いざ作詞さくしをするためにテーマを決きめた時ときに、そう言いえばあの本ほんであんなことを言いっていたなって、振ふり返かえってメモを見みることはあります。本ほんよりも映画えいがが多おおいかもしれませんね。