ゲスの極きわみ乙女おとめ、4人にんに訪おとずれた“10の転機てんき”をたどる1万まん字じインタビュー　結成けっせいから改名かいめい、そして現在げんざいを語かたる

　ゲスの極きわみ乙女おとめのメジャー6作さく目めとなるアルバム『ディスコの卵たまご』がリリースされた。メンバーそれぞれの活動かつどうもますます活発かっぱつ化かするなか、彼かれらにしか鳴ならせないグルーヴとアンサンブルを“踊おどる”というゲスがずっと表現ひょうげんし続つづけてきたテーマに昇華しょうかした充実じゅうじつ作さくだ。そのリリースを記念きねんして、今回こんかいリアルサウンドでは、ゲスの極きわみ乙女おとめの歩あゆみのなかで訪おとずれた10の転機てんきをピックアップ。さまざまな出来事できごとを経へて変化へんかし続つづけるゲスのヒストリーを、メンバー4人にんで振ふり返かえってもらった。（小川おがわ智宏ともひろ）

①結成けっせい
「先さきのことは何なにも見通みとおしてなかった」

――ちょうど12年ねん前まえにゲスの極きわみ乙女おとめ。はスタートしたわけですけど、あらためて結成けっせい当時とうじの気持きもちを振ふり返かえるとどうですか？

川谷かわたに絵え音おん（以下いか、川谷かわたに）：先さきのことは何なにも見通みとおしてなかったですね。当時とうじはただただ“遊あそび”っていう感かんじだったので、何なにも考かんがえてなかった。課長かちょうは働はたらいてたしね。

休日きゅうじつ課長かちょう（以下いか、課長かちょう）：そうそう。

川谷かわたに：水曜日すいようびのノー残業ざんぎょうデーと土日どにちだけライブをやるっていう。そもそも1年ねん目めってライブはほとんどやってなかったし。

ちゃんMARI：1年ねん目めは、11月くらいに1本ほんやっただけだったよね。

課長かちょう：最初さいしょスタジオ入はいって、ちょっと空あいて、また次つぎのスタジオとかって感かんじだった。

――でも、一応いちおうスタジオ入はいって曲きょく作つくって、音源おんげんにしてっていう目論見もくろみはあったんですよね。

川谷かわたに：いや、それもこのままだと特とくに何なにもせずに終おわりそうだなって思おもったから、僕ぼくがレコーディングを勝手かってに決きめて（笑）。CDのクレジットとかも勝手かってに決きめて。そうやってやらざるを得えなくしたっていう感かんじでしたね、どっちかと言いうと。でも、やってみたら「変へんな曲きょくができたな」って思おもって。「ライブでやってみたら面白おもしろいかも」みたいな。

ちゃんMARI：当時とうじは他ほかにもバンドをやっていたんで、本当ほんとうに息抜いきぬきみたいな感かんじでスタジオに入はいってたような記憶きおくがあります。でも実際じっさい入はいってみたらすごく楽たのしくて。それまでやってたバンドの感かんじともまったく違ちがう感かんじでやりたかったし、実際じっさいそういう感かんじになったから「あー、面白おもしろいな」って。

ほな・いこか：私わたしも当時とうじはいろいろなバンドをやりたい時期じきだったんです。別べつのバンドを組くんでたんですけど、いろんな人ひととやってみたいなと思おもってSNSで言いったら拾ひろってくれたのが川谷かわたにさんだった。indigo la End（川谷かわたにに加くわえ、休日きゅうじつ課長かちょうも当時とうじメンバー）もCRIMSON（ちゃんMARI所属しょぞくのバンド）も好すきだったので、「なんか楽たのしいバンドできちゃった！」みたいな。そんな感かんじでしたね。

課長かちょう：うん、最初さいしょは「バンドやろうぜ！」って感かんじじゃなかった。「スタジオでセッションして遊あそぼう」という話はなしからだったんです。でも、気きづいたらどんどんバンドになっていった。“バンド名めいがついた”というのがデカかったかもしれないですけど、実感じっかんとしてはだんだんバンドになっていった感かんじでした。

――音楽おんがく性せいも決きめていたわけじゃないんですよね。

川谷かわたに：そう。ちょっとラップ要素ようそを入いれるとか、早口はやくちを入いれるとかっていうのぐらいしかなかったです。

――それは川谷かわたにさんのなかではインディゴ的てきではないものをやりたかったということ？

川谷かわたに：そうですね。ちょうどその頃ころ、インディゴが『スペースシャワー列伝れつでんツアー』に出でた時ときに、僕ぼくら以外いがいの周まわりのバンドはもれなく盛もり上あがってたんですよ。だから、盛もり上あがるバンドがやりたかった。それでディスクユニオンで自主じしゅ盤ばんを出だしたら、めちゃくちゃ売うれたんです。それもあって盛もり上あがるようになって。そのあと後輩こうはいのバンドの企画きかくに呼よばれたら、僕ぼくらのお客きゃくさんだけで40人にんくらいいた。めちゃくちゃ盛もり上あがってましたね。

課長かちょう：急きゅうに盛もり上あがったから、「会社かいしゃにバレたらヤバい！」って思おもってました（笑）。

②初はじめてのCDリリース
「名前なまえを決きめた時ときくらいから狙ねらい始はじめてた。結果けっか想像そうぞう通どおり、いや想像そうぞう以上いじょうになったなって」

――それで2013年ねんに『ドレスの脱ぬぎ方かた』をリリースしたわけですが、「ぶらっくパレード」のMVがハネたじゃないですか。あれは狙ねらった感かんじだったんですか？

川谷かわたに：僕ぼくはもう、名前なまえを決きめた時ときくらいから狙ねらい始はじめてた。メンバーの名前なまえとか、“ゲスの極きわみ乙女おとめ。”というバンド名めいとか。バンド名めいは僕ぼくが考かんがえたわけじゃないんですけど、いい名前なまえだったし、そこからいろいろアイデアが湧わいてきて。途中とちゅうから狙ねらいに行いって、結果けっか想像そうぞう通どおり、いや想像そうぞう以上いじょうになったなって感かんじでした。

――曲きょくもさることながら、メンバー4人にんのキャラクターが最初さいしょからはっきりしていたし、それを打うち出だしてもいたじゃないですか。あれはどういう狙ねらいがあったんですか？

川谷かわたに：「メンバー4人にんともわかるバンドっていないな」と思おもって。そういうバンドのほうが絶対ぜったいうまくいくだろうなと思おもってたんです。でも、最初さいしょは「indigo la Endの人ひとがやってるバンド」というふうに言いわれていたから、それを打破だはしたくてメンバーのキャラづけをしていった。

ちゃんMARI：気きがついたら名前なまえがついてましたからね、「ほう……？」みたいな（笑）。最初さいしょは戸惑とまどいもあったりしたんですけど、あまりやったことがないようなことなので、面白おもしろがってたかもしれない。

課長かちょう：最初さいしょは「“ほな・いこか”ってすげえな」って思おもいましたからね。

ほな・いこか：名前なまえを知しった時ときにはCDもできちゃって、もう出でちゃうから何なにもできなくて。「これでいきます」って言いわれたから「誰だれ？」みたいな（笑）。“ほな”って入はいってるから私わたしのことなんだろうなと思おもったけど、もう変かえることも無理むりだった。でも、その時ときはみんな変へんな名前なまえで、川谷かわたにさんも“MC.K”だったし、まあいいかと思おもって。それで「ドSキャラにしよう」って……言いわれたんでしたっけ？

川谷かわたに：僕ぼくが言いった。

ほな・いこか：「ドSキャラでいこう」となって始はじまっていった時ときに、キャラに迷まよいすぎちゃって。ラジオに出でても、目上めうえの方ほうにタメ口こうで話はなして、終おわったあとに「すみません！」って言いって帰かえっていく、みたいな（笑）。血迷ちまよってた時期じきがありますねえ。ドラムセットの上うえに立たって「かかってこい！」って言いったりとか。でも、「かかってこい！」は別べつにドSじゃないんですよ。

ちゃんMARI：あはははは！

川谷かわたに：でもまあ、上うえから言いってるっていう（笑）。そういう要素ようそがうまくいった要因よういんではあるからね。課長かちょうがほな・いこかのことが好すきっていうキャラとかも――。

ほな・いこか：今いまもたまにステージで普通ふつうに「かわいいね」って言いってくれたりするし（笑）。

課長かちょう：当時とうじのキャラが今いまもなんとなく続つづいてる（笑）。あの時とき、すごい刷すり込こんだからなあ。

③indigo la Endと同時どうじにメジャーデビュー
「このまま行いくとライブハウスで終おわるなと思おもった」

――そして2014年ねんにゲスはメジャーデビューを果はたしました。インディーズ時代じだいはまさにフェスで盛もり上あがるような音楽おんがくを突つき詰つめていた感かんじですけど、メジャー1stミニアルバムの『みんなノーマル』はかなり方向ほうこう性せいが違ちがいましたよね。

川谷かわたに：このまま行いくとライブハウスで終おわるなと思おもったんです。あの時ときすでに売上うりあげ的てきにインディーズのレベルじゃなかったんですけど、メジャーに行いくとなったらもっと適応てきおうしていかないといけないし、ポップスをやりたいなと思おもって、方向ほうこう転換てんかんをしました。その時ときは「まったくゲスっぽくない」って言いわれたんですけど、「パラレルスペック」とか今いまではゲスの極きわみ乙女おとめっぽいんだけど、当時とうじは「インディゴだ！」って言いわれてた。途中とちゅうから誰だれも言いわなくなったんですけど。

――じゃあ、メジャーデビューのタイミングというのは「この先さきどこに進すすんでいくのか」というような意味いみでも転機てんきだったんですね。

川谷かわたに：そうですね。課長かちょうが仕事しごと辞やめたぐらいの頃ころなので。

課長かちょう：「どこまで行いくんだろう？」みたいな感覚かんかくだった気きがするけどね。会社かいしゃも辞やめたし。

ほな・いこか：よく辞やめましたよね。

ちゃんMARI：本当ほんとうに。

――大おおきな決断けつだんじゃないですか。人生じんせいにおいて「このバンドでやっていくぞ」っていう。

課長かちょう：でもよかったと思おもいます、あのタイミングで。それまで会社かいしゃで働はたらいていたこともよかったと思おもうし。

――みなさんは「メジャーデビューする」という変化へんかをどう感かんじていました？

ちゃんMARI：やっていること自体じたいはインディーズとメジャーでそこまで違ちがいはないと思おもうんですけど、ライブに来きてくださるお客きゃくさんが急きゅうに増ふえたりとか、それまでにやらなかったこと――メイクとか衣装いしょうをきちんと作つくり込こんだアー写うつし撮影さつえいをしたり、やったことない経験けいけんがどんどん増ふえていって。「こうやってやってるんだな」と思おもったりしました。

ほな・いこか：基本きほん的てきに速はやかったんですよ、すべてのスピードが。最初さいしょのCDを出だしたらディスクユニオンで一気いっきに売うれたりとか、MVが話題わだいになったりとか。メジャーデビューも、そうやってうわーっと過すぎていくなかのひとつではあったんです。でも、バンドをやってる身みとしてはメジャーデビューするってすごいことだから、「ついに来きてしまったか」という。「メジャーデビュー来きちゃった」みたいな。そこからバンバン決きまっていって。

――実際じっさい、2014年ねんから2015年ねんにかけての期間きかんは活動かつどうのペースとしても相当そうとうなものだったじゃないですか。リリースのペースもすごかったし。

川谷かわたに：でも、作つくるのはあまり苦くじゃなかった。やりたいことがいっぱいあったから、それをその都度つどやっていた感かんじで。ペースが早はやいとも思おもってなかったです。体調たいちょうは崩くずしてましたけどね（笑）。

ほな・いこか：体調たいちょう、ずっと崩くずしてましたよね。合宿がっしゅくしたりしてたし。

川谷かわたに：そう、合宿がっしゅくが意外いがいとよくなかった（笑）。都内とないだと家いえに帰かえれるし、帰かえらないといけないからそんなに遅おそくまでやらないんですけど、泊とまりだからどこまでもやれちゃう。朝あさまでやって、また次つぎの日ひ昼ひるから頑張がんばる、みたいな。それで睡眠すいみん不足ふそくになっていったのもあった。忙いそがしかったから、ツアー先さきでも曲きょくを作つくってたんです。覚おぼえてるのは、金沢かなざわのライブハウスに併設へいせつされているスタジオで「ロマンスがありあまる」を作つくったんですよ。納期のうきもあったからパパッと作つくって。そんな感かんじで、“本腰ほんごし入いれてる感かん”がなかったのがよかったのかもしれない。

④大だいブレイクを経へて『NHK紅白こうはく歌合戦うたがっせん』出場しゅつじょうへ
「“このままだとヤバいぞ”みたいな焦あせりがあった気きがする」

――2015年ねんの年末ねんまつには『NHK紅白こうはく歌合戦うたがっせん』に初はつ出場しゅつじょうしましたが、あの年としはゲスフィーバーの最初さいしょのピークで。音楽おんがく番組ばんぐみだけじゃなく、バラエティへの出演しゅつえんも多おおかったですよね。

川谷かわたに：キャラが強つよかったので、たとえば『しゃべくり007』（日本にほんテレビ系けい）とかでもテーマがいろいろあって、メンバーそれぞれにフォーカスできる感かんじがあって、あまり誰だれかひとりに負担ふたんがかかっている感かんじもなかったので、それは楽らくでした。

課長かちょう：助たすけ合あえる感かんじがあったよね。

川谷かわたに：僕ぼくに話はなしを振ふられる時ときもあるけど、4人にんで分担ぶんたんしていた感かんじがありましたね。変へんな名前なまえのバンドで、変へんな4人にんがやってる、みたいな感かんじでもあって、テレビが使つかいやすいバンドではあったと思おもう。

――人気にんきが盛もり上あがるにつれて、ライブのスケールもアリーナ級きゅうになっていったじゃないですか。そうやって“デカい会場かいじょうでやる”という部分ぶぶんで苦労くろうしたりはしましたか？

課長かちょう：それはめちゃくちゃずっと思おもっていたんですよ。メジャーデビューするタイミングぐらいから「ヤバいな」という思おもいはすごいあった。のぼり詰つめていくスピードが速はやいので、演奏えんそう面めんでめちゃくちゃ悩なやんでたというか、とにかくやらないとなっていう感かんじがすごくありました。（モニタースピーカーから）イヤモニを使つかうようになるタイミングでも、マイクを立たててイヤモニの練習れんしゅうをしたような気きがする。

川谷かわたに：してましたね、課長かちょうは。

課長かちょう：「このままだとヤバいぞ」みたいな焦あせりがあった気きがする。

――音楽おんがく的てきにも、『みんなノーマル』と『魅力みりょくがすごいよ』のあいだでも結構けっこう変かわってる感かんじがするじゃないですか。『みんなノーマル』はシーンに対たいするアンチテーゼみたいな意味合いみあいもすごくあったと思おもうんですけど、『魅力みりょくがすごいよ』はバンドとしての強つよさをナチュラルに伝つたえるようなものになって。バンドとしてグッと成長せいちょうした感かんじがありましたよね。

川谷かわたに：うん。アンチテーゼで曲きょくを作つくるということが面白おもしろくなくなってきて。特とくに言いいたいこともなくなった感かんじがしていたんです。どちらかというと、バンドが上あがっていくなかでの自分じぶんの気持きもちみたいなもののほうが自然しぜんと歌詞かしとして出でてきたので、そのほうが書かきやすかったし、バンドとしてももっとポップスとして成なり立たつ曲きょくを作つくろうと思おもっていたのもあったので。聴ききやすいように、だんだんアバンギャルドな感かんじを薄うすめていった感かんじはありました。