2024.07.25 18:00

Official髭ひげ男おとこdism、“完璧かんぺき”から解放かいほうされて手てにしたもの　アルバム『Rejoice』に至いたるまで

文ぶん・取材しゅざい＝森もり朋之ともゆき

　Official髭ひげ男おとこdismからメジャー3rdアルバム『Rejoice』が届とどけられた。前作ぜんさく『Editorial』以降いこう、「ミックスナッツ」「Subtitle」をはじめ、数すう多おおくのヒットシングルを放はなってきた彼かれら。3年ねんぶりのオリジナルアルバムとなる本ほん作さくには、前作ぜんさく以降いこうのヒゲダンの軌跡きせき、そして、さらに自由じゆう度どを増ました音楽おんがく性せいがダイレクトに表現ひょうげんされている。

　リアルサウンドではメンバー4人にんにインタビュー。アルバムの手てごたえ、新しん録ろく曲きょくを中心ちゅうしんとした収録しゅうろく曲きょくの聴ききどころ、さらに30代だいになってからの変化へんかやライブに対たいするスタンスなどについても語かたってもらった。（森もり朋之ともゆき）

『Rejoice』は人間にんげんらしさ、バンドらしさのあるアルバム

――メジャー3rdアルバム『Rejoice』がリリースされました。前作ぜんさく『Editorial』以降いこうの3年ねんの軌跡きせき、そのなかで生うみ出だされた色彩しきさい豊ゆたかなポップミュージックが体感たいかんできる作品さくひんだと思おもいます。

藤原ふじわら聡さとし（以下いか、藤原ふじわら）：そう言いってもらえると何なによりです。自分じぶんたちにとってもすごく愛着あいちゃくが湧わくアルバムなんですよね。いい感かんじに肩かたの力ちからを抜ぬくところは抜ぬいて、しっかり力ちからを入いれるところは入いれて。1曲きょく1曲きょくをすごく愛あいせるし、人間にんげんらしさ、バンドらしさがあるアルバムだなと思おもってます。わりとギリギリの制作せいさくだったんですけどね（笑）。

小笹おざさ大輔だいすけ（以下いか、小笹おざさ）：（収録しゅうろく曲きょくを）増ふやしたからね。

藤原ふじわら：うん。既存きそん曲きょくもかなり多おおかったんですけど……。

小笹おざさ：新曲しんきょくもできるだけたくさん入いれようと。

松浦まつうら匡ただし希まれ（以下いか、松浦まつうら）：そのほうがうれしいよね。

――全ぜん16曲きょくですからね。リスナーとしても大だい満足まんぞくのボリュームで。新曲しんきょくの制作せいさくはどうでした？

楢なら﨑誠（以下いか、楢なら﨑）：いい意味いみで肩かたの力ちからを抜ぬいた状態じょうたいでやれたと思おもいます。以前いぜんは「すごいミュージシャンにならなきゃいけないのかな」という感かんじがあったんですよ。僕ぼくだったらベースとサックス、みんなもドラム、ギター、ボーカル、鍵盤けんばんに対たいして、「他たの誰だれかに比くらべて、すごいことをやらなくちゃ」みたいな気きがしてたんですけど、今回こんかいのアルバムはそうじゃなくて。ヒューマン・グルーヴの大切たいせつさだったり、偶発ぐうはつ的てきに出でてきたフレーズを愛あいすることもできるようになったのかなと。

藤原ふじわら：考かんがえ方かたがシンプルになってきましたね。前まえは「間違まちがえちゃいけない」「パーフェクトなものを作つくらねば」という概念がいねんが先さきを走はしっていて、それに向むけて曲きょくを作つくっている感覚かんかくがあったんだけど、今回こんかいの制作せいさくは、そのときに弾ひいたこと、出でてきたものがよければ「これでいいじゃん」と思おもえるようになって。

小笹おざさ：短みじかい期間きかんでけっこうな曲きょく数すうを仕上しあげなくちゃいけなかったんですけど、4人にんで集あつまって、1日にちしっかりやればいいものが作つくれるという実感じっかんがあって。追おいつめられる感かんじもなくて、楽たのしんでやればいいというマインドになれました。

松浦まつうら：アレンジを考かんがえているときも、みんな、どんどんアイデアを提案ていあんして。それがバンドらしさにつながっていると思おもいます。

ずっと楽たのしいも違ちがうし、ずっとシリアスも違ちがう　目指めざしたのは“ハッピーなもの”

――では、収録しゅうろく曲きょくについて聞きかせてください。アルバムの1曲きょく目め「Finder」は〈再ふたたび出会であえた　呼吸こきゅうの証あかしを見みせて〉という歌詞かしが印象いんしょう的てきなナンバー。いろいろな出来事できごとを越こえ、再ふたたびヒゲダンが動うごき出だすことをストレートに表現ひょうげんした楽曲がっきょくですね。

藤原ふじわら：コロナもあったし、また解とき放はなたれるような感覚かんかくも大事だいじにしたかったんですよね。前作ぜんさくの『Editorial』は心しんの内側うちがわを描えがいたり、少すこしシリアスな楽曲がっきょくもあったので、今回こんかいはちょっと気分きぶんを変かえたくて。その序章じょしょうとして、この曲きょくを入いれたという感かんじかな。同おなじことを続つづけたくないというか、ずっと“楽たのしい”も違ちがうし、ずっと“シリアス”も違ちがう。「そのときにやりたいことをやる」というのが基本きほんなんですが、今回こんかいのアルバムはハッピーなものにしようと思おもっていたんですよね。

――続つづく「Get Back To 人生じんせい」はライブ映ばえしそうなアッパーチューン。前向まえむきな波動はどうが伝つたわってきます。

小笹おざさ：「Finder」がかなり壮大そうだいな曲きょくなので、2曲きょく目めもそういう方向ほうこうの曲きょくにするという案あんもあったんですよ、最初さいしょは。でも、ライブ活動かつどうを休止きゅうしした期間きかんがあったり、「ライブで盛もり上あがれるアルバムにしよう」という気持きもちが高たかまってきて。もっとテンションが上あがるスタートにしたほうがいいなということで、新あらたに作つくったのが「Get Back To 人生じんせい」なんです。アルバム全体ぜんたいにとってもかなり大事だいじな曲きょくになったと思おもいますね。

藤原ふじわら：うん。アルバム制作せいさくの最後さいごのほうに作つくった曲きょくです。

小笹おざさ：結構けっこうギリギリで、滑すべり込こんできました。しかもライブで演奏えんそうするのが難むずかしいだろうと言いわれてます（笑）。

――「キャッチボール」のバンドサウンドにもライブ感かんがあって。スラップベース、カッコイイですね。

楢なら﨑：ありがとうございます。デモ音源おんげんの段階だんかいではぜんぜん雰囲気ふんいきが違ちがってたんですよ、この曲きょく。その後ご、みんなで北海道ほっかいどうに行いったときに、聡さとしが「冒頭ぼうとうのシンセのフレーズが曲きょくを通とおして響ひびくようにしたいんだよね」という話はなしをしてくれて。4人にんでパソコンの周まわりに集あつまって、リズムセクションはどう絡からんだほうがいいのか、ギターやシンセをどう組くみ合あわせるのか、みんなでアイデアを出だし合あったんですよ。今回こんかいのアルバムはそういうやり方かたが多おおかったですね。

藤原ふじわら：以前いぜんはデモを作つくって、次つぎにプリプロをやって……という順番じゅんばんで制作せいさくすることが多おおかったんですが、最近さいきんはパソコン1台だいをみんなで囲かこんで、ああだこうだい合いあうようにしていて。そのほうが早はやいし、クリエイティブだったりするんです。

――「濁点だくてん」は、抑制よくせいの効きいたリズムとメロディを軸じくにしたミディアムチューン。このアルバムのなかでも異色いしょくの1曲きょくなのかなと。

藤原ふじわら：それほど起伏きふくが激はげしくない楽曲がっきょくを作つくってみたくて。アンビエントな質感しつかんからスタートしたんですけど、こういう曲きょくはあまり作つくったことがないし、自分じぶんとしても楽たのしい試こころみでしたね。歌詞かしは………思春期ししゅんきの頃ころ、夜中よなかに誰だれかと長ながく通話つうわしたり、誰だれかの配信はいしんをグヘグヘしながら観みている感かんじでしょうか？　現代げんだいの通信つうしん技術ぎじゅつを用もちいて、誰だれかとつながっていることの面白おもしろさだったり、怪あやしさだったり、そういうものを孕はらんだ幸しあわせだったり。それがこの曲きょくに合あうだろうということで書かいたんだと思おもいます。頭あたまで考かんがえているわけではなくて、直感ちょっかん的てきなんですけどね。

――そしてアルバムの最後さいごは「B-Side Blues」。ビンテージ感かんのある、素晴すばらしいサウンドですね。

楢なら﨑：この曲きょく、全員ぜんいんで「せーの」で録ろくったんですよ。デモ音源おんげんにピアノのイントロが入はいっていて、それを聴きいたときに「これはみんなで一緒いっしょに撮とったほうがいい」ということになって。さっきは「DTMの音源おんげんを聴ききながらディスカッションする」という話はなしをしましたけど、「B-Side Blues」は楽器がっきを弾ひきながらセッションして、フレーズやアレンジを決きめて。そのままレコーディングしたんですけど、演奏えんそうし終おわったときに、みんなで「僕ぼくたち、上手うまくなったね」っていいました（笑）。一発いっぱつ録ろくりするたびにヘコんでた時期じきもあったので、だいぶ変かわりましたね。