文芸ぶんげいしょランキングにならんだ“救済きゅうさい”の物語ものがたり 明日あしたきていくちからとしての小説しょうせつ

週間しゅうかんベストセラー【単行たんこうほん 文芸ぶんげいしょランキング】(11月9にちトーハン調しらべ)

1 『きゅうじゅうはちさいたたかいやまずれず』 佐藤さとう愛子あいこ 小学館しょうがくかん
2 『むきし』 兼近かねちか大樹たいじゅ 文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう
3 『むかしむかしあるところに、やっぱり死体したいがありました。』 青柳あおやぎあおいじん 双葉社ふたばしゃ
4 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』 ブレイディみかこ 新潮社しんちょうしゃ
5 『ふつつかな悪女あくじょではございますが3 ~ひなみやちょうねずみとりかえでん~』 中村なかむら颯希 いち迅社
6 『ほしすくう』 町田まちだそのこ 中央公論ちゅうおうこうろんしんしゃ
7 『さよならもえないうちに』 川口かわぐち俊和としかず サンマーク出版しゅっぱん
8 『やみはらい』 辻村つじむらふかしがつ KADOKAWA
9 『透明とうめい螺旋らせん』 東野とうの圭吾けいご 文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう
10 『よるける』 西にし加奈子かなこ 新潮社しんちょうしゃ

 11月の週間しゅうかんランキング、EXIT・兼近かねちか大樹たいじゅはつ小説しょうせつとなる『むきし』がはつ登場とうじょう、2にランクイン。わか人気にんき芸人げいにん石山いしやまのもとを、週刊文春しゅうかんぶんしゅん突撃とつげきするところからはじまるのだが、複雑ふくざつ家庭かてい環境かんきょうそだち、ひとなぐり、なぐられる生活せいかつおくりながら、やがて売春ばいしゅん防止ぼうしほう違反いはんでつかまるというながれもふくめて、どこか著者ちょしゃ彷彿ほうふつとさせると話題わだいんでいる。だが人気にんき理由りゆうは、そのセンセーショナルな内容ないようだけではないだろう。

 看守かんしゅかられられたほん一生懸命いっしょうけんめい石山いしやまが、こんなことをおも場面ばめんがある。

いている意味いみ理解りかい出来できときだれかとつながっているがした。このぶんんでいるひと世界せかいのどこかにいて、それぞれなにかんがえている。それぞれのかたをしている。きてきた世界せかいまったちがうのに、対面たいめんしたら仲良なかよはなせないのに、文字もじんでいる瞬間しゅんかんだけはおなかいみしめてるがして、一人ひとりじゃないんだと孤独こどくかんしてくれた。

 読書どくしょつうじて石山いしやまは、世界せかいを、自分じぶんを、しんっていく。正義せいぎたて暴力ぼうりょく他者たしゃ支配しはいしてきたこと。自分じぶん境遇きょうぐう過剰かじょうにかわいそうなものとすることで、自分じぶん正当せいとうつづけてきたこと。すべてを真正面ましょうめんからめて〈沢山だくさんひとわらわせて、日々ひびつらいことの出口でぐちになれる存在そんざいになりたい〉と芸人げいにんになるゆめいだ過程かていには、ぐっとくるものがある。〈れたらほんいたりなんかして、だれかがおりなかおれほんんでくれたりしてさ、一人ひとりじゃないよって、一緒いっしょだぜって、おな階層かいそう階段かいだんになれたらいいよなぁ。〉という言葉ことばにも。

 石山いしやま人生じんせいえたほん著者ちょしゃであり、兼近かねちかにとってもあこがれの存在そんざいである又吉またよし直樹なおきからは〈やさしい眼差まなざしが 純粋じゅんすい言葉ことばが 誠実せいじつ覚悟かくごが 重要じゅうよう小説しょうせつんだ。〉とコメントがせられている。おかしてしまったつみはどうしてもえないけれど、それでも二度にどあやまちをおかさないために、過去かこ自分じぶんおなじように孤独こどくくるしんでいるだれかにべるために、まさしくむきしの覚悟かくごいどんだほんさくに、すくわれるひとはきっと大勢おおぜいいるだろう。

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