日本の漫画やアニメは海外でも大ヒットを連発し、この国を代表する文化として認知されている。映画が記録的なヒットとなった『鬼滅の刃』を筆頭に、『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』が海外で人気なのはよく知られているだろう。また、台湾では日本のコミックマーケットのような同人誌即売会がすっかり定着しているほどの人気である。
そして、日本の漫画やアニメの裾野の広さゆえ、意外な作品が意外な国でヒットしている例もある。最近話題になっているのは、1989年からアニメの放映が始まったギャグマンガの金字塔『おぼっちゃまくん』だろう。なんと、インドで一大ブームを巻き起こしているというのだ。そんなバナナ!?
作者の小林よしのりもこのヒットには驚嘆しているようで、ブログに「子供の視聴率が1位らしい」「男の子だけでなく、女の子も見ていて、ストックが切れそうなので、とにかく早く続きが欲しいという催促がインドからガンガン来ている」と綴っている。日本で制作されたアニメのストックが切れたのちは、インドで新しくアニメを制作する方向で検討されているという。すると、インド版おぼっちゃまくんが日本で放映される日も来るのかもしれない。(参考:インドで『おぼっちゃまくん』が子供の人気1位!)
『おぼっちゃまくん』と言えば「ともだちんこ!」「そんなバナナ!」「すいま千円!」などの茶魔語が、小学生の間で大流行を巻き起こした。なぜ、遠く離れ、日本と文化も異なるインドで人気になっているのだろうか。『FLASH』の取材にテレビ朝日の担当者が回答したコメントによれば、インドが経済成長を遂げていることで、おぼっちゃまくん特有の勢いある作風が受けているのだという。また、学園もののアニメがインドでは珍しく、子どもたちが作品の世界観に親近感を抱きやすいようだ。(参考:小林よしのり原作『おぼっちゃまくん』がインドで大ブーム! テレ朝担当者は「勢いのありすぎる作風がシンクロ」と分析)
小林は、ブログに「11億人の人口のうち、子供が4億人もいるというから規模が違い過ぎる。子供の人口だけで、日本の総人口の4倍もいるとは!」と書いている。とにかく市場規模が桁違いなのである。インドでひとたびヒットを飛ばせば、日本より何倍も多いファンを獲得することができるというわけだ。それにしても、茶魔語がインド語に翻訳されるとどう表現されるのだろう。本作のギャグの最大の見どころなだけに、翻訳するスタッフも自然な表現にすべく、四苦八苦したはずだ。気になるところである。一例を挙げれば、茶魔語の典型である「ともだちんこ」は、英語では「フレンディック」と訳されるらしい。言葉の響きがよく、なんともセンスがよく感じられる。他の茶魔語がどう訳されるか気になるところだが、本作のギャグの最大の見どころなだけに、翻訳するスタッフも自然な表現にすべく、四苦八苦しているはずである。
他にも、日本の漫画が海外で映画化、ドラマ化されて好評を博す例がある。『ドラゴンボール』がアメリカのハリウッドで映画化されたときは賛否両論を呼んだが、選ばれる題材は、お国柄を反映していることもあるようだ。例えば、廃校寸前の学校の落ちこぼれ生徒が東京大学の合格を目指す『ドラゴン桜』は、2009年に韓国で『ドラゴン桜(勉強の神)』のタイトルでドラマ化されている。これは韓国が日本以上の受験社会であり、学歴に関心がある風土だからなのかもしれない。
また、北条司の『シティーハンター』は1993年にジャッキー・チェン主演で映画化されたが、2019年にもフランスで『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』のタイトルで映画化された。同作はジャンプ屈指の本格的なアクション漫画であり、ハードボイルドな作風が海外に受け入れられ、熱狂的なファンが多いという。なお、フランス版の監督を務めたフィリップ・ラショーは、子どもの頃から『シティーハンター』の大ファンであり、作品のイメージを重視して映画化したそうだ。
フランスでは『NARUTO』や『るろうに剣心』のファンも多い。これはもちろん作品がエンタメとして完成度が高いのが最大の理由だが、主人公が忍者と武士という日本のイメージそのものであることも影響しているだろう。日本に関心が高いフランス人の中には、こうした漫画を機に日本語を学び始めた例もあるという。