『キングダム 大将軍の帰還』の興行収入が75億円を突破し、映画シリーズの累計興行収入が235億円を超えた漫画『キングダム』。初公開時には、女優・長澤まさみの起用とで話題をさらい、現在公開中の最新作でも再び注目を集めているのが「楊端和」というキャラクターだ。本稿では、作中の登場人物の中では紅一点の存在ながら圧倒的強さと美しさを兼ね備える女性の王で、山の民を武力で束ね“山界の死王”と称される彼女の凄さがわかるエピソードをピックアップして紹介したい。
“山界の死王”は圧倒的カリスマ性を誇る女性リーダー
楊端和の魅力を語る上で欠かせないのは、男性将軍が多い本作で圧倒的強さとカリスマ性を持つ女性リーダーだという点だ。そもそも『キングダム』の舞台となっているのは紀元前の中国で、春秋・戦国時代の末期。当時の中国は家父長制の色が濃く、女性の社会的地位は低かった。無論、外で仕事をすることも容易ではなく、古代中国には「女子無才便是德」という女性蔑視を意味することわざが存在したぐらいだった。
数多くの女性キャラクターが登場する『キングダム』でも、女性剣士や軍師は度々登場するが、王や将軍の数は多くない。特に、かつての秦国六大将軍1人だった摎(きょう)や楚の第2軍を率いる女傑・媧燐などは、信が武功をあげて「飛信隊」を率いるようになってからの登場なので、楊端和こそ信が作中に初めて出会う女性リーダーなのである。また、アニメ公式サイトのキャラクター紹介には「山界の民族を、女性ながら若くして武力で束ねた王」ともあり、男性社会かつ荒くれ者揃いの複数の民族を束ねる彼女のカリスマ性が表現されている。
山の民ならではのマスクや二刀流のカッコ良さ
楊端和といえば、印象的なのは山の民ならではおどろおどろしいマスク姿と、二刀流を駆使した戦闘スタイルだ。特に、原作でも映画版でも、印象的なのは初登場のマスク姿。山の民のアジトである暗い洞窟の中で、楊端和はボリュームのある毛皮の装束に貴金属のアクセサリーや動物の骨でできた首飾りをまとい、長いツノ付きのマスク姿で登場する。傍に虎を従え、山界の王ならではの威厳を見せつけた後で素顔を晒すシーンはまさに山の王としてのかっこよさと、実は女性の王だったというギャップが印象的なシーンだ。
また、弓矢や槍がふり注ぐ中でも一切怯まずに二刀流で敵陣に突進していくカッコ良さや、秦国の窮地に援軍として駆けつける情の深さなど、まさに信や嬴政にとってなくてはならない存在と言える。