戸田とだめぐみ梨香りか小池こいけとおるたいらとどけたすくい 『だい恋愛れんあい』がえがく“対等たいとうじゃない”をれること

『大恋愛』戸田恵梨香が小池徹平に届けた救い

 やまいにかかってもっとくるしいのは、あいするひとのためにできることがすくなくなってしまうことなのかもしれない。『だい恋愛れんあいぼくわすれるきみと』(TBSけいだい8なお戸田とだめぐみ梨香りか)は真司しんじ(ムロツヨシ)とのしあわせな結婚けっこん生活せいかつおくる。自分じぶん真司しんじあいったあかしのこしたいと、どもをむことにも前向まえむきに。だが、その背後はいごには公平こうへい小池こいけとおるたいら)ととも若年じゃくねんせいアルツハイマーびょうのやるせなさがしのっていた。

 かつては真司しんじ小説しょうせつについて、いちばん理解りかいしているのはなおだった。なのに、いま担当たんとう編集へんしゅう水野みずの木南きなみはるなつ)がついている。新作しんさくのタイトルも、約束やくそくどお真司しんじ最初さいしょなお相談そうだんしたにもかかわらず、まったくおぼえていない。ドアしに真司しんじ水野みずののタイトルのわせをいて、まるで自分じぶんいて真司しんじ水野みずのおしえているようにかんじてしまう。

 あいされているとかんじる記憶きおくばかりがこぼれち、足手あしてまといになっているような感覚かんかくばかりがのこっていく。そんなむなしさがなおつつんだとき、「対等たいとうじゃない」と、おなびょうってきる公平こうへいささやきが、まるでマイクのハウリングのようにのうないひびく。やまいによって、かつての自分じぶんではなくなってしまう感覚かんかくやまいではなくとも、ひとわっていくのだ。まえにはどもをつくることに反対はんたいしていた母親ははおやかおる草刈くさかり民代たみよ)がきゅう賛成さんせいすることもあるように。わらないものなんてない。「どんな病気びょうきでもなお一緒いっしょにいたい」といっていた真司しんじだが、かれのお荷物にもつになってしまうんじゃ……そんな気持きもちばかりがつのっていく。

 『だい恋愛れんあい』が、わたしたちを夢中むちゅうにさせるのは、テンポよく対比たいひえがかれるからだ。なお真司しんじなかむつまじいやりとりと、ひとりぼっちの公平こうへいいそがしい真司しんじと、時間じかんをかけてなおこえみみかたむける公平こうへい。そして、ているこちらがニヤけてしまうほどのイチャイチャからの、相手あいておもえばこそのすれちがい。このしあわせをこわさないで、といのってしまう。あいしあわせをることは、手放てばなかなしみと背中合せなかあわせだ。それはまれた瞬間しゅんかんかっているのとおなじように。すべては、いいめんとそうではないめん同時どうじにやってくる。

 だったらいいめんていくのだ、となお公平こうへいさとす。「わすれられることが、このやまいすくい」なのだ、と。やまいだから対等たいとうじゃなくなったわけじゃない。もともとってまれたものも、きていくうえでのチャンスも、おなびょうだって症状しょうじょう進行しんこう具合ぐあいひとそれぞれだ。対等たいとうじゃないをれることは、とてもこくだけれど、その理不尽りふじんさをわすれさせてくれるのも、このやまい唯一ゆいいつすくいだと。

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