「伊豆の長八美術館」(松崎町松崎)開館40周年記念セレモニーが7月14日に開かれ、同施設の設計者である建築家で早稲田大学名誉教授の石山修武さんがゲストとして登壇した。
建設当時茶色だった土佐漆喰の説明をする深澤準弥町長
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同施設は、松崎町出身で江戸時代に漆喰鏝絵(こてえ)の名工と言われた伊豆の長八(本名=入江長八)の作品を展示する美術館として1984(昭和59)年に開館。建物は石山さんが設計し、日本左官連盟全面協力の下、全国から延べ3000人の左官職人が集まり、内外装は伝統的な左官技術によって仕上げられた。翌年には「江戸と21世紀を融合させた建物」として「建築界の芥川賞」ともいわれる吉田五十八賞を受賞し、10万人の入館者を記録した。
記念セレモニーでは、深澤準弥町長のあいさつの後、石山さんが祝辞を述べた。石山さんは、建設当時の左官職人たちとの話や、同施設の中庭壁面に使われている「時を重ねるごとに色が白く抜ける」という珍しい特徴をもつ土佐漆喰(とさじっくい)の特徴などを説明。「当時、茶色だった土佐漆喰の壁は40年を経て驚くほど白く変化した。これからまた時を重ねて、さらに白く新しくなっていく。この町もそのように発展していってほしい」と思いを話した。
その後、来場者が見守る中、深澤準弥町長と石山さんの2名でくす玉割りを行った。
入館料が無料となった当日は多くの人が訪れ、先着100人には記念品として特製ポストカードとウッドモビールを配った。展示を見た人からは「今回初めて来たが、こんなすてきな美術館だったとは。もっと有名になってほしい」などの声が聞かれた。
今年から地元の松崎中学校(江奈)では中学1年生の総合学習で長八美術館の偉人(入江長八、石山修武、彫刻家・外尾悦郎)研究を取り入れており、会場では石山さんに熱心に質問をする中学生たちの姿も見られた。
深澤町長は「同施設は松崎町観光の目玉としての役割を長年担ってきた。大きく時代は変わったが、漆喰(しっくい)文化の継承を改めて町内外に発信し、今後50年、60年と続くきっかけの日にしたい」と意気込みを見せる。
開館時間は9時~17時。木曜休館。入館料は大人500円、中学生以下と松崎町民は無料。