犬いぬが口くちにしたものを無理むりやり取とるのはダメ　攻撃こうげき性せいや誤あやま飲いんの原因げんいんに

　子犬こいぬは目新めあたらしいものを見みつけると匂においを嗅かぎ、口くちに入いれて確認かくにんします。これは子犬こいぬにとってごく自然しぜんな探索たんさく行動こうどうであり、周囲しゅういの環境かんきょう中ちゅうにあるものをひとつひとつ確たしかめながら成長せいちょうしていきます。

　もちろんそれが飼かい主ぬしにとって大切たいせつなものである場合ばあいや子犬こいぬが口くちにすると危険きけんなものである場合ばあいには放置ほうちするわけにはいきません。しかし、そもそもそのようなものを子犬こいぬの届とどく場所ばしょには置おかないというのが正ただしい対策たいさくです。

　それをせずに子犬こいぬが口くちにしているものを無理むりやり取とり上あげることを繰くり返かえすと、やがて子犬こいぬは何なにかを口くちにしている時ときに飼かい主ぬしに見みつかるとあわてて逃にげたり、隠かくれるようになります。さらに飼かい主ぬしに見みつかると口くちにしているものを取とられないように飲のみ込こんでしまったり、飼かい主ぬしが取とり上あげようとすると攻撃こうげき的てきに唸うなったり嚙んだりするようになることもあります。

　犬いぬの世界せかいではいったん口くちにしたものは、その犬いぬのものです。たとえ力ちからの強つよい犬いぬであっても他たの犬いぬが口くちにしているものを無理むりやり取とり上あげることはしません。それは人間にんげん社会しゃかいであれば他人たにんの物ものを盗ぬすむのと同おなじく、してはいけない行為こういなので、そんなことをすれば当然とうぜん反感はんかんを買かいます。

　飼かい主ぬしが子犬こいぬが口くちにしているものを取とり上あげることを日常にちじょう的てきに繰くり返かえせば、子犬こいぬは反抗はんこう心しんを持もちながら成長せいちょうし、やがて飼かい主ぬしに抗議こうぎするようになるでしょう。

口くちにして欲ほしくないものは、犬いぬが届とどかない場所ばしょへ

　もし子犬こいぬが不適切ふてきせつなものを口くちにしてしまったら無理むりやりではなく、子犬こいぬに不快ふかい感かんを与あたえないように取とり返かえします。たとえば好物こうぶつと交換こうかんしたり、おもちゃなどに注意ちゅういを引ひいて気きづかれないように取とり上あげるようにします。

　なぜそうするのかというと、前述ぜんじゅつのように子犬こいぬが口くちにしているものを無理むりやり取とり上あげることを繰くり返かえすと、子犬こいぬは何なにか口くちにしているときに飼かい主ぬしが近ちかづいてくると逃にげたり、唸うなったりするようになるからです。また、取とられまいとして飲のみ込こむつもりがなかったものも飲のみ込こんでしまうことがあります。

　ただし好物こうぶつとの交換こうかんを繰くり返かえすと、子犬こいぬは好物こうぶつをもらうためにわざといろいろなものを口くちに入いれるようになります。何なにかを口くちにしていると飼かい主ぬしがおいしいものをくれると学習がくしゅうするからです。したがって、きちんと環境かんきょう整備せいびをして緊急きんきゅう時じの時ときのみの対処たいしょ法ほうとしてください。

　また、犬いぬが口くちにしているものが飲のみ込こめるサイズのものであれば、急いそいでそれを飲のみ込こんでから、好物こうぶつをもらおうとする場合ばあいがあります。飲のみ込こめるサイズのものを口くちにしている時ときには絶対ぜったいに食たべ物ものを見みせてはいけません。

　一番いちばん大切たいせつなことは、取とり上あげることを繰くりかえさないことです。繰くり返かえせば繰くり返かえすほど、子犬こいぬは取とられまいとして前述ぜんじゅつのような問題もんだいに発展はってんしてしまうからです。そのためにも安全あんぜんに噛かめるものを毎日まいにち与あたえることと、環境かんきょうの整備せいび、すなわち口くちにされて困こまるものは届とどく場所ばしょに置おかないということを徹底てっていしてください。

　さらに日頃ひごろから口くちにしているものを「ちょうだい」の合図あいずで飼かい主ぬしに快こころよく渡わたしてくれるようにトレーニングしておくと、とても便利べんりです。

「ちょうだい」の合図あいずは、ボールやおもちゃ、あるいはガムなど子犬こいぬが口くちにしても問題もんだいのないものを使つかって行おこないます。「ちょうだい」は犬いぬに口くちにしているものを飼かい主ぬしに渡わたすともっと良よいものがもらえると教おしえ、口くちにしているものを飼かい主ぬしに快こころよく渡わたしてくれるようにするための合図あいずです。

　ちょうだいの合図あいずをきちんと教おしえておけば、口くちにして欲ほしくないものや危険きけんなものを口くちにしているときにも安全あんぜんに取とり上あげることができます。

正ただしい「ちょうだい」の教おしえ方かた

① 犬いぬが喜よろこんで噛かむガムと、それよりもさらに好すきな食たべ物ものを用意よういします。この際さい、好物こうぶつは反対はんたいの手てに握にぎり込こむなどして犬いぬに見みせないようにします。「おすわり」や「ふせ」などの合図あいずを出だし、犬いぬが従したがったらガムを差さし出だします。

（これはすべてに共通きょうつうですが、犬いぬに何なにか良よいことをしてあげる前まえに必かならず合図あいずを出だします。飼かい主ぬしの合図あいずに従したがえば楽たのしいこと、うれしいことが起おこるということを子犬こいぬに教おしえておきます）

② 犬いぬがガムをくわえたら、ガムの端はしを持もったまま「ちょうだい」と言いいながらとりあげます。すぐに「おりこう」と言いいながら反対はんたいの手てから好物こうぶつを与あたえ、再ふたたびガムを渡わたします。これを何なん度どか繰くりかえし、「ちょうだい」と飼かい主ぬしが言いったらおいしいものが出でて来くることを教おしえます。子犬こいぬがガムを喜よろこんで口くちから放はなすようになったら、次つぎのステップに進すすみます。

③ 次つぎは子犬こいぬにガムを渡わたして自由じゆうに噛かませます。子犬こいぬが噛かんでいる間あいだに「ちょうだい」といいガムを放はなすのを待まちます。ガムを放はなしたら取とり上あげ、「おりこう！」と誉ほめて、好物こうぶつを与あたえてすぐにガムを返かえします。これでガムを渡わたすとご褒美ほうびがもらえ、取とられたガムもすぐに返かえしてもらえることことを教おしえます。

④ 次つぎは子犬こいぬが噛かんでほしくないものを噛かんでいた時ときに取とり上あげるためのリハーサルです。子犬こいぬにガムを与あたえて別べつの部屋へやに行いきます。手てに好物こうぶつを持もって戻もどってきたら、子犬こいぬに近ちかづいて「ちょうだい」と言いいます。子犬こいぬがガムを放はなして飼かい主ぬしをみたら、ガムを取とり上あげて「おりこう！」と褒ほめて好物こうぶつを与あたえて、ガムを返かえしましょう。

最初さいしょは好物こうぶつを手てに持もっていてもかまいませんが、少すこしずつポケットに隠かくしたり、テーブルの上うえに置おいておくなどして、見みえるところになくてもガムを放はなせばおいしい物ものをもらえると教おしえておきます。

この練習れんしゅうをしておくと子犬こいぬが噛かんでほしくない物ものを噛かんでいた時ときにも落おち着ついて取とり上あげることができるでしょう。実際じっさいに噛かんでほしくない物ものを取とり上あげる時ときには連続れんぞくでおやつを与あたえたり、別べつの方向ほうこうに投なげるなどして子犬こいぬに取とり上あげられたと思おもわせないようにしましょう。

⑤ 同様どうようにおもちゃを噛かんでいるとき、ボールをくわえている時ときなどいろいろなもので練習れんしゅうします。練習れんしゅうが終おわったあと、噛かむおもちゃやガムなどであればそのまま与あたえます。

取とり上あげなければならないものの場合ばあいには、好物こうぶつを離はなれた場所ばしょに投なげて与あたえ、犬いぬが好物こうぶつを取とりに行いっている間あいだに犬いぬに気きづかれないように隠かくします。犬いぬに「大切たいせつなものを飼かい主ぬしに取とられた」という印象いんしょうを与あたえないことが大切たいせつです。

（注意ちゅうい）すでに物ものを守まもって攻撃こうげき的てきになる犬いぬの場合ばあいは危険きけんですから、まずは専門せんもん家かに相談そうだんしてください。

(「こころのワクチン～子犬こいぬに教おしえる人ひととしあわせに暮くらす方法ほうほう～ちょうだいトレーニング」より)

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