桔梗原 1994年の入社以来、ESET一筋だとお聞きしました。どのようなきっかけで入社されたのでしょうか。
ESET
CEO
Richard Marko(リチャード・マルコ)氏
マルコ氏 私は学生時代にコンピューターサイエンスを学んでいて、開発エンジニアとして入社しました。その後、研究開発に15年間従事し、ウイルスの予防と検知の研究に携わりました。今はCEOの立場ですが、CTO(最高技術責任者)も務めましたし、現在の当社のコア技術やカーネルドライバーなどにも関わった経験もあり、最新のサイバー脅威と技術動向について深く理解しています。
ESET
CEO
Richard Marko(リチャード・マルコ)氏
桔梗原 そうだったのですね。今回は、日本法人「イーセットジャパン」の設立以来、約5年半ぶりの来日とお聞きしました。改めてESETの概要と近況についてお聞かせください。
マルコ氏 ESETは中欧のスロバキアに本社を置くセキュリティーベンダーです。世界23カ所にオフィスを構え、さらに12カ所のR&D拠点を設置しているのが特徴です。200以上のの国と地域で製品・サービスを提供し、直接的に導入しているお客様は約1億1000万人。アプリなどを通じて間接的に利用しているユーザーは数億人に達します。
桔梗原 ESETならではの競争優位性は何でしょうか。
マルコ氏 まず挙げられるのは世界中にソリューションを提供しているベンダーであることです。膨大なユーザー数を抱えているので、サイバーセキュリティーに関するデータの量と知見が極めて豊富です。約30年の歴史で培ってきた実績と信頼も強みといえます。それぞれのローカル市場で築いてきたパートナーシップも不可欠の要素です。パートナーはローカル市場に対する十分な知識と経験があり、各地の実態に即したサービスを付加してくれるからです。
日経BP 総合研究所
フェロー
桔梗原 富夫
桔梗原 そうした中、日本市場はどのような位置づけなのでしょうか。
日経BP 総合研究所
フェロー
桔梗原 富夫
マルコ氏 我々にとっては米国と並ぶ重要な市場です。日本市場に参入してから約20年が経ちましたが、長年のパートナーであるキヤノンマーケティングジャパンのサービス力と我々の技術力が組み合わさることで、日本市場における地位を確立することができました。『日経コンピュータ』の顧客満足度調査でも、常に高い評価を得ています。
桔梗原 新型コロナの影響で一気にデジタル化が進み、数年で社会は大きく変化しました。現代の企業が抱えるサイバーセキュリティー課題は、専門知識・スキルを持つIT人材の不足、セキュリティーに対する投資不足、古いハードウエアの存在、ソリューションの複雑化など多岐にわたります。
マルコ氏 おっしゃる通りです。人々の生活やワークスタイル、コミュニケーションが急激に変化したことで、サイバーセキュリティーの検討方法がかなり変わってきました。クラウドの活用が前提となり、各所にIoTデバイスが設置された今、明確な境界がなくなりアタックサーフェイス(攻撃対象領域)がどんどん拡大しています。本来はシナリオごとに守っていく必要がありますが、もはや一般的なユーザー企業のIT人材が、新しい知識をキャッチアップして対策を練るのは限界に近いと考えています。
ESETは全社員の約3分の1にあたる800人程が研究開発に従事しており、それぞれのシナリオに対して適切な防御を提供できます。ここで中心になるのがXDR(Extended Detection and Response)のアプローチです。一元的な管理、インシデントの緻密な調査、修復の実行までを網羅し、高いレベルで多層防御を実現します。我々は創業以来、エンドポイントセキュリティーの提供ベンダーとして市場をリードしてきましたが、現在ではXDRへと発展した統合型ソリューション「ESET PROTECT プラットフォーム」に注力しています。