人材を「ビジネスを遂行する上で最重要な資産」と位置付け、
人的資本経営を推進するNECソリューションイノベータ。その注力テーマの1つが「健康」だ。
社員と真摯に向き合い、心身の健康増進・ウェルビーイングを支援することで
一人ひとりのパフォーマンスを高め、組織の成長エンジンにする。
国の健康経営優良法人認定制度「ホワイト500」にも選出された同社は、
どのような点を意識して健康経営を推し進めているのか。キーパーソンに話を聞いた。
取り組みの成果が評価され、
「ホワイト500」に認定
社会や企業を支えるシステムの構築・運用や社会価値の創出を多数手がけるNECソリューションイノベータの事業は、ITエンジニアを中心とした「人材」なしに成立しない。そのため同社は、かねてより人材育成に多くの投資を行ってきた。人こそが、広く社会に貢献しながら利益を上げて成長するための原動力であり、社員の成長なくして企業価値向上はありえない――。そのように位置付け、「健康」「成長」「働きがい」を主要テーマとした人的資本経営を推進している。
そのうち健康領域の施策を主管する事業支援部の丸山 一茂氏は「社員一人ひとりの健康管理はもちろん、戦略的投資によって生産性向上にも寄与することで、より多くの付加価値を社会に提供します。そこで得た利益を再び人材に投資して、好循環をつくりたいと考えているのです」と語る。
![NECソリューションイノベータ株式会社 事業支援部長 丸山 一茂氏](https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/24/nec_solutioninnovators0614/photo_01.jpg)
NECソリューションイノベータ株式会社
事業支援部長
丸山 一茂氏
同社は2024年に、健康優良法人認定制度「ホワイト500」に認定された※1。ホワイト500とは、経済産業省と日本健康会議により健康経営優良法人に認定された組織のうちスコア上位500社に与えられるもの。このことは、同社の取り組みが1つの手本になるものであることを示している。同時に、同社の社員にとっては、自社の魅力に改めて気付き、エンゲージメントを高めるきっかけにもなっているという。
「現在は、就職・転職希望者の多くが『健康に働けるかどうか』を会社選びの1つの基準にしています。つまり健康経営に力を入れることは会社の採用活動にもインパクトを与えるものだと考えています」と丸山氏は付け加える。
では具体的に、同社の取り組みが評価されたポイントはどこにあるのか。ホワイト500に認定された理由について、同社は次の3つを挙げる。
1つ目は、経営トップが全社的な健康経営推進に関与していることである。経営者が自ら健康経営の責任者となり、メッセージの発信、自らの健康づくりの方法を紹介するなど、全社一丸での健康意識向上を牽引している。
2つ目は施策の多彩さだ。自社開発アプリを活用した健康増進イベントや、誰でもできるエクササイズのライブ配信など、社員の健康課題に応じた幅広い施策を企画・実施している。「自分のペースで取り組める運動不足解消の施策のほか、コミュニケーション不足の解消につながる施策も用意しています」と同社の山本 美緒氏は言う。
![NECソリューションイノベータ株式会社 事業支援部 主任 山本 美緒氏](https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NXT/24/nec_solutioninnovators0614/photo_02.jpg)
NECソリューションイノベータ株式会社
事業支援部 主任
山本 美緒氏
そして3つ目はデータの利活用だ。アプリのミッションクリア情報やアンケート調査などを基にデータを集め、活動に生かしている。例えば、「ライフスタイルサーベイ」では、社員の生活習慣についてサーベイを実施している。「年1回の健康診断は全国に1万人以上が勤務しているため実施期間が長期間に渡ります。そのため、タイムリーなデータを集めて定点分析することで、施策の立案や改善に役立てています」と山本氏は説明する。
※1 2024年3月11日、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門(ホワイト500))」に認定
自社開発の健康アプリで
楽しく習慣化を促す
ここからは、同社の特徴的な取り組みについてもう少し詳しく紹介しよう。
「健康施策の実施に当たっては、行動や取り組みを単発で終わらせず、どう習慣化してもらうかを強く意識しました」と丸山氏。そこで同社は、社員が簡単に手元のスマートデバイスで使える「健康ミッションアプリ」を開発・提供することにした。
健康ミッションアプリ
生活習慣の改善につながる多彩なミッションが提示され、それをクリアするとコインを獲得できる。参加者同士のQR交換でもコインを獲得できるようにして、コミュニケーション促進も図っている
「1000歩、歩いてみよう」「カリウムを摂ろう(カリウムが入った食品を撮影するとAIが判定)」といった生活習慣改善につながるミッションがキャンペーン中は毎日配信されており、クリアした参加者はコインを獲得できる。ゲーム感覚で楽しみながら健康的な生活習慣を実践できるようにしている。
習慣化を促すための工夫もある。その1つが「つながるミッション」だ。一人ひとりに割り当てられたQRコードを使って別の参加者とつながるとコインがもらえる。「このような取り組みは誰かと一緒にやるほうが続けやすいことも、アプリの継続率や参加者の声から分かってきました。QRコード交換をきっかけに知り合いになって、健康の輪が広がることを期待しています」(山本氏)。新入社員や別事業部の人など、普段あまり接点のない参加者とつながると獲得コインが倍になる仕掛けも用意。獲得したコイン枚数をランキング形式で公開することで、一層のモチベーションアップにもつなげているという。
さらに2023年度からは、健康意識の高まりを全社的なムーブメントに拡大するため、春秋2回の「ヘルスチャレンジキャンペーン」も開催。アプリ内でのイベントに加え、著名人を講師に招いたセミナーやeラーニングなどの施策を集中的に行っている。参加は任意だが、社員の9割が何らかの施策に参加したという。
「このキャンペーン期間中に、エクササイズのライブ配信も行いました。椅子に座ったままできるストレッチなど、簡単な運動を紹介することで運動不足を解消してもらう狙いです」と山本氏は紹介する。講師は山本氏が務めたほか、ヨガ講師資格を持っている社員にも声をかけて協力してもらったという。
社員の健康状態や意識をタイムリーに把握し、
施策に生かす
多くの企業にとって、健康経営を推進する際の課題の1つは、社員が「会社に強制されている」と感じて息苦しくなることではないだろうか。もちろん、社員の中には「会社から自分の健康のことをとやかく言われたくない」と感じる人もいるはずだ。しかし、そうした思いを持つ社員も含めて、いかに多くの人を巻き込めるかが取り組みの成否を分けるポイントになる。
その点NECソリューションイノベータは、アプリ開発では開発担当者、エクササイズイベントでは講師資格を持つ社員といったように、社内の仲間を増やし、協力を仰ぎながら活動を拡大している。これは同社が成果を挙げられている1つの要因といえるだろう。
「様々なきっかけを用意するのが会社側の役目だと私は考えています。その中で、個々の社員が自分のタイミングで健康の大切さに気付き、意識が変わっていく。それが積み重なって大きな変化になる流れができつつあります」と丸山氏は述べる。
社員の意識や健康状態の変化は、先に紹介したライフスタイルサーベイで可視化している。生活習慣や日中のコンディションに関する設問など、50問程度からなるアンケート調査で、直近の状態を把握するのが目的だ。ここで得たデータを分析し、次の施策の立案や既存施策のブラッシュアップに生かしていく。
「当社にはデータに詳しいアナリストが多く在籍しています。専門家が調査結果を分析することで、新たな気付きが多く得られています」と山本氏。例えば、平日と休日の起床時間に差がない人、朝食を毎日食べている人は、睡眠の充足度が高い傾向があることが見えてきた。そこで同社は、朝食を抜きがちな社員に向けて、オフィスで朝に焼きたてパンを配る施策を実施。このように、データ分析の結果から生まれた施策は数多いという。
有給取得支援や
メンタルヘルス向上に向けた施策なども予定
ホワイト500認定を受けたとはいえ、健康経営の取り組みにゴールはない。同社は今後も、ヘルスチャレンジキャンペーンをはじめとする施策を継続的に実施していく計画だ。現在は新規施策として有給取得推進の取り組みも企画中。まずは「前年+1日」の取得を目標にする支援も行う予定だという。
「そのほか、メンタルヘルス向上の施策としてアサーティブコミュニケーション※2の普及・推進も図っていきます。誰とでも気兼ねなく意見を言い合える社内文化を醸成することで、社員の心理的安全性と働きやすさの向上につなげたいと思います」と丸山氏は語る。
人口減少社会に突入した日本において、人材とどう向き合うかはあらゆる企業に突き付けられた課題といえる。社員の健康を維持し、企業価値向上に転換していくNECソリューションイノベータの取り組みは、人的資本経営を志す多くの企業にとって重要な参考になるはずだ。
※2 相手の気持ちを考え、配慮した上で、しっかり自己表現・自己主張するコミュニケーション手法