コロナ禍かで「小屋こやで二に拠点きょてん生活せいかつ」が人気にんき！ 廃校はいこう利用りようのシラハマ校舎こうしゃに行いってみた　千葉ちば県けん南みなみ房総ぼうそう市し

購入こうにゅう待まちは40組くみ以上いじょう！　廃校はいこう跡地あとちに建たつ18棟むねの無印むじるし良品りょうひんの小屋こや

小学校しょうがっこうの敷地しきちと建物たてものを再さい利用りようしてできた施設しせつ「シラハマ校舎こうしゃ」。近年きんねんは、学校がっこう跡地あとちの有効ゆうこう活用かつようということで全国ぜんこくから視察しさつが絶たえないそう（撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

シラハマ校舎こうしゃがあるのは、房総半島ぼうそうはんとうの先端せんたん、千葉ちば県けん南みなみ房総ぼうそう市し白浜しらはま町まち。東京とうきょう都心としんからは車くるまで2時じ間あいだあまり、公共こうきょう交通こうつう機関きかんなら最寄駅もよりえきから路線ろせんバスに30分ふんほど乗のる必要ひつようがあるためか、関東かんとうにありながらもどこか“秘境ひきょう”、時間じかん以上いじょうに遠方えんぽうに来きたような雰囲気ふんいきが漂ただよいます。

シラハマ校舎こうしゃは、廃校はいこうとなった長尾ちょうび小学校しょうがっこう・幼稚園ようちえんの敷地しきちと建物たてものをコンバージョン（用途ようと変更へんこう）した施設しせつで、18の小屋こやとレストラン（完全かんぜん予約よやく制せい）、シェアオフィス、コワーキングスペース、宿泊しゅくはく施設しせつから成なります。事業じぎょうがはじまったのは2016年ねんですが、小屋こやは2019年ねんに完売かんばいし、現在げんざいは40組くみ以上いじょうのウェイティングリストがある大人気だいにんき物件ぶっけんです。

目めの前まえには太平洋たいへいよう。すぐ裏手うらては山やまという自然しぜん豊ゆたかな環境かんきょう。愛あいらしい小屋こやが並ならんでいます（撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

シラハマ校舎こうしゃの内部ないぶ。もともと学校がっこうだったため、「初はじめてなのに懐なつかしい」「おしゃれで居心地いごこちがいい」不思議ふしぎな空間くうかんです（撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

校舎こうしゃにある一いち部屋へや（オフィス兼けん居住きょじゅうスペース）を拝見はいけん。こんなにおしゃれなのに、学校がっこうでおなじみの黒板こくばんが同居どうきょしているというギャップ（撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

レストラン（撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

こちらは宿泊しゅくはく施設しせつ（撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

小屋こやは「無地むじ良品りょうひんの小屋こや」として販売はんばいされているもので、複数ふくすう戸どが村むらのようにずらりと並ならぶのは世界せかいでもここだけ。建物たてものは規格きかく品ひんに沿そっていますが、ディスプレイや外観がいかんに少すこしずつオーナーの個性こせいが現あらわれるので、見みているだけでも楽たのしいもの。小屋こやの内部ないぶの広ひろさは9平米へいべいで、大人おとながなんとか4人にん宿泊しゅくはくできるサイズ。バスやトイレ、キッチンは校舎こうしゃのものを使用しようするので、建物たてものは寝室しんしつ・リビングとして役割やくわりを果はたします。価格かかくは1棟むね300万まん円えんほどで、比較的ひかくてき短時間たんじかんで来こられること、密みつが避さけられることといったことに加くわえ、「小屋こや」で維持いじ管理かんりがかんたんであることなどに惹ひかれ、特とくにコロナ禍か以降いこうはひっきりなしに問とい合あわせが来きているといいます。

芝生しばふの敷地しきちにズラリと並ならぶ小屋こや。テラスのような玄関げんかんから部屋へやにはいっていく（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

お風呂ふろとシャワーは別棟べつむねにあるので、そこを利用りよう。都会とかい生活せいかつの快適かいてきさとキャンプの楽たのしさの両方りょうほうを味あじわえます（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

今回こんかい、取材しゅざいさせてもらった2家族かぞくは、「コンパクトでチャレンジしやすい」「メンテナンスもラク」という小屋こやにひかれて、二に拠点きょてん生活せいかつをはじめたといいます。２家族かぞくが知しり合あったきっかけはシラハマ校舎こうしゃだったそうですが、今いまでは会社かいしゃの人ひと以上いじょうに「顔かおを合あわせている」というほどの仲良なかよしに。では、実際じっさいにどんな使つかい方かたをしているのか、話はなしを伺うかがってみましょう。

「小屋こや？　ナニソレ？」からはじまった二に拠点きょてん生活せいかつ

小屋こやのオーナーである西岡にしおかご夫妻ふさいは埼玉さいたま県けん在住ざいじゅうで、二人ふたりの男おとこの子ことともに、週末しゅうまつや長期ちょうき休やすみにこのシラハマ校舎こうしゃで過すごしています。もともと夫おっとが釣つりやキャンプが好すきだったことがきっかけで、小屋こやの購入こうにゅうを考かんがえたそう。

西岡にしおかさん家族かぞく。男おとこの子こたちは冬ふゆにも関かかわらず水鉄砲みずでっぽうを持もって元気げんきに走はしりまわっていました（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

「子こどもが小ちいさいかったころ、いっしょに『おさるのジョージ』という米国べいこくのアニメを見みていたんです。主人公しゅじんこうのおさると黄色きいろい帽子ぼうしのおじさんは、普段ふだん、都会とかいで暮くらしているんですが、週末しゅうまつや長期ちょうき休やすみは田舎いなかで過すごすんですね。自分じぶんはあれで二に拠点きょてん生活せいかつのイメージをつかんで、楽たのしそうだなあと思おもっていたんです。その後ご、小屋こやの存在そんざいを知しり、妻つまに相談そうだんしたんですが、『小屋こやを買かう』って言いっても『え？何なにを言いってるの？』って、なかなか二に拠点きょてん生活せいかつや小屋こやについて理解りかいが得えられず……。確たしかに別荘べっそうとも違ちがうし、キャンプとも違ちがう。家いえはすでにあるし、イメージがつかみにくかったんだと思おもいます。そこで、ここにいるときは、食事しょくじは自分じぶんがつくるという約束やくそくで購入こうにゅうしました（笑）」といいます。現在げんざいは月つき1回かいまたは、2週間しゅうかんに1回かい程度ていど、週末しゅうまつ、家族かぞくで過すごしているそう。

西岡にしおかさんの小屋こや。月末げつまつや長期ちょうき休やすみに訪おとずれます（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

小屋こやには本ほんと釣つり道具どうぐがずらり。大人おとながわくわくします（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

「私わたしはアクティブではないので、夫おっとに連つれられてきています。家事かじは夫おっとがする約束やくそくですが、やっぱりそれだけでは追おいつかないので、実際じっさいは私わたしもやっています。男おとこの子こはエネルギーの塊かたまりなので、ここで発散はっさんしています」と妻つまが言いうとおり、5年生ねんせいと3年生ねんせいの兄弟きょうだいは元気げんきいっぱい、芝生しばふの上うえを元気げんきに走はしり回まわっています。

「お兄にいちゃんは塾じゅくに通かよっていますが、小屋こやに行いくという理由りゆうで、夏期かき講習こうしゅうや冬期とうき講習こうしゅうは休やすんでいます。どうやらうちだけみたいなので、驚おどろかれますね」と夫おっと。現代げんだいの子育こそだてでは、子こどもたちを静しずかにさせるためにゲームや動画どうがは欠かかせませんが、こうした大人気だいにんきのゲーム端末たんまつは持もって行いかず、スマートフォンで観みる動画どうがも必要ひつよう最低限さいていげんのみ。その代かわり、親おやである夫おっとが子こどもたちと向むき合あい、全力ぜんりょくで遊あそんでいるのが印象いんしょう的てきです。とはいえ、全力ぜんりょくで遊あそび過すぎてしまうため、この冬休ふゆやすみ期間きかん中ちゅうは、一度いちど、寝込ねこんでしまったとか。

「この間あいだ、万まん歩ほ計けいを見みたら、一いち日にち2万まん歩ほを記録きろくしていました。だからそんな毎週まいしゅう末まつは来きたられません」と苦笑にがわらいしますが、やはり小屋こやがあることが、「人生じんせいの楽たのしみ」につながっているそう。

敷地しきちにテントを設置せっち。子こどもたちは思おもい思おもいに遊あそんでいます（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

「敷地しきち管理かんりなどをシラハマ校舎こうしゃの管理人かんりにんである多田たださんにおまかせできるのは大おおきいです。荷物にもつは常つねに置おいておけるし、別荘べっそうほど大おおきくないから、管理かんりもラク。家族かぞく4人にんでテーマパークや旅行りょこうに行いけば1回かいあたり10万まん～20万まんはあっという間あいだ。それを考かんがえれば、建物たてものの金額きんがくは高たかくないと感かんじています」と話はなします。一生いっしょうのうち親子おやこが一緒いっしょに過すごせる時間じかんは案外あんがい、短みじかいもの。都会とかいとは違ちがう場所ばしょがあることで、子こどもの可能かのう性せいを伸のばし、また親おやもリフレッシュできるのかもしれません。

二に拠点きょてん生活せいかつは暮くらしの延長線えんちょうせん。毎週まいしゅう通かよっているから親子おやこで発見はっけんがある

藤田ふじたさん夫妻ふさいは、2020年ねんに小屋こやを購入こうにゅう。西岡にしおかさん夫妻ふさいと同おなじく2人ふたりのお子こさんがいる4人にん家族かぞくで、東京とうきょう都と在住ざいじゅう。ほぼ毎週まいしゅう、シラハマ校舎こうしゃに来きているといいます。

藤田ふじたさん家族かぞく。取材しゅざい時じ、お兄にいちゃんは宿題しゅくだいをしていました。小屋こやでの生活せいかつが、日常にちじょう生活せいかつの延長えんちょうにあるんですね（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

「コロナ禍かでは長ながく過すごしたこともあり、今いまではすっかり気心きごころがしれた仲なかに。毎週まいしゅう水曜すいようになると白浜しらはまの天気てんきをチェックして、木曜もくようになると西岡にしおかさんに連絡れんらくして（笑）、金曜日きんようびの夜よる9時じに自宅じたくを出発しゅっぱつ、夜よる11時じごろにここに到着とうちゃくするスケジュールでしょうか。土日どにちはまるまるここで過すごしています」。旅行りょこうではなく、あくまでも暮くらしの延長線えんちょうせん、自然しぜんなことだそう。夫婦ふうふ交代こうたいで校舎こうしゃ内ないのコワーキングスペースで仕事しごとをすることもあります。

「ここにいると他たの小屋こやを利用りようしている家族かぞくを含ふくめた子こども同士どうしで遊あそんでくれるから、気持きもちの面めんでラクになります。ただ、その分ぶん、金曜日きんようびまでは大忙おおいそがし。子こどもの習ならい事ごとも予定よていも、ぎゅっと平日へいじつに詰つめ込こんでいます。家事かじはテレワークだから平日へいじつでもできている部分ぶぶんもありましたが、最近さいきんは出社しゅっしゃすることも増ふえたので、正直しょうじき、家事かじはまわっていません（笑）」と妻つまはあっけらかんと話はなします。西岡にしおかさんと同様どうよう、もともと夫妻ふさいともにアウトドア好すきで、小屋こやの購入こうにゅうを決断けつだんしたそう。

「当初とうしょは購入こうにゅうを迷まよっていたんですけれど、小屋こやがどんどん売うれてしまって、あと残のこり1棟むねですって言いわれてあわてて申もうし込こんだんです。その後ご、コロナの流行りゅうこうがあって、強制きょうせい的てきにテレワークになって……。ここがあってほんとに良よかったなと思おもいました。家族かぞくみんなにとっての、息抜いきぬきの場所ばしょになっていますから」と夫おっとが話はなします。

ほぼ毎週まいしゅう末まつ、来きているというだけあって、家電かでん類るいも充実じゅうじつ。小屋こやは外観がいかんから受うける印象いんしょう以上いじょうに広ひろく使つかえます（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

「キャンプって、設営せつえいと撤収てっしゅうでけっこうな時間じかんがかかるし、それから焚たき火びをして料理りょうりをするのは大変たいへん。用具ようぐの手入ていれや後片付あとかたづけもある。この小屋こやだとその必要ひつようがなくて、来きて布団ふとんを敷しけばすぐに眠ねむれるし、すぐ遊あそべる。理想りそうのかたちでした」と妻つまは言いいます。さらに旅行りょこうとの違ちがいとして、いつもの場所ばしょに来くる良よさがある、と続つづけます。

「毎週まいしゅう、来きているので季き節ぶしごとの雲くもの形かたちや海うみの色いろ、緑みどりの様子ようす、波なみの様子ようすなど、変化へんかに気きがつけるし、親子おやこで発見はっけんがあるんです。それは通かよっている強つよみだなと思おもいます」と妻つま。

「二に拠点きょてん生活せいかつで良よいのは、まったく異ことなる価値かち観かんに触ふれられることでしょうか。都会とかいは効率こうりつよくて仕事しごともあって、情報じょうほうや人ひとも集あつまっていて、出会であいや刺激しげきがある。でも、白浜しらはまは漁師りょうし町まちということもあり、地元じもとの人ひとはたくましくてちょっとあらっぽいところもある。この前まえなんて、『サラリーマンはいいよな、会社かいしゃにいけばお給料きゅうりょうがもらえるんだろ』って言いわれたり（笑）」。なるほど、都会とかいと地方ちほうを行いき来きし、価値かち観かんがゆさぶられるというのは、貴重きちょうな体験たいけんといえるかもしれません。

みんなで裏山うらやまに薪たきぎ木きを拾ひろいにいきます。昔話むかしばなしでおなじみ、「おじいさんは芝刈しばかりに」をリアルに体験たいけんしている令れい和わの子こども、いいなあ（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

集あつめた薪たきぎ木きで火ひをおこす子こどもたち。慣なれた手付てつきで、たくましさを感かんじます（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

取材しゅざい時じの昼食ちゅうしょくはうどん。みんなで火ひをおこして、うどんを茹ゆでて外そとで食たべる。それだけで最高さいこうのごちそう！（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

潮風しおかぜを浴あびて食たべるご飯はんって、世界一せかいいち美味おいしいよね（写真しゃしん撮影さつえい／ヒロタ ケンジ）

海うみ釣づりのために船ふねを共同きょうどう購入こうにゅう！

さらに藤田ふじたさんと西岡にしおかさんは最近さいきん、共同きょうどうで船ふねを購入こうにゅうしたのだとか！
「西岡にしおかさんの影響えいきょうで海うみ釣づりにハマって、船ふねを買かおうかという話はなしが持もち上あがって、トントン拍子とんとんびょうしで購入こうにゅうしました。高たかいものではなくて、本当ほんとうに漁船ぎょせん（笑）」（藤田ふじたさん）と楽たのしそう。

（写真しゃしん提供ていきょう／藤田ふじたさん）

スケジュールが合あう時ときは西岡にしおか家か、藤田ふじた家かで一緒いっしょに船ふねに乗のるのだとか。釣つった魚さかなをシェアキッチンで子こどもがさばいて、夕飯ゆうはんに刺身さしみやあら汁じるを食たべるのだそう！（写真しゃしん提供ていきょう／西岡にしおかさん）

いちばん好すきな季き節ぶしは夏なつ。釣つれないと子こどもたちは海うみに潜もぐってしまうこともあるそう。たくましい……。

（写真しゃしん提供ていきょう／西岡にしおかさん）

「二に拠点きょてん生活せいかつの話はなしを会社かいしゃの人ひとや友人ゆうじんに話はなすと、みんな『いいね』とか『私わたしにはできない』っていうんですけど、そんなに難むずかしくないです。やればできるし、やったら絶対ぜったい楽たのしい（笑）。子こどものためといいつつ、大人おとなが人生じんせいを楽たのしまないと」と妻つま。

今後こんごのシラハマ校舎こうしゃは防災ぼうさい拠点きょてんとしての活用かつようも

実じつはシラハマ校舎こうしゃは、2018年ねんの台風たいふうによって停電ていでんする被害ひがいに遭あいました。その経験けいけんも踏ふまえ、今後こんごは隣となりの敷地しきちにマイクログリッド・オフグリッドハウス（※送電そうでん網もうが「オフ」な状態じょうたい、送電そうでん網もうにつながらずともライフラインを維持いじできる住すまいのこと）をつくり、防災ぼうさい拠点きょてんとしての活用かつようも見据みすえているそう。小屋こやと防災ぼうさいを組くみ合あわせた新あたらしい展開てんかいですね。

コロナ禍かでは、おうちキャンプを楽たのしむ人ひとが増ふえましたが、テントに入はいると小ちいさな空間くうかんが持もつ豊ゆたかさに気きづかされます。小屋こやはそんな小ちいさな豊ゆたかさを体現たいげんした存在そんざいです。リフレッシュの場所ばしょとして、地域ちいき交流こうりゅうの場所ばしょ、防災ぼうさいの拠点きょてんとして。日本人にっぽんじんの暮くらしになじむ小屋こやはまだまだ増ふえていくに違ちがいありません。