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世界基準の超省エネ住宅「パッシブハウス」を30軒以上手掛けた建築家の自邸がスゴすぎる! ZEH超え・太陽光や熱エネルギー活用も技アリ | スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
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連載れんさい断熱だんねつしん時代じだい
塚田真理子
塚田つかだ真理子まりこ
2023ねん8がつ3にち (木)もく

世界せかい基準きじゅんちょうしょうエネ住宅じゅうたく「パッシブハウス」を30けん以上いじょう手掛てがけた建築けんちく自邸じていがスゴすぎる! ZEHちょうえ・太陽光たいようこうねつエネルギー活用かつようわざアリ

世界基準の超省エネ住宅「パッシブハウス」を30軒以上手掛けた建築家の自邸がスゴすぎる! ZEH超え・太陽光や熱エネルギー活用も技アリ
写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき
なつすずしくふゆあたたかい快適かいてきさと、世界せかい基準きじゅんちょうしょうエネを両立りょうりつした、ドイツ発祥はっしょうの「パッシブハウス」。これまで30けん以上いじょうのパッシブハウス計画けいかくたずさわってきたパッシブハウス・ジャパン代表だいひょう理事りじもりみわさんが、長野ながのけん軽井沢かるいざわまちみずか設計せっけいしたセカンドハウスをつくったとき、お邪魔じゃましてきました。
こう次元じげん断熱だんねつ性能せいのうと、斬新ざんしんねつ供給きょうきゅうシステム、自然しぜん素材そざい自然しぜんのエネルギーをれたデザイン……パッシブハウスの最新さいしんみをていきましょう。

ているようでことなる、パッシブハウスとしょうエネ住宅じゅうたく

軽井沢町追分に完成した「信濃追分の家」。資料が整い次第、パッシブハウス認定の申請を行う予定(写真撮影/新井友樹)

軽井沢かるいざわまち追分おいわけ完成かんせいした「信濃追分しなのおいわけいえ」。資料しりょうととの次第しだい、パッシブハウス認定にんてい申請しんせいおこな予定よてい写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

ルームツアーのまえに、パッシブハウスは日本にっぽんでいうしょうエネ住宅じゅうたくなにちがうのか、あらためて整理せいりしてみましょう。
まず、しょうエネ住宅じゅうたくとは、こう断熱だんねつこう気密きみつにつくられ、エネルギー消費しょうひりょうおさえるこう効率こうりつ設備せつびそなえた住宅じゅうたくのこと。たいしてパッシブハウスは、太陽たいようふうなど自然しぜんちから建物たてものれて、必要ひつようとするエネルギーを最小さいしょう。さらにこう断熱だんねつこう機密きみつねつロスのすくない換気かんきシステムなどを駆使くししてエネルギー消費しょうひりょうおさえる、というアプローチのちがいがあります。

「ヨーロッパでは、ゼロエネルギーハウス(エネルギー収支しゅうしをゼロ以下いかにするいえ)・プラスエネルギーハウス(プラスにするいえ)への足掛あしがかりとして、パッシブハウスがあります。すくないエネルギーで快適かいてきらせるパッシブハウスの普及ふきゅうがまずあって、そのさきそうエネハウス(※)があるという位置付いちづけです」ともりさん。

そうエネハウス…太陽光たいようこうパネルなどでエネルギーをつくりすことができる住宅じゅうたく

しょうエネルギーを実現じつげんするために、たか断熱だんねつ性能せいのう必要ひつようということは、共通きょうつう事項じこうです。
くにさだめるしょうエネ基準きじゅんは、2025ねん以降いこうすべての新築しんちく住宅じゅうたくに「平成へいせい28(2016)ねん基準きじゅん」の適合てきごう義務ぎむづけられます。2030ねんごろまでには、さらにZEH(ゼッチ/エネルギー収支しゅうしをゼロ以下いかにするいえ基準きじゅん断熱だんねつ等級とうきゅう5、いちエネルギー消費しょうひりょう等級とうきゅう6)までげるとしていますが、それだけでは不十分ふじゅうぶんだともりさんはいます。

パッシブハウス・ジャパン代表の森みわさん。セカンドハウスの場所は、外気温が低くても日射量が豊富で、移住者が多くコミュニティが形成しやすい軽井沢町を選んだ(写真撮影/新井友樹)

パッシブハウス・ジャパン代表だいひょうもりみわさん。セカンドハウスの場所ばしょは、そと気温きおんひくくても日射にっしゃりょう豊富ほうふで、移住いじゅうしゃおおくコミュニティが形成けいせいしやすい軽井沢かるいざわまちえらんだ(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

「ZEHで地域ちいきごとにUA外皮がいひ平均へいきんねつ貫流かんりゅうりつ)をさだめて断熱だんねつ性能せいのうたかめようというのは、いえ魔法瓶まほうびんするという意味いみ方向ほうこうかっています。ただ、たとえばおな地域ちいきにあってもいえを180まわしてみれば全然ぜんぜん条件じょうけんちがうはずなのに、いえき、近隣きんりん住宅じゅうたく樹木じゅもくがあるか、樹木じゅもく落葉樹らくようじゅ常緑樹じょうりょくじゅか、なつふゆ日射にっしゃりょうがどれだけちがうかは考慮こうりょされません。

太陽たいようふう素直すなお設計せっけいする』ということを大切たいせつにするパッシブハウスでは、PHPP(Passive House Planning Package)というシミュレーションソフトを使つかって、建設けんせつする場所ばしょ標高ひょうこう気象きしょう条件じょうけんつきごとの日射にっしゃりょう周辺しゅうへん環境かんきょう家族かぞく構成こうせい給湯きゅうとう需要じゅようまで、あらゆる個別こべつ条件じょうけん入力にゅうりょくして温熱おんねつ計算けいさんをしています。それはもうシビアに。そうやって建物たてもののエネルギー収支しゅうし厳密げんみつ予測よそくしながら設計せっけいして、入居にゅうきょ実測じっそくとのギャップをなくしているのです」

日本にっぽんしょうエネ基準きじゅんすうばいもの温熱おんねつ性能せいのうしょうエネ性能せいのうもとめられるパッシブハウスは、その土地とち条件じょうけんわせてオーダーメイドで設計せっけいされ、冷暖房れいだんぼうたよらずとも年中ねんじゅう快適かいてきごすことができる“究極きゅうきょくのエコハウス”というわけです。

階段まわりのアースカラーが木のぬくもりのアクセントに(写真撮影/新井友樹)

階段かいだんまわりのアースカラーがのぬくもりのアクセントに(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

今回こんかい訪問ほうもんしたもりさんの別邸べってい信濃追分しなのおいわけいえ」は、これまでもりさんが設計せっけい手掛てがけてきたなかでの発見はっけんまえ、パッシブハウスの進化しんかがたをめざしたといいます。コンセプトである「パッシブハウス+αあるふぁ」を実現じつげんするための、具体ぐたいてきなメソッドを6つおしえてもらいました。

メソッド1 みなみから45れた敷地しきちで、太陽光たいようこう最大限さいだいげん味方みかたにつけるコーナーガラス

真南に向いた大きなコーナーガラス。この家の象徴的存在でもある(写真撮影/新井友樹)

みなみいたおおきなコーナーガラス。このいえ象徴しょうちょうてき存在そんざいでもある(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

まずリビングにはいると、ななめにいた階段かいだんみます。じつはこの敷地しきちみなみから45れたロケーション。そこで、階段かいだんしつみなみけて、2かいのコーナーガラスのだい開口かいこうからかく方向ほうこうひかりむようにレイアウトしています。建物たてものかくからの日射にっしゃによって、ふゆ暖房だんぼうエネルギーを積極せっきょくてき取得しゅとくする工夫くふうです。

階段室の吹き抜けには、照明作家・鎌田泰二さん制作の大きなペンダント照明を。ブラインドがなくても、ほどよい目隠しになった(写真撮影/新井友樹)

階段かいだんしつけには、照明しょうめい作家さっか鎌田かまた泰二せいじさん制作せいさくおおきなペンダント照明しょうめいを。ブラインドがなくても、ほどよい目隠めかくしになった(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

蜜蝋仕上げの鉄の手すりがシンプルでかっこいい(写真撮影/新井友樹)

蜜蝋みつろう仕上しあげのてつすりがシンプルでかっこいい(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

2かい間取まどりはこの階段かいだんしつ中心ちゅうしんに、東西とうざいにシンメトリーになるよう居室きょしつはいしています。1かいにはあいだ仕切じきりのかべはなく、じくがずれたようなこの階段かいだんしつが、玄関げんかん和室わしつ、キッチン、リビングといった領域りょういきをやんわりと区画くかくし、視線しせん役割やくわりになっています。おかげで、開放かいほうてきでありながらいた、居心地いごこちのいい空間くうかんになっているのですね。

軽井沢かるいざわふゆきびしいそと気温きおんにもかかわらず、このきの敷地しきちえらんだのは、“エコハウスの意匠いしょう自由じゆうである”というメッセージをはなつための挑戦ちょうせんだったかもしれません」ともりさん。みなみきじゃなくてもパッシブハウスはつくれるし、自由じゆう堅苦かたくるしくないデザインもかなう。そんなあかしとなった実例じつれいです。

リビングの大きな開口部は敷地の向きに素直につくり、階段室を真南にレイアウト(写真撮影/新井友樹)

リビングのおおきな開口かいこう敷地しきちきに素直すなおにつくり、階段かいだんしつみなみにレイアウト(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

メソッド2 バイオマス燃料ねんりょう太陽熱たいようねつ太陽光たいようこうとEVしゃでエネルギーを地産ちさんけし

森さんによるスケッチ「信濃追分の家リニューアブル(再生可能エネルギー)・マックスな設備計画」。冷暖房は熱交換換気装置に内蔵され、1台のヒートポンプで全館空調が完結しているため、ペレットストーブは給湯器として位置付けられている(画像提供/KEY ARCHITECTS)

もりさんによるスケッチ「信濃追分しなのおいわけいえリニューアブル(再生さいせい可能かのうエネルギー)・マックスな設備せつび計画けいかく」。冷暖房れいだんぼうねつ交換こうかん換気かんき装置そうち内蔵ないぞうされ、1だいのヒートポンプで全館ぜんかん空調くうちょう完結かんけつしているため、ペレットストーブは給湯きゅうとうとして位置付いちづけられている(画像がぞう提供ていきょう/KEY ARCHITECTS)

このいえ最大さいだい特徴とくちょうといえるのが、ペレットストーブと太陽熱たいようねつしゅうねつによるねつ供給きょうきゅうれて、給湯きゅうとう補助ほじょ暖房だんぼうてていること。ガス給湯きゅうとう設置せっちしていません。太陽光たいようこう発電はつでんパネルは搭載とうさいしているものの、電気でんきねつえる割合わりあい大幅おおはばらしています。

イタリア製のペレットストーブは、玄関スペースにビルトイン(写真撮影/新井友樹)

イタリアせいのペレットストーブは、玄関げんかんスペースにビルトイン(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

Wi-Fi経由で着火操作が可能。冬、太陽熱が足りない場合は夕方着火するようタイマーを入れると、2~3時間でお風呂のお湯が沸き、余力で壁暖房としても放熱(写真撮影/新井友樹)

Wi-Fi経由けいゆ着火ちゃっか操作そうさ可能かのうふゆ太陽熱たいようねつりない場合ばあい夕方ゆうがた着火ちゃっかするようタイマーをれると、2~3あいだでお風呂ふろのおき、余力よりょくかべ暖房だんぼうとしても放熱ほうねつ写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

信州らしい熱源を、と選んだペレットストーブ。炎の揺らぎは見ているだけでほっとする。燃料は地域で購入することで、地域内でのエネルギー自活が可能に(写真撮影/新井友樹)

信州しんしゅうらしい熱源ねつげんを、とえらんだペレットストーブ。ほのおらぎはているだけでほっとする。燃料ねんりょう地域ちいき購入こうにゅうすることで、地域ちいきないでのエネルギー自活じかつ可能かのうに(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

外気温の影響を受けにくい太陽熱集熱器。集熱管の外側が真空になっていて断熱効果に優れている。なかなかインパクトのある佇まい(写真撮影/新井友樹)

そと気温きおん影響えいきょうけにくい太陽熱たいようねつしゅうねつしゅうねつかん外側そとがわ真空しんくうになっていて断熱だんねつ効果こうかすぐれている。なかなかインパクトのあるたたずまい(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

玄関げんかんにビルトインされたペレットストーブは、16じょうようエアコンみのパワーがあり、温水おんすい出力しゅつりょく対応たいおう燃焼ねんしょうエネルギーの8わり温水おんすいに、のこり2わり輻射ふくしゃ暖房だんぼうとして放熱ほうねつされます。にわ設置せっちした太陽熱たいようねつしゅうねつは、真空しんくうガラス管内かんないのヒートパイプが太陽光たいようこうにより加熱かねつされ、不凍液ふとうえきあたた循環じゅんかんさせるもの。
木質もくしつバイオマスと太陽光たいようこうという再生さいせい可能かのうエネルギーを温水おんすいというねつエネルギーにえて、キッチンにある300Lのタンクにねつを貯湯していく仕組しくみです。

ペレットストーブと太陽熱集熱器からの温水を集める貯湯タンク。この家ではあえて見えやすいよう、キッチンに設置(写真撮影/新井友樹)

ペレットストーブと太陽熱たいようねつしゅうねつからの温水おんすいあつめる貯湯タンク。このいえではあえてえやすいよう、キッチンに設置せっち写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

左奥のドアの先が貯湯タンクのスペース。シンクには95℃まで対応の熱湯栓も付いていて、煮炊きに必要なお湯は一瞬で沸いてしまう(写真撮影/新井友樹)

ひだりおくのドアのさきが貯湯タンクのスペース。シンクには95℃まで対応たいおう熱湯ねっとうせんいていて、煮炊にたきに必要ひつようなお一瞬いっしゅんいてしまう(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

田舎暮らしに欠かせない車は、電気自動車を導入。V2H(Vehicle to Home)を実現している(写真撮影/新井友樹)

田舎いなからしにかせないくるまは、電気でんき自動車じどうしゃ導入どうにゅう。V2H(Vehicle to Home)を実現じつげんしている(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

もうひとつ注目ちゅうもくしたいのが、電気でんき自動車じどうしゃ蓄電池ちくでんち見立みたてていること。屋根やね東西とうざいせた3.8kWの太陽光たいようこうパネルで発電はつでんした電気でんきは、おも照明しょうめい冷蔵庫れいぞうこ換気かんきシステムに使用しようします。「それらの消費しょうひ電力でんりょくはだいたい400Wとして、15あいだで6kWh。EVしゃのバッテリー40kWhのうち6kWhをまわせばいいのですから、夜間やかんくるまからいえおくりょうとしてはたいしたりょうではありません」ともりさん。ふゆ夜間やかんかり暖房だんぼうっても、翌朝よくあさ室温しつおんは1~2℃もがらないパッシブハウスだからこそ実現じつげんできるライフスタイル。
「ただし、オフグリッド仕様しようにはしていません。数日すうじつあいだくもりのつづけば、発電はつでんりょう低下ていかします。そういうときは電力でんりょく会社かいしゃたよる。ぎゃく発電はつでんしてあまったぶんわたすこともできる」

太陽光たいようこうねつエネルギーを最大限さいだいげん活用かつようし、電力でんりょく系統けいとうともつながりながら、無理むりのない範囲はんいでエネルギー自立じりつしているいえなのです。

メソッド3 高性能こうせいのういえゆかだん不要ふようかべ暖房だんぼうパネルを日本にっぽんはつ導入どうにゅう

無垢のフローリングが素足に心地いい(写真撮影/新井友樹)

無垢むくのフローリングが素足すあし心地ここちいい(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

建物たてもの自体じたい性能せいのうたかいパッシブハウスは、ゆか暖房だんぼうがなくても、窓辺まどべ頭上ずじょう室温しつおんがほぼどうじ、温度おんどムラがないのが特徴とくちょうです。「もうゆかからあたためる必要ひつようがそもそもいですし、じつゆかは、床下ゆかしたからあたためようとしても断熱だんねつしてしまうのです。ここはヨーロピアンオークの無垢むくフローリングを使つかっていて、ねつ伝導でんどうりつひくい。だからゆか暖房だんぼうにすると放熱ほうねつ効率こうりつわるいんです」ともりさん。
かわりに導入どうにゅうしたのが、ドイツせいかべ暖房だんぼうパネルによる輻射ふくしゃしき暖房だんぼうです。給湯きゅうとうがメインのペレットストーブですが、あまったおはこのかべ暖房だんぼう熱源ねつげんとして使つかわれます。パネルはあつみのある自然しぜん素材そざいのため、調しらべ湿性しっせい蓄熱ちくねつせい期待きたいできそうです。

立てかけてあるオブジェのようなものは、土を高圧でプレスして製造されたドイツ製の土壁暖房パネル。温水配管を効率よく巡らせるよう掘り込みがついているのが特徴で、これを補助暖房として壁面に埋め込んでいる(写真撮影/新井友樹)

てかけてあるオブジェのようなものは、こうあつでプレスして製造せいぞうされたドイツせいかべ暖房だんぼうパネル。温水おんすい配管はいかん効率こうりつよくめぐらせるようみがついているのが特徴とくちょうで、これを補助ほじょ暖房だんぼうとして壁面へきめんんでいる(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

暖房パネルは1階の北側にある和室と2階の洗面脱衣所の漆喰塗り壁内部に設置。ゲストが宿泊する部屋と、服を脱ぐ脱衣室の室温を、冬場にほんの少し上げられるようにと配慮した設計(写真撮影/新井友樹)

暖房だんぼうパネルは1かい北側きたがわにある和室わしつと2かい洗面せんめん脱衣だついしょ漆喰しっくいかべ内部ないぶ設置せっち。ゲストが宿泊しゅくはくする部屋へやと、ふく脱衣だついしつ室温しつおんを、冬場ふゆばにほんのすこげられるようにと配慮はいりょした設計せっけい写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

メソッド4 信州しんしゅうカラマツのサッシ+ふつ・サンゴバンしゃせいのガラスでうつくしくまど断熱だんねつ

トリプルガラスに、信州カラマツの木製サッシ。かなりの厚みがあるのがわかる(写真撮影/新井友樹)

トリプルガラスに、信州しんしゅうカラマツの木製もくせいサッシ。かなりのあつみがあるのがわかる(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

リビングの大きな窓の先はウッドデッキ。軒の長さも日射に合わせて緻密に計算されている(写真撮影/新井友樹)

リビングのおおきなまどさきはウッドデッキ。のきながさも日射にっしゃわせて緻密ちみつ計算けいさんされている(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

断熱だんねつせいすぐれた木製もくせいサッシは、長野ながのけんせんきょく山崎屋やまざきや木工もっこう製作所せいさくしょによるもの。長野ながのけんさんざいのカラマツのうつくしい木目もくめがぬくもりをかんじさせます。ガラスは、ふつ・サンゴバンしゃせいのトリプルガラスECLAZを採用さいよう一般いっぱんてきなトリプルガラスよりねつ貫流かんりゅうりつひくこう断熱だんねつ、さらにペアガラスみに日射にっしゃねつ取得しゅとくりつたかい、高性能こうせいのうガラスです。
「しかもこう透過とうかなミュージアムガラスのため、非常ひじょう景色けしきえるという特徴とくちょうもあります」(もりさん)。うつみのすくないクリアなまどからは、軽井沢かるいざわのみずみずしいみどりあざやかにながめられます。

コーナーガラスの左右はサンゴバン社製のトリプルガラス、中央は安曇野市の丸山硝子の技術で実現したガラスコーナーだが、諸事情により日本板硝子のトリプルガラスとなった。中央のガラスだけ少し室内の映り込みがあるのがわかる(写真撮影/新井友樹)

コーナーガラスの左右さゆうはサンゴバンしゃせいのトリプルガラス、中央ちゅうおう安曇あずみ野市のいち丸山まるやま硝子がらす技術ぎじゅつ実現じつげんしたガラスコーナーだが、しょ事情じじょうにより日本板硝子にほんいたがらすのトリプルガラスとなった。中央ちゅうおうのガラスだけすこ室内しつないうつみがあるのがわかる(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

木製サッシが絵画のフレームのよう(写真撮影/新井友樹)

木製もくせいサッシが絵画かいがのフレームのよう(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

ドイツのヘーベ・シーベ金物かなもの技術ぎじゅつにより隙間すきまなくぴったりまるエアタイトサッシ。空気くうきねつおとをシャットアウト(動画どうが撮影さつえい塚田つかだ真理子まりこ

メソッド5 田舎いなからしをよりゆたかにする“パッシブセラー”

ワインや食料の保管庫として活用できるセラーは、待望のスペース(写真撮影/新井友樹)

ワインや食料しょくりょう保管ほかんとして活用かつようできるセラーは、待望たいぼうのスペース(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

たか断熱だんねつせい気密きみつせいにより、夏季かきは25℃、冬季とうきは20℃前後ぜんこうと、家中いえじゅう温度おんどムラがないのがパッシブハウスのメリットですが、じつ保存ほぞんしょく保管ほかんむずかしいところでした。漬物つけもの味噌みそなどの食品しょくひん保管ほかんしたくても、室温しつおんだといたみがはやいので冷蔵庫れいぞうこれないといけないと以前いぜんクライアントにわれてしまったのです。

でも、田舎いなからしをするとなれば、自分じぶん仕込しこんだ発酵はっこう食品しょくひんきたいとか、たくさんれた野菜やさい保管ほかんしたいというこえおおい、ともりさんはいます。そこで、基礎きそ断熱だんねつざいをあえてって、自然しぜん温度おんど変化へんかにまかせた“パッシブセラー”を階段かいだんもうけたのが、今回こんかいあらたなチャレンジ。

軽井沢かるいざわ凍結とうけつ深度しんどが80cmでこのいえ基礎きそふかいので、建物たてもの直下ちょっか土中どちゅう温度おんど変化へんかすくないという特徴とくちょうがあります。むかしながらの床下ゆかした空間くうかんのような感覚かんかくですね」。エアコンで温度おんど管理かんりせずとも、室内しつないよりも7℃ほどひく空間くうかん完成かんせいしました。ワインセラーとしても活用かつようできそうです。

メソッド6 防音ぼうおんして空気くうきのがす。プライバシーと換気かんきかなえる、革新かくしんてき室内しつないドア

ドア下に隙間はなく、かわりに縦のスリットから一定方向に空気を逃す(写真撮影/新井友樹)

ドア隙間すきまはなく、かわりにたてのスリットから一定いってい方向ほうこう空気くうきのがす(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

2かい寝室しんしつ洗面せんめんしつのドアには、通気つうき機能きのう革新かくしんてきなドア「VanAir」を導入どうにゅうしました。従来じゅうらい室内しつないドアは、めた状態じょうたいでも換気かんきができるよう、ドアの下部かぶに1cmほどの隙間すきまもうけているのが一般いっぱんてき。このドアは、ひょううらたがちがいにたてのスリット(通気つうきこう)があり、空気くうきはドアのしん経由けいゆして反対はんたいがわへとながれる仕組しくみ。24あいだ空気くうき一定いってい方向ほうこうながれ、においやよどみもしっかり排気はいきしてくれるのです。かつ、防音ぼうおん性能せいのうそなえており、おとれの心配しんぱいもありません。

ドア下に隙間はなく、かわりに縦のスリットから一定方向に空気を逃す(写真撮影/新井友樹)

ドア隙間すきまはなく、かわりにたてのスリットから一定いってい方向ほうこう空気くうきのがす(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

洗面脱衣室、バスルームの空気もスムーズに排気され、一年中結露やカビとも無縁(写真撮影/新井友樹)

洗面せんめん脱衣だついしつ、バスルームの空気くうきもスムーズに排気はいきされ、一年中いちねんじゅう結露けつろやカビとも無縁むえん写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

クローゼット上の木ルーバーのうしろは、熱交換換気から新鮮空気を各部屋に供給する給気グリル。ここから供給された空気は脱衣室等のウェットエリアの排気口へと流れる(写真撮影/新井友樹)

クローゼットじょうルーバーのうしろは、ねつ交換こうかん換気かんきから新鮮しんせん空気くうきかく部屋へや供給きょうきゅうするきゅうグリル。ここから供給きょうきゅうされた空気くうき脱衣だついしつとうのウェットエリアの排気はいきこうへとながれる(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

なお、換気かんきシステムには、室内しつないねつをリサイクルしながら室内しつない室外しつがい空気くうきえる「Zehnder CHM200」を使用しよう換気かんきユニットにヒートポンプをんだもので、ねつ交換こうかん換気かんき冷暖房れいだんぼうじょ湿しめ空気くうき清浄せいじょうが1だいおこなえます。
基本きほんてきには自動じどう制御せいぎょですが、タッチしきパネルで操作そうさ可能かのうです。

取材時(6月下旬)の室温は24.5℃、湿度53%。真価が問われる冬が楽しみ(写真撮影/新井友樹)

取材しゅざい(6がつ下旬げじゅん)の室温しつおんは24.5℃、湿度しつど53%。真価しんかわれるふゆたのしみ(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

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家族かぞくつどいえ、ずっといたくなるいえ

新しい挑戦がたくさん詰め込まれた家(写真撮影/新井友樹)

あたらしい挑戦ちょうせんがたくさんまれたいえ写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

大きな窓がもたらす開放感、気持ちのよさは、何ものにも変え難い(写真撮影/新井友樹)

おおきなまどがもたらす開放かいほうかん気持きもちのよさは、なにものにもがたい(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

信濃追分しなのおいわけいえ設計せっけい期間きかんやく1ねん施工しこう工事こうじは10ヵ月かげつほど。はつ挑戦ちょうせんみもおおく、建築けんちくはおよそ5,500まんえん一般いっぱんてきには、パッシブハウスの建築けんちく新築しんちく住宅じゅうたく+1.5~2わりというのが目安めやすだそうです。毎月まいつき光熱こうねつつき1まんえん以内いないと、ランニングコストはかなりおさえられる見込みこみ。ただ、える数字すうじ以上いじょう一年中いちねんじゅうごしやすく、その快適かいてきさはプライスレスなもの、ともりさんはいます。

「パッシブハウスにんでいるほうのおはなしくと、あさスッと布団ふとんからられるようになった、しょうなおったというこえおおいですね。あとは、いえがあまりにも快適かいてきだからいえにずっといたくて、会社かいしゃめて自宅じたくでできる仕事しごとはじめたとか、まごがしょっちゅうあそびにるようになった、というこえも。家族かぞくつどいえ、といえるかもしれません」
パッシブハウスが心身しんしんにいい影響えいきょうあたえてくれたり、大袈裟おおげさではなく人生じんせいわったりすることもあるのですね。

信濃追分しなのおいわけいえは、今後こんご体験たいけん宿泊しゅくはくれていく予定よていだそうです。パッシブハウスを検討けんとうしたいほうは、一度いちどこの心地ここちよさを体感たいかんしてみてはいかがでしょうか。

明るいリビングで仕事をすることも多い森さん(写真撮影/新井友樹)

あかるいリビングで仕事しごとをすることもおおもりさん(写真しゃしん撮影さつえい新井あらい友樹ともき

さらにちか将来しょうらい太陽光たいようこうでつくる余剰よじょう電力でんりょく分解ぶんかいしてメタンガスをつくる、Power to Gasにも着目ちゃくもくしているというもりさん。こちらはまずパッシブタウン(富山とやまけん黒部くろべ集合しゅうごう住宅じゅうたく)での挑戦ちょうせん見守みまもりたいとのことですが、次々つぎつぎあらたな可能かのうせい追求ついきゅうするもりさんのみに注目ちゅうもくしたいとおもいます。

建物たてもの概要がいよう
在来ざいらい木造もくぞう2かい
【フラット35】S適合てきごう耐震たいしん等級とうきゅう3)
建築けんちく面積めんせき:88.04平米へいべい
のべゆか面積めんせき:129.58平米へいべい
敷地しきち面積めんせき:519.61平米へいべい

現在、2012年竣工の福岡パッシブハウスでは新オーナーを募集中。価値のわかる方にぜひ引き継いでほしい、と森さんは言う(画像提供/KEY ARCHITECTS)

現在げんざい、2012ねん竣工しゅんこう福岡ふくおかパッシブハウスではしんオーナーを募集ぼしゅうちゅう価値かちのわかるほうにぜひいでほしい、ともりさんはう(画像がぞう提供ていきょう/KEY ARCHITECTS)

(画像提供/KEY ARCHITECTS)

画像がぞう提供ていきょう/KEY ARCHITECTS)

取材しゅざい協力きょうりょく
パッシブハウス・ジャパン
KEY ARCHITECTS
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連載れんさい 断熱だんねつしん時代じだい 住宅じゅうたく性能せいのうなかでも、おおきく関心かんしんたかまっているのが「断熱だんねつ性能せいのう」。技術ぎじゅつ進化しんかによりエコ貢献こうけんがアップデートされ、健康けんこうごすために必要ひつようという認識にんしきたかまりました。断熱だんねつ重要じゅうようし、れるうごきがいま加速かそくしています。
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ほん
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