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LGBTQの住まい問題に自治体間で大きな意識ギャップ。「パートナーシップ制度導入も公営住宅の入居認めない」など施策の矛盾も…国交省に聞いた | スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
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和田わだ あや(りんかく)
2024ねん4がつ25にち (木)もく

LGBTQのまい問題もんだい自治体じちたいあいだおおきな意識いしきギャップ。「パートナーシップ制度せいど導入どうにゅう公営こうえい住宅じゅうたく入居にゅうきょみとめない」など施策しさく矛盾むじゅんも…国交こっこうしょういた

LGBTQの住まい問題に自治体間で大きな意識ギャップ。”パートナーシップ制度導入も公営住宅の入居認めない”など施策の矛盾も…国交省に聞いた
画像がぞう提供ていきょう/PIXTA)
2022ねん11月、国交こっこうしょう研究けんきゅう機関きかんである国土こくど技術ぎじゅつ政策せいさく総合そうごう研究所けんきゅうじょ以下いかくに総研そうけん)がLGBTQのひとたちにたいする自治体じちたいみを調査ちょうさした報告ほうこくしょ「LGBTにたいする地方ちほう公共こうきょう団体だんたいにおける住宅じゅうたく政策せいさく調査ちょうさ報告ほうこく」を公開こうかいしました。47都道府県とどうふけんのうち、ほとんどがLGBTQのひとたちを「住宅じゅうたく確保かくほ配慮はいりょ必要ひつようひと」として位置付いちづけているのにたいし、市区しく町村ちょうそんなど1700以上いじょう基礎きそ自治体じちたいとなるとじゅうすうけんのみとなり、その意識いしきのギャップがりになっています。

2015ねん以降いこう性的せいてきマイノリティとされるカップルが人生じんせいともにすることを宣誓せんせいし、婚姻こんいんおなじように自治体じちたいみとめる制度せいど「パートナーシップ宣誓せんせい制度せいど以下いか、PS宣誓せんせい制度せいど)」を導入どうにゅうする自治体じちたい徐々じょじょえているなかで、まいの問題もんだい改善かいぜんしているのか、同性どうせいパートナーととも公営こうえい住宅じゅうたく入居にゅうきょできるのかなど、国交こっこうしょう くに総研そうけん 建築けんちく研究けんきゅう部長ぶちょう 長谷川はせがわひろしさんにおはなしきました。

LGBTQは「住宅じゅうたく確保かくほよう配慮はいりょしゃ」?まいさがしにおける問題もんだいとは

LGBTQのひとたちが賃貸ちんたい物件ぶっけん入居にゅうきょしようとすると、収入しゅうにゅうめん問題もんだいがなくても同性どうせいカップルというだけでオーナーや管理かんり会社かいしゃ入居にゅうきょことわられる、という体験たいけんだんみみにすることがあります。また、トランスジェンダーのひと不動産ふどうさん会社かいしゃ担当たんとうしゃ証明しょうめいしょ記載きさい性別せいべつとのギャップにおどろかれたり、同性どうせいカップルは夫婦ふうふとみなされず、ファミリータイプではなくルームシェア部屋へやしか紹介しょうかいしてもらえなかったり。まいさがしでいやおもいをすることもおおいようです。

同性カップルが住まい探しをしても、根強い偏見や制度が追いついていないために、なかなか思うようにいかない現実がある(画像/PIXTA)

同性どうせいカップルがまいさがしをしても、根強ねづよ偏見へんけん制度せいどいついていないために、なかなかおもうようにいかない現実げんじつがある(画像がぞう/PIXTA)

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高齢こうれいしゃてい所得しょとくしゃなど、まいさがしに困難こんなんかかえるひとたちのなかでも、ことLGBTQのひとたちが直面ちょくめんしている問題もんだいについて、日本にっぽんでは残念ざんねんながらあまり理解りかいすすんでいるとはえません。以下いか資料しりょうからも、2/3ちかくの回答かいとうしゃが「せい多様たようせいたいする社会しゃかい理解りかいすすんでいない」とかんじており、不動産ふどうさん会社かいしゃ相談そうだんくことに不安ふあんおぼえている当事とうじしゃおおいことがかります。

回答した人の 2/3近くが、性の多様性への理解が進んでいないと感じている(出典:浜松市「令和元年度第1回浜松市広聴モニターアンケート調査『性の多様性について』」)

回答かいとうしたひとの 2/3ちかくが、せい多様たようせいへの理解りかいすすんでいないとかんじている(出典しゅってん浜松はままつれいもと年度ねんどだい1かい浜松はままつこう聴モニターアンケート調査ちょうさせい多様たようせいについて』」)

L(Lesbian、レズビアン)やFB(Female Bisexual、女性のバイセクシュアル)など多くの当事者たちが不動産会社に行くことに不安を感じている(資料提供/NPO法人カラフルチェンジラボ「2021年セクシュアル・マイノリティーの居住ニーズに関するアンケート」)

L(Lesbian、レズビアン)やFB(Female Bisexual、女性じょせいのバイセクシュアル)などおおくの当事とうじしゃたちが不動産ふどうさん会社かいしゃくことに不安ふあんかんじている(資料しりょう提供ていきょう/NPO法人ほうじんカラフルチェンジラボ「2021ねんセクシュアル・マイノリティーの居住きょじゅうニーズにかんするアンケート」)

不動産ふどうさん会社かいしゃなかには、社内しゃない勉強べんきょうかい研修けんしゅうおこなってLGBTQのひとたちがかかえるなやみや問題もんだいへの理解りかいふかめ、当事とうじしゃ相談そうだんしやすい環境かんきょうづくりや希望きぼう沿った物件ぶっけん紹介しょうかいしようと尽力じんりょくする会社かいしゃも、もちろんあります。
しかし、そうではない会社かいしゃがまだまだおおいのも現状げんじょうです。ときには「LGBTQをまいさがしの支援しえん必要ひつよう対象たいしょうとした『住宅じゅうたく確保かくほよう配慮はいりょしゃ』にふくめるべきか」ということそのものが議論ぎろんとなることもあるのです。

国交こっこうしょうがLGBTQにたいする自治体じちたいみを調査ちょうさ

そこで、2022ねん11月に、国交こっこうしょうこく総研そうけん全国ぜんこく自治体じちたい関係かんけい団体だんたいけてLGBTQにたいする調査ちょうさ実施じっししました。調査ちょうさおこなった長谷川はせがわさんは、その実施じっし背景はいけいについてつぎのようにかたります。

「LGBTQのまいさがしといっても、ゲイ、レズビアン、トランスジェンダーといったさまざまな属性ぞくせいごとにかかえる問題もんだいもあり、いちくくりにはできません。民間みんかん不動産ふどうさん会社かいしゃなどがそれらの問題もんだいたいしどのように対応たいおうしているのか、地方自治体ちほうじちたい住宅じゅうたく施策しさく同性どうせいカップルが公営こうえい住宅じゅうたく入居にゅうきょできるのか、くに調査ちょうさ機関きかんとしてのデータもありませんでした。そこへ、LGBTQの住宅じゅうたく問題もんだいんでいる研究けんきゅうしゃから一緒いっしょ調査ちょうさすすめないかとはなしをもらい、地方自治体ちほうじちたいみについてわたし担当たんとうすることになったのです」(長谷川はせがわさん、以下いかどう

調査ちょうさは、メールやFAXをもちいてアンケート形式けいしき実施じっしし、都道府県とどうふけん指定してい都市としのほか、東京とうきょう23中核ちゅうかく都市とし、そして賃貸ちんたい住宅じゅうたく供給きょうきゅう促進そくしん計画けいかくやすでに居住きょじゅう支援しえん協議きょうぎかい設立せつりつしている市区しく町村ちょうそんふくめ、けい157団体だんたいから回答かいとうました。

地方自治体がLGBTQの住まいに対してどのように取り組んでいるのか、2022年8~9月にメールによるアンケート方式で調査を行った(資料提供/国土交通省国総研)

地方自治体ちほうじちたいがLGBTQのまいにたいしてどのようにんでいるのか、2022ねん8~9がつにメールによるアンケート方式ほうしき調査ちょうさおこなった(資料しりょう提供ていきょう国土こくど交通省こうつうしょうこく総研そうけん

LGBTQは「住宅じゅうたく確保かくほよう配慮はいりょしゃ」? 調査ちょうさえた、意識いしきのギャップ

まいさがしにこまっているひと民間みんかん賃貸ちんたい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょ促進そくしんはかる「住宅じゅうたくセーフティネットほう正式せいしき名称めいしょう住宅じゅうたく確保かくほよう配慮はいりょしゃたいする賃貸ちんたい住宅じゅうたく供給きょうきゅう促進そくしんかんする法律ほうりつ)」では、“LGBT※は「法律ほうりつさだめるもの」ではなく、「国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるもの」のなかのひとつ”として例示れいじされているにぎません。PS宣誓せんせい制度せいど有無うむかく自治体じちたいによってことなるため、くにはLGBTを住宅じゅうたく確保かくほよう配慮はいりょしゃふくめるかどうかの判断はんだんかく地方自治体ちほうじちたい判断はんだんゆだねる、つまりこくとして必須ひっす定義ていぎするものではない、ということのようです。

以降いこう資料しりょうかんする事項じこうについては、当時とうじ調査ちょうさ内容ないようにあわせてLGBTQではなくLGBTと表記ひょうき

住宅セーフティネット法では、LGBTは「国土交通省令で定めるもの」の1例として例示されている(資料提供/国土交通省国総研)

住宅じゅうたくセーフティネットほうでは、LGBTは「国土こくど交通こうつう省令しょうれいさだめるもの」の1れいとして例示れいじされている(資料しりょう提供ていきょう国土こくど交通省こうつうしょうこく総研そうけん

実際じっさい調査ちょうさ結果けっかると、賃貸ちんたい住宅じゅうたく供給きょうきゅう促進そくしん計画けいかく策定さくていしている「都道府県とどうふけん」は47ちゅう46、LGBTQをよう配慮はいりょしゃとして位置付いちづけているのは47ちゅう44です。一方いっぽう基礎きそ自治体じちたいにあたる市区しく町村ちょうそんなどをふくむ「その」では、賃貸ちんたい住宅じゅうたく供給きょうきゅう促進そくしん計画けいかく策定さくていみがわずか0.3%、LGBTをよう配慮はいりょしゃとして位置付いちづけているのは0.2%となっています。

この結果からは、ほとんどの都道府県がLGBTを「住宅確保要配慮者」としているのに対し、市町村レベルでは、1619団体のうち、位置付けているのは3件のみと読める(資料提供/国土交通省国総研)

この結果けっかからは、ほとんどの都道府県とどうふけんがLGBTを「住宅じゅうたく確保かくほよう配慮はいりょしゃ」としているのにたいし、市町村しちょうそんレベルでは、1619団体だんたいのうち、位置付いちづけているのは3けんのみとめる(資料しりょう提供ていきょう国土こくど交通省こうつうしょうこく総研そうけん

その一方いっぽうで「市区しく町村ちょうそんなどの基礎きそ自治体じちたいは、個別こべつには賃貸ちんたい住宅じゅうたく供給きょうきゅう促進そくしん計画けいかくさだめていなくてもかく都道府県とどうふけんさだめる計画けいかくもとづいて施策しさくおこなっているはず」とかんがえることが可能かのうです。そうなると賃貸ちんたい住宅じゅうたく供給きょうきゅう促進そくしん計画けいかく策定さくていみの基礎きそ自治体じちたいは97.9%+0.3%、LGBTをよう配慮はいりょしゃとして位置付いちづけている基礎きそ自治体じちたいは93.6%+0.2%とむこともできるわけで、この数値すうちをどのように解釈かいしゃくすべきかにまよいます。

長谷川はせがわさんは、「市町村しちょうそん賃貸ちんたい住宅じゅうたく供給きょうきゅう促進そくしん計画けいかくをつくっていなくても、LGBTを位置付いちづけているところはあるかもしれないが、はっきりとはつかめていない」としたうえで、つぎのようにはなしています。

「PS宣誓せんせい制度せいど市町村しちょうそん導入どうにゅうしていなくても、都道府県とどうふけん導入どうにゅうしていれば、それにかたち都道府県とどうふけんした証明しょうめいしょ有効ゆうこうとして、LGBTQでも公的こうてきサービスをけられる基礎きそ自治体じちたいおおいです。

LGBTの位置付いちづけは自治体じちたいによってがありそうですが、そのような実務じつむてき側面そくめんかんがえれば、実際じっさい住宅じゅうたく確保かくほこまっている当事とうじしゃがいるのですから、くにとしては、LGBTは法律ほうりつ指定していする『住宅じゅうたく確保かくほよう配慮はいりょしゃ』にあたる、ととらえることができます」

渋谷区が発行するパートナーシップ証明書(画像/渋谷区)

渋谷しぶや発行はっこうするパートナーシップ証明しょうめいしょ画像がぞう渋谷しぶや

LGBTQがかかえるまいの問題もんだいえにくいワケ

つぎに「LGBTからの住宅じゅうたく相談そうだん」の状況じょうきょうてみましょう。
自治体じちたいなかでLGBTからの住宅じゅうたく相談そうだんけたことがあることをしめす「相談そうだんあり」は全体ぜんたいで8%と、自治体じちたい担当たんとうしゃのほとんどがLGBTのまいにかかわる問題もんだい直接的ちょくせつてき対応たいおうした経験けいけんがないことがかります。

LGBTQからの住宅相談を受けたことのある自治体はごくわずか(赤枠)。そのうち、半数以上が同性カップルで公営住宅に入れるかという相談になる(資料提供/国土交通省国総研)

LGBTQからの住宅じゅうたく相談そうだんけたことのある自治体じちたいはごくわずか(あかわく)。そのうち、半数はんすう以上いじょう同性どうせいカップルで公営こうえい住宅じゅうたくれるかという相談そうだんになる(資料しりょう提供ていきょう国土こくど交通省こうつうしょうこく総研そうけん

日本にっぽんにおけるLGBTQの割合わりあいは、3~10%といわれています。にもかかわらず、こんなにも「いたことがない」と回答かいとうするひとおお理由りゆうは、LGBTのひとたちが自治体じちたいまいの相談そうだん機会きかいがほとんどないからだとかんがえられます。

「10にん1人ひとりがLGBTQだとしても、カミングアウトしているひとはほんのひとにぎり。社会しゃかい周囲しゅういひとから差別さべつされることなどをおそれて、おやにも、会社かいしゃにもられないように生活せいかつしているひと大勢おおぜいいます。

不動産ふどうさん会社かいしゃ入居にゅうきょことわられても、自治体じちたい窓口まどぐち相談そうだんじんがいないため、制度せいどはあっても実際じっさい対応たいおうしたことがない、また問題もんだい実態じったい把握はあくできていない自治体じちたい職員しょくいんおおいのです」

パートナーシップ宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅうかならずしも一致いっちしない公営こうえい住宅じゅうたく施策しさく

さらに、かく自治体じちたいのPS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅう予定よてい同性どうせいカップルの公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょみとめる予定よていとの関係かんけいについてもてみましょう。
まず、ほん調査ちょうさ公表こうひょうした2022ねん11月時点じてんのPS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅうじょうきょうは、都道府県とどうふけんで21%、もっとたかいのは政令せいれい指定してい都市としの85%です。

PS宣誓制度の導入が最も進んでいるのは、指定都市の85%。導入割合が低いのは、都道府県の21%で、指定都市以外の属性において、半数以上が導入していないという結果となった(資料提供/国土交通省国総研)

PS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅうもっとすすんでいるのは、指定してい都市としの85%。導入どうにゅう割合わりあいひくいのは、都道府県とどうふけんの21%で、指定してい都市とし以外いがい属性ぞくせいにおいて、半数はんすう以上いじょう導入どうにゅうしていないという結果けっかとなった(資料しりょう提供ていきょう国土こくど交通省こうつうしょうこく総研そうけん

このうちPS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅうしていない自治体じちたい今後こんごについて確認かくにんすると、PS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅう予定よてい、もしくは導入どうにゅう前向まえむきな自治体じちたいが、かならずしも同性どうせいカップルの公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょみとめる予定よていではないこと、またはぎゃくにPS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅう未定みていでも公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょみとめる予定よてい自治体じちたいがあることがかりました。

そして、PS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅう公営こうえい住宅じゅうたくへの同性どうせいカップルの入居にゅうきょみとめる予定よていのない自治体じちたいがまだまだおおいのもになるところです。

「PS宣誓制度の導入予定」と「同性カップルの公営住宅への入居を認める予定」の関係図。少数ではあるが「PS宣誓制度の導入は未定、なし」でも公営住宅への入居も認める方向の団体や、その逆があるのは興味深い(資料提供/国土交通省国総研)

「PS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅう予定よてい」と「同性どうせいカップルの公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょみとめる予定よてい」の関係かんけい少数しょうすうではあるが「PS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅう未定みてい、なし」でも公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょみとめる方向ほうこう団体だんたいや、そのぎゃくがあるのは興味深きょうみぶかい(資料しりょう提供ていきょう国土こくど交通省こうつうしょうこく総研そうけん

「このてんについては、地方自治体ちほうじちたい住宅じゅうたく部局ぶきょくからすれば『公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょみとめるかよりも、PS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅうするのがさきで、導入どうにゅうされてから対応たいおうする』というかんがかた背景はいけいにあります。事実じじつ、PS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅう未定みていのところは公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょ未定みていというところがおおく、住宅じゅうたく部局ぶきょくがPS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅうよりも先駆さきがけて公営こうえい住宅じゅうたく同性どうせいカップルをれようとしているところもありますが、なんらかの公的こうてき証明しょうめいしょがなければ二人ふたり関係かんけいしめすものがなく、うごきづらいようです。

なかには、婚姻こんいんとどけ受理じゅりおなじようにPS宣誓せんせい制度せいども『窓口まどぐちとなるのはかく市区しく町村ちょうそん役割やくわり』として、判断はんだん市区しく町村ちょうそんまかせ、都道府県とどうふけんとしては導入どうにゅうしていないケースもられます。そうなると、市区しく町村ちょうそんうごかないかぎ公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょむずかしくなりますね」

これらの結果けっかからは都道府県とどうふけん市区しく町村ちょうそんあいだかんがかた相違そういがあり、たがいにけあっているような構造こうぞう垣間見かいまみえるようです。長谷川はせがわさんは「かく都道府県とどうふけん市区しく町村ちょうそんにもっとはなしいて、打開だかいさくさぐっていく必要ひつようがある」と指摘してきしています。

同性カップルの公営住宅への入居を認めるには、二人の関係を示す何らかの公的な証明書が必要。しかし、都道府県と市区町村の間にはPS宣誓制度の導入に関して、考え方に隔たりがあるようだ(画像/PIXTA)

同性どうせいカップルの公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょみとめるには、二人ふたり関係かんけいしめなんらかの公的こうてき証明しょうめいしょ必要ひつよう。しかし、都道府県とどうふけん市区しく町村ちょうそんあいだにはPS宣誓せんせい制度せいど導入どうにゅうかんして、かんがかたへだたりがあるようだ(画像がぞう/PIXTA)

LGBTQのまいさがし、これからどうしたらいい?

今回こんかい調査ちょうさ結果けっかまえて「『課題かだい』や『今後こんご対策たいさく』としてどのようなことがかんがえられるか」といういにたいし、長谷川はせがわさんは「この調査ちょうさだけでは、なぜLGBTQのまいさがしがむずかしいのか、明確めいかく理由りゆうつかめない」といいます。

たとえば、高齢こうれいしゃであれば孤独こどく残置ざんちぶつ処理しょり問題もんだいてい所得しょとくしゃ場合ばあい家賃やちん滞納たいのうリスクなど、賃貸ちんたい住宅じゅうたくのオーナーや管理かんり会社かいしゃ入居にゅうきょ拒否きょひする原因げんいんえやすいので、原因げんいんごとに解決かいけつさくかんがえることが可能かのうです。しかし、LGBTQの場合ばあい入居にゅうきょ困難こんなんとなる原因げんいんえづらく、個別こべつせいたかいため「社会しゃかい全体ぜんたいたいする啓発けいはつ」や「不動産ふどうさん会社かいしゃ管理かんり会社かいしゃ担当たんとうしゃ教育きょういく」をおこなっていくしかないと長谷川はせがわさんはかんがえています。

「LGBTQフレンドリーな店舗てんぽ登録とうろくして、そこへけばいやおもいをせずに安心あんしんしてまいを確保かくほできるという不動産ふどうさん会社かいしゃやす公的こうてき仕組しくみが必要ひつようです。ただ、当事とうじしゃ気持きもちがおおきく関係かんけいしているので、制度せいどととのえて行政ぎょうせいのお墨付すみつきがつけば入居にゅうきょ促進そくしんされるというものでもありません。

担当たんとうしゃ悪気わるぎがなくても何気なにげないひとことでLGBTQのひとたちをきずつけてしまうことがあります。当事とうじしゃにとっては、どのような対応たいおうをされるかからない不動産ふどうさん会社かいしゃおとずれること自体じたい恐怖きょうふなのです。担当たんとうしゃ教育きょういくがしっかりとされていて、ここならいやおもいをせずに賃貸ちんたい住宅じゅうたく紹介しょうかいしてもらえるということを、えるしていかなければならないとおもいます」

今回の調査を行った国交省国土技術政策総合研究所 建築研究部長を務める長谷川さん。今後も定点観測的にLGBTQに対する行政の姿勢を調査し続けたいと話す(画像提供/長谷川さん)

今回こんかい調査ちょうさおこなった国交こっこうしょう国土こくど技術ぎじゅつ政策せいさく総合そうごう研究所けんきゅうじょ 建築けんちく研究けんきゅう部長ぶちょうつとめる長谷川はせがわさん。今後こんご定点ていてん観測かんそくてきにLGBTQにたいする行政ぎょうせい姿勢しせい調査ちょうさつづけたいとはなす(画像がぞう提供ていきょう長谷川はせがわさん)

LGBTQのパートナーシップ宣誓せんせい制度せいどは、今回こんかい調査ちょうさにも都道府県とどうふけんでの導入どうにゅう社会しゃかいてき認知にんちがかなりすすんできていますが、市区しく町村ちょうそんレベルにも浸透しんとうしてまいの問題もんだい解決かいけつにもつながっているかというと、まだまだというのが現実げんじつのようです。今回こんかい調査ちょうさえにくかった「なぜ、LGBTQのひとたちの賃貸ちんたい物件ぶっけんへの入居にゅうきょむずかしいのか」という問題もんだいこたえは、きっと、当事とうじしゃしんにいかにった支援しえん提供ていきょうできるか、をかんがえることにきるのではないでしょうか。

その具体ぐたいさくのひとつである公営こうえい住宅じゅうたくへの入居にゅうきょ可能かのう状態じょうたいへとつながっていくには、制度せいどたよるばかりではなく、かく自治体じちたい担当たんとうしゃをはじめ、わたしたちが問題もんだいについてることからはじめる必要ひつようがありそうです。

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