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住まいと学校の断熱事情の最前線、夏は教室が危ない! 住宅は断熱等級6以上が必要、2025年4月からの等級4以上義務化も「不十分」 東京大学・前真之准教授 | スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト
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連載れんさい断熱だんねつしん時代じだい
加工済み_唐松奈津子
唐松からまつ 奈津子なつこ(りんかく)
2024ねん6がつ21にち (金)きん

まいと学校がっこう断熱だんねつ事情じじょう最前線さいぜんせんなつ教室きょうしつあぶない! 住宅じゅうたく断熱だんねつ等級とうきゅう6以上いじょう必要ひつよう、2025ねん4がつからの等級とうきゅう4以上いじょう義務ぎむも「不十分ふじゅうぶん」 東京大学とうきょうだいがくぜん真之まさゆきじゅん教授きょうじゅ

住まいと学校の断熱事情の最前線、夏は教室が危ない!住宅は断熱等級6以上が必要、 2025年4月からの等級4以上義務化も「十分ではない」 東京大学・前真之准教授
写真しゃしん撮影さつえい片山かたやま貴博たかひろ
近年きんねん住宅じゅうたくしょうエネ”、なかでも“断熱だんねつ”への関心かんしんたかまっています。2022ねん建築けんちくぶつしょうエネほう改正かいせいけ、2025ねん4がつ以降いこう着工ちゃっこうするすべての新築しんちく住宅じゅうたく住宅じゅうたくで「断熱だんねつ等級とうきゅう4」以上いじょう義務ぎむされることの影響えいきょうおおきいでしょう。
そもそも断熱だんねつはなぜ住宅じゅうたく必要ひつようなのでしょうか? また断熱だんねつによってまいはどうわるのでしょうか? エコハウス研究けんきゅう第一人者だいいちにんしゃ東京大学とうきょうだいがく じゅん教授きょうじゅぜん真之まさゆき(まえ・まさゆき)さん(工学こうがくけい研究けんきゅう 建築けんちくがく専攻せんこう)にきました。

そもそも「断熱だんねつ」とは?まいの断熱だんねつはどうすべき?

そもそも「断熱だんねつ」とはどのようなものでしょうか?

断熱だんねつとは、ねつ出入でいりをち、部材ぶざいひょううら温度おんどつく技術ぎじゅつです。つぎ画像がぞう断熱だんねつざいとしてよく使用しようされるグラスウールをホットプレートでねっしたときの表裏ひょうり温度おんど計測けいそくしたときのものです。ホットプレートにせっする下部かぶめん加熱かねつされて150以上いじょうになっていますが、反対はんたいがわである上部じょうぶめんは30たもたれており、120以上いじょう温度おんどしょうじています。断面だんめんには温度おんど分布ぶんぷのグラデーションができていて、ねつ遮断しゃだんしていることがわかりますね」(まえさん、以下いかどう

断熱材であるグラスウールをホットプレートで熱したときの温度差を実証したときの様子。断熱材によって下側のホットプレートの熱が上部では断たれていることがわかる(画像提供/Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室)

断熱だんねつざいであるグラスウールをホットプレートでねっしたときの温度おんど実証じっしょうしたときの様子ようす断熱だんねつざいによってしたがわのホットプレートのねつ上部じょうぶではたれていることがわかる(画像がぞう提供ていきょう/Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ

「この断熱だんねつざい性能せいのうかして断熱だんねつ気密きみつをしっかりしていれば、エアコン1~2だいまいのぜん空間くうかんふゆなつ快適かいてき状態じょうたいたもつことができます。じつはエアコンを使用しようするとき、かく部屋へやに1だいずつ4~6じょうようのエアコンを同時どうじ稼働かどうさせててい負荷ふか運転うんてんつづけるのはエネルギー効率こうりつわるく、電気でんきだい余計よけいにかかります。自動車じどうしゃ渋滞じゅうたいにはまると燃費ねんぴわるくなるのとおなじです。それよりもいえ全体ぜんたいを1だい空調くうちょうすることでエアコンにうまく負荷ふかをかけたほうがずっとエネルギー効率こうりつく、電気でんきだいおさえられるのです」

冬にエアコン1台で暖房の効き具合を比較したときの様子(左が写真、右が遠赤外線カメラで撮影して温度分布を表したもの)。断熱等級6以上になると床の温度が22度を超え、エアコン1台で広いLDKスペースや隣接する部屋も含めた全体が暖まっている(画像提供/Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室)

ふゆにエアコン1だい暖房だんぼう具合ぐあい比較ひかくしたときの様子ようすひだり写真しゃしんみぎとお赤外線せきがいせんカメラで撮影さつえいして温度おんど分布ぶんぷあらわしたもの)。断熱だんねつ等級とうきゅう6以上いじょうになるとゆか温度おんどが22え、エアコン1だいひろいLDKスペースや隣接りんせつする部屋へやふくめた全体ぜんたいあたたまっている(画像がぞう提供ていきょう/Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ

断熱だんねつ必要ひつようなのは、ふゆだけじゃない!「なつ断熱だんねつ」が大事だいじ理由りゆう

部屋へや温度おんどについてかんがえるときには、近年きんねん「ヒートショック(急激きゅうげき気温きおん変化へんかによって血圧けつあつ脈拍みゃくはく変動へんどうすることで心筋梗塞しんきんこうそく不整脈ふせいみゃく脳出血のうしゅっけつのう梗塞こうそくなどの発作ほっさこすこと)」による事故じこ報道ほうどうなどをつうじて、住宅じゅうたくない気温きおん問題もんだいになっていることをおもこすひともいるでしょう。この住宅じゅうたくない暖房だんぼうしている場所ばしょ暖房だんぼうしていない場所ばしょあいだ極端きょくたん温度おんどしょうじるのは、まずだいいち断熱だんねつ気密きみつ不足ふそくつぎいえ全体ぜんたいあたためる空調くうちょうができていないことが原因げんいんです。建物たてもの断熱だんねつ気密きみつをしっかり確保かくほして、暖房だんぼうねつ家中いえじゅうにしっかりとどける仕掛しかけが必要ひつようなのです。

ヒートショックとは、部屋間の寒暖差によって血圧や脈拍の変動が体に悪影響を与えること(画像提供/Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室)

ヒートショックとは、部屋へやあいだ寒暖かんだんによって血圧けつあつ脈拍みゃくはく変動へんどうからだ悪影響あくえいきょうあたえること(画像がぞう提供ていきょう/Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ

ヒートショックはふゆこることがおおいのですが、まえさんは「これからは、なつ健康けんこう快適かいてきごすためにも断熱だんねつ非常ひじょう重要じゅうよう」だといます。

いちにち最高さいこう気温きおんが35える猛暑もうしょ発生はっせい日数にっすうてみると、1980年代ねんだい・ 90年代ねんだい年間ねんかんでほぼゼロにちだったのが、2023ねんには40にちえる地域ちいきてきています。北海道ほっかいどう東北とうほく地方ちほうでも熱中ねっちゅうしょうになって救急きゅうきゅう搬送はんそうされるひとが2023ねんには2022ねんの10ばい急増きゅうぞうしました。日本にっぽんはエアコンを使つかわずにガマンすることがしょうエネだとかんがえる風潮ふうちょうもあり、あつさ・さむさにえていのちおびやかす事件じけん多発たはつしています。すでに温暖おんだん影響えいきょうあきらかですが、今後こんごさらになつあつさはきびしくなることが予想よそうされます」

(画像提供/Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室、出典/日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト)

画像がぞう提供ていきょう/Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ出典しゅってん日本にっぽん気象きしょう協会きょうかい推進すいしん熱中ねっちゅうしょうゼロへ」プロジェクト)

さらに深刻しんこくなのは、どもたちがなが時間じかんごす小・中学校しょうちゅうがっこうです。

学校がっこう建築けんちく本来ほんらい換気かんきいのちおおきなまどけて空気くうきえ、かぜとおすことで快適かいてきごせるように設計せっけいされています。ところが、ちかごろは夏期かきそと気温きおんたかすぎて、まどけると室内しつないあつくなるため、けられません。断熱だんねつ十分じゅうぶんほどこされてない学校がっこう施設しせつでは、そとねつがそのまま室内しつない侵入しんにゅうするため、どんなに冷房れいぼうれてもすずしくならない。結果けっかどもたちが学習がくしゅう集中しゅうちゅうできないばかりか、なかには熱中ねっちゅうしょうにかかってしまうています。どもたちを過酷かこくあつさとよごれた空気くうきからすくうため、最近さいきんでは教室きょうしつ断熱だんねつ改修かいしゅうするみがひろがっています」

築40年以上の建物も多い小・中学校は換気する前提で設計されているため、断熱性能が低く、子どもたちの日常が危険にさらされている(画像提供/Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室)

ちく40ねん以上いじょう建物たてものおお小・中学校しょうちゅうがっこう換気かんきする前提ぜんてい設計せっけいされているため、断熱だんねつ性能せいのうひくく、どもたちの日常にちじょう危険きけんにさらされている(画像がぞう提供ていきょう/Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ

学校の断熱改修前後における冷房時の温度変化。いずれも冷房1台を稼働させているが、天井断熱を施すことで、同じ冷房器具でも教室全体の温度を下げられるようになる(画像提供/Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室)

学校がっこう断熱だんねつ改修かいしゅう前後ぜんこうにおける冷房れいぼう温度おんど変化へんか。いずれも冷房れいぼう1だい稼働かどうさせているが、天井てんじょう断熱だんねつほどこすことで、おな冷房れいぼう器具きぐでも教室きょうしつ全体ぜんたい温度おんどげられるようになる(画像がぞう提供ていきょう/Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ

この状況じょうきょうたいして、つよ危機ききかんいたまえさんは、2023ねんなつに、学校がっこう改修かいしゅうもとめる2まんせんにん署名しょめいあつめたうえで、当時とうじ文部もんぶ科学かがく大臣だいじん小・中学校しょうちゅうがっこう断熱だんねつ改修かいしゅうについて提言ていげんをしたこともあるそう。ところが当時とうじは「通常つうじょう建物たてもの改修かいしゅう十分じゅうぶん対策たいさくできる」との返答へんとうで、納得なっとくのいくものではありませんでした。

自治体じちたいによっても学校がっこう断熱だんねつ改修かいしゅうなどの対応たいおうにはがあります。たとえば、ある都道府県とどうふけんでは積極せっきょくてき対策たいさくがとられているが、となりけんではまった断熱だんねつ改修かいしゅうまれていなかったりします。自治体じちたいによってどもたちの教育きょういく環境かんきょうおおきくことなっている実態じったいはあまりられていません」

積極せっきょくてきみがおこなわれている自治体じちたいれいとして、東京とうきょう葛飾かつしかでは、区内くない小・中学校しょうちゅうがっこう児童じどう生徒せいととワークショップとうおこないながら断熱だんねつ改修かいしゅうし、その効果こうか検証けんしょうをしています。おなじく東京とうきょう杉並すぎなみでも今後こんご断熱だんねつ改修かいしゅうんでいく予定よていだそうです。

文部もんぶ科学かがくしょうも、2024ねん3がつ公開こうかいした『学校がっこう施設しせつのZEB手引てびき』において、『まずは断熱だんねつ改修かいしゅうから!』ということで、予防よぼう改修かいしゅう屋根やね断熱だんねつ緊急きんきゅうおこなうことを提言ていげんしています。日本にっぽんちゅう教室きょうしつ一刻いっこくはやく、すべて断熱だんねつ改修かいしゅうされることを期待きたいしています」

2025ねん4がつから「断熱だんねつ等級とうきゅう4」が義務ぎむしょうエネ性能せいのう表示ひょうじ制度せいどはじまる

建築けんちくぶつしょうエネほう改正かいせい正式せいしき名称めいしょうだつ炭素たんそ社会しゃかい実現じつげんするための建築けんちくぶつのエネルギー消費しょうひ性能せいのう向上こうじょうかんする法律ほうりつとう一部いちぶ改正かいせいする法律ほうりつ)をけ、2025ねん4がつ以降いこう着工ちゃっこうするすべての新築しんちく住宅じゅうたく住宅じゅうたくで「断熱だんねつ等級とうきゅう4」「いち消費しょうひエネルギー4」以上いじょうであることが義務ぎむされます。これに先駆さきがけて2024ねん4がつ開始かいしした建築けんちくぶつしょうエネ性能せいのう表示ひょうじ制度せいどは、新築しんちく住宅じゅうたく販売はんばい賃貸ちんたい住宅じゅうたく入居にゅうきょ募集ぼしゅう住宅じゅうたく性能せいのう明示めいじすることを販売はんばい賃貸ちんたいする事業じぎょうしゃ努力どりょく義務ぎむとしたもの。しょうエネ性能せいのうラベルに記載きさいされる住宅じゅうたく性能せいのうなかもっと重要じゅうようなのは、いえマークのかずあらわされている「断熱だんねつ性能せいのう」です。

まえさんは「住宅じゅうたくしょうエネ性能せいのう表示ひょうじがようやく開始かいしされたこと自体じたいいち前進ぜんしん」と評価ひょうかしながらも、「住宅じゅうたく商品しょうひんである以上いじょう性能せいのうがきちんと表示ひょうじされ、それをがわりるがわ確認かくにんをして購入こうにゅう賃借ちんしゃくするのはたりまえのこと。今回こんかいははじめのいちであり、今後こんご中古ちゅうこ住宅じゅうたくふくめて、住宅じゅうたく性能せいのうひとりるひとのすべてに提供ていきょうされていくことが肝心かんじんです」といます。

東京大学 工学系研究科 建築学専攻 准教授の前真之(まえ・まさゆき)さん。「Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室」を主宰し「みんなが快適で豊かに暮らせる住まいのあり方」を追究している(写真撮影/片山貴博)

東京大学とうきょうだいがく 工学こうがくけい研究けんきゅう 建築けんちくがく専攻せんこう じゅん教授きょうじゅぜん真之まさゆき(まえ・まさゆき)さん。「Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ」を主宰しゅさいし「みんなが快適かいてきゆたかにらせるまいのありかた」を追究ついきゅうしている(写真しゃしん撮影さつえい片山かたやま貴博たかひろ

2025ねんから義務ぎむされることがまっている「断熱だんねつ等級とうきゅう4」も、もはや十分じゅうぶん断熱だんねつ性能せいのうとはいえません。国土こくど交通省こうつうしょうは「住宅じゅうたく品質ひんしつ確保かくほ促進そくしんとうかんする法律ほうりつしなかくほう)」にもとづき、断熱だんねつ性能せいのうに1~7の等級とうきゅうをつけており、数字すうじおおきいほど断熱だんねつ性能せいのうたかいことをしめします。ところが、まえさんによれば「義務ぎむされる断熱だんねつ等級とうきゅう4は、世界せかい標準ひょうじゅんくらべるとひくすぎる」そう。

断熱だんねつ性能せいのうは、UA外皮がいひ平均へいきんねつ貫流かんりゅうりつ)で判断はんだんされます。これは外気がいきれる住宅じゅうたくかべ屋根やねまどなどから室内しつないねつがどれくらいそとげやすいかをあらわしたもので、数値すうちちいさいほど断熱だんねつ性能せいのうすぐれていることをしめします。地域ちいき気候きこうおうじて、断熱だんねつ等級とうきゅうごとにUA上限じょうげん基準きじゅん)がさだめられています。日本にっぽんで2025ねん義務ぎむされる断熱だんねつ等級とうきゅう4という基準きじゅんは、25ねんまえの1999ねん設定せっていされたものであり、おな程度ていどさむさのしょ外国がいこくのと比較ひかくしてもUAがはるかにおおきく、断熱だんねつ性能せいのう不足ふそくしています」(まえさん、以下いかどう

「断熱等級4」は1999年時点の他国の水準と比べても大きく劣る(画像提供/Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室、出典/国土交通省「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第三次報告案)及び建築基準制度のあり方(第四次報告案)について」)

断熱だんねつ等級とうきゅう4」は1999ねん時点じてん他国たこく水準すいじゅんくらべてもおおきくおとる(画像がぞう提供ていきょう/Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ出典しゅってん国土こくど交通こうつうしょう今後こんご住宅じゅうたく建築けんちくぶつしょうエネルギー対策たいさくのありかただいさん報告ほうこくあんおよ建築けんちく基準きじゅん制度せいどのありかただいよん報告ほうこくあん)について」)

日本にっぽん断熱だんねつ基準きじゅんにはあなも!? 断熱だんねつ性能せいのうはどうるといい?

さらにまえさんは適正てきせい基準きじゅんであるべき指標しひょうが「日本にっぽんでは住宅じゅうたくてるがわ達成たっせいしやすくするために、基準きじゅんがあえてゆるめられているのでは」と指摘してきします。

つぎ日本にっぽん住宅じゅうたく建材けんざい生産せいさんしゃ団体だんたい有志ゆうしが20ねんさき見据みすえてもうけた『HEAT20』という断熱だんねつ等級とうきゅう国交こっこうしょうさだめるさき断熱だんねつ等級とうきゅうとを比較ひかくしたものです。日本にっぽん断熱だんねつ等級とうきゅうは8つの地域ちいき区分くぶんおうじてかく等級とうきゅうごとのUA(※1)を設定せっていしています。上位じょうい断熱だんねつ等級とうきゅうである5~7はHEAT20(※2)のG1・G2・G3の指標しひょう参考さんこうさだめられたはずなのですが、なぜかHEAT20のUAくらべるとじゅん寒冷かんれいである4地域ちいき代表だいひょう都市とし秋田あきた)や5地域ちいき代表だいひょう都市とし仙台せんだい)のUAおおきい、断熱だんねつ性能せいのうおとるほうに緩和かんわされているのです。また、国交こっこうしょうが2030ねんまでに義務ぎむするとしている『ZEH水準すいじゅん」の等級とうきゅう5では、じゅん寒冷かんれいの4地域ちいき代表だいひょう都市とし秋田あきた)や5地域ちいき代表だいひょう都市とし仙台せんだい)が、温暖おんだんの6地域ちいき代表だいひょう都市とし東京とうきょう)や7地域ちいき代表だいひょう都市とし鹿児島かごしま)とおな基準きじゅんでよいとされています。本当ほんとうにこれでいいの?とうたがいたくなる基準きじゅんです」

※1:UA外皮がいひ平均へいきんねつ貫流かんりゅうりつ住宅じゅうたくねつ出入でいりのしやすさをあらわ
※2:HEAT20…「20ねんさき見据みすえた日本にっぽんこう断熱だんねつ住宅じゅうたく研究けんきゅうかい」のこと。住宅じゅうたく外皮がいひ水準すいじゅんのレベルべつにG1~G3と設定せっていし、提案ていあんしている

等級5では、準寒冷地である秋田や仙台などを代表とする地域が、東京や鹿児島と同じUA値になっている(画像提供/Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室)

等級とうきゅう5では、じゅん寒冷かんれいである秋田あきた仙台せんだいなどを代表だいひょうとする地域ちいきが、東京とうきょう鹿児島かごしまおなじUAになっている(画像がぞう提供ていきょう/Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ

このような基準きじゅんになっている背景はいけいについて、まえさんは「建設けんせつ会社かいしゃ全国ぜんこく建築けんちくぶつてるときに、建築けんちくぶつ着工ちゃっこうすうおお首都しゅとけんの6地域ちいき基準きじゅんせることで、じゅん寒冷かんれいである4地域ちいきや5地域ちいき建築けんちくぶつでもおな断熱だんねつ仕様しよう基準きじゅん達成たっせいできるようにしているのではないか」と疑念ぎねんけます。

さらにこのような基準きじゅん設定せってい違和感いわかんは、マンションの断熱だんねつ性能せいのう評価ひょうか方法ほうほう太陽光たいようこう発電はつでん搭載とうさいなど、さまざまなところでられ「国交こっこうしょうが2025ねんから義務ぎむする断熱だんねつ等級とうきゅう4、2030ねんまでに義務ぎむ予定よてい断熱だんねつ等級とうきゅう5をたすから、十分じゅうぶん住宅じゅうたく性能せいのうがある」とはいえないといます。
それでは、一般いっぱんひとしょうエネ性能せいのうラベルなどで判断はんだんするときにはなに基準きじゅん判断はんだんすればいいのでしょうか?

さきひょう断熱だんねつ等級とうきゅう4と5のUA比較ひかくしてるとかりますが、そのおおきくありません。実際じっさいんで体感たいかんできるほどの断熱だんねつ効果こうかかんじられ、だん冷房れいぼうのコストもおさえられるのは、HEAT20のG2相当そうとうである断熱だんねつ等級とうきゅう6以上いじょうだとかんがえています。もうちょっと断熱だんねつ頑張がんばると、温度おんど電気でんきだいのバランスが十分じゅうぶんくなります。こうした断熱だんねつ等級とうきゅう6+αあるふぁ断熱だんねつ国交こっこうしょう規定きていにはありませんが、断熱だんねつ等級とうきゅう6.5とかんだりしています。
温度おんど電気でんきだいのバランスをるには等級とうきゅう6以上いじょう必要ひつよう等級とうきゅう5はZEHレベルといえどもまだ十分じゅうぶんではなく、等級とうきゅう4ともなると23ねんまえ基準きじゅん不十分ふじゅうぶんといっていレベル、等級とうきゅう以下いかだと実質じっしつ無断むだんねつといっていいとおもいます。残念ざんねんながら日本にっぽん住宅じゅうたくストックのおおくはこうした実質じっしつ無断むだんねつのため、今後こんごはリフォーム断熱だんねつ改修かいしゅうおこなうことも重要じゅうようになります」

まえさんが注目ちゅうもくする、全国ぜんこく断熱だんねつ

住宅じゅうたく性能せいのうたかめるためには、くに、さらには自治体じちたい努力どりょく不可欠ふかけつです。住宅じゅうたく性能せいのう向上こうじょうかんする施策しさくで、とくにすすんでいるのは鳥取とっとりけんです。いま欧米おうべい基準きじゅんくらべても遜色そんしょくのない住宅じゅうたく性能せいのう評価ひょうか基準きじゅんとして、新築しんちくでは『NE-ST(ネスト、とっとり健康けんこうしょうエネ住宅じゅうたく)』、既存きそん改修かいしゅうでは『Re NE-ST(リネスト、とっとり健康けんこうしょうエネ改修かいしゅう住宅じゅうたく)』をもうけ、断熱だんねつはもちろん、気密きみつ性能せいのうについても基準きじゅんもうけています。県内けんない生産せいさんされた建材けんざい使つかうことを条件じょうけんに、新築しんちく住宅じゅうたく性能せいのうおうじた補助ほじょきんして導入どうにゅう促進そくしん。また、中古ちゅうこ住宅じゅうたくたいしても『T-HAS(ティーハス、とっとり住宅じゅうたく評価ひょうかシステム)』という独自どくじ住宅じゅうたく性能せいのう査定さていエンジンをつくり、中古ちゅうこ住宅じゅうたく性能せいのうやリフォームの状況じょうきょう適正てきせい評価ひょうかできるようにしました。この仕組しくみによってたか評価ひょうかけた住宅じゅうたくは、中古ちゅうこ住宅じゅうたくとして売買ばいばいするさいもその価値かちおうじた銀行ぎんこう融資ゆうし可能かのうになるはずです」

鳥取県では独自に「とっとり健康省エネ住宅性能基準」を設け、基準を満たす新築住宅に補助金を出すなどしている(画像提供/Maelab前真之サスティナブル建築デザイン研究室、出典/鳥取県)

鳥取とっとりけんでは独自どくじに「とっとり健康けんこうしょうエネ住宅じゅうたく性能せいのう基準きじゅん」をもうけ、基準きじゅんたす新築しんちく住宅じゅうたく補助ほじょきんすなどしている(画像がぞう提供ていきょう/Maelabぜん真之まさゆきサスティナブル建築けんちくデザイン研究けんきゅうしつ出典しゅってん鳥取とっとりけん

には山形やまがたけんでも「やまがたしょうエネ健康けんこう住宅じゅうたく」として独自どくじ認証にんしょうする仕組しくみがあるほか、長野ながのけん類似るいじ制度せいど導入どうにゅうしようとしているようです。また、断熱だんねつへのみは自治体じちたいだけではありません。地域ちいきでがんばっている、いえつくしゅがたくさんいるのです。

近年きんねんちいさな工務こうむてんなどでも『基本きほんてき住宅じゅうたく性能せいのうたすいえてることが、ひと快適かいてき健康けんこう生活せいかつにつながる』とかんがえて、懸命けんめい断熱だんねつんでいる会社かいしゃ全国ぜんこくにたくさんあります。ぜひそのような物件ぶっけん会社かいしゃ注目ちゅうもくしてほしいですね」

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これからも快適かいてきつづけるために、わたしたちがかんがえたいこと

最後さいごまえさんに、これからわたしたちがまいのしょうエネや断熱だんねつをどのようにかんがえていくかべきかについてメッセージをもらいました。

近年きんねん、デザインせいたかいものや3Dプリンターを使つかった技術ぎじゅつなど、建築けんちく手法しゅほうったものなどさまざまな建築けんちく話題わだいにのぼりますが、わたし本来ほんらい建築けんちく手段しゅだんであり、目的もくてきそのものではない。建築けんちくは『うつわ』であり、そのなかいとなまれるひとびとの生活せいかつがメインのコンテンツだとかんがえています。なので、なからすひとしあわせにすることこそが、建築けんちくだいいち使命しめいのはずです。ひとしあわせにするためには、当然とうぜん快適かいてき安心あんしん安全あんぜんいえでなければなりません。さむい、あつい、電気でんきだいたかいなどといった問題もんだいは、いま設計せっけい技術ぎじゅつによって容易ようい解決かいけつできるわけですから、早急そうきゅう解決かいけつしなければならない問題もんだいです。いま日本にっぽんひく住宅じゅうたく性能せいのう基準きじゅんわせて住宅じゅうたくをつくっていては、到底とうていすうじゅうねん将来しょうらい評価ひょうかされる、つまり資産しさんとしても価値かちのあるいえにはなりません。

断熱だんねつ効果こうか一度いちど体験たいけんしてみればまった快適かいてきせいことなることをかんじていただけるものです。最近さいきんではいろいろなところで、断熱だんねつワークショップやオープンハウス、宿泊しゅくはく体験たいけんなどをやっているのをるようになりました。にされる機会きかいがあればぜひ実体験じつたいけんをしてその効果こうかと『らしがわる』可能かのうせい実感じっかんしてほしいとおもいます」

「断熱の効果は体験してみないとわからないが、一度体験すると断熱なしの生活には戻れない」と言う前さん(写真撮影/片山貴博)

断熱だんねつ効果こうか体験たいけんしてみないとわからないが、一度いちど体験たいけんすると断熱だんねつなしの生活せいかつにはもどれない」とまえさん(写真しゃしん撮影さつえい片山かたやま貴博たかひろ

工学部の建物の屋上には、断熱効果を実験するためのハウスを設置。土台が回転するようになっており、あらゆる方角に窓の向きを変えることで日照条件を変更しながら日射取得や暖冷房熱負荷などの測定ができる(写真撮影/片山貴博)

工学部こうがくぶ建物たてもの屋上おくじょうには、断熱だんねつ効果こうか実験じっけんするためのハウスを設置せっち土台どだい回転かいてんするようになっており、あらゆる方角ほうがくまどきをえることで日照ひでり条件じょうけん変更へんこうしながら日射にっしゃ取得しゅとくだん冷房れいぼうねつ負荷ふかなどの測定そくていができる(写真しゃしん撮影さつえい片山かたやま貴博たかひろ

まえさんは「1かい施工しこうすれば効果こうかすうじゅうねんというながいスパンでつづくのが、建築けんちくいところ」だといます。さらに「2100ねんらすひとから『てておいてくれて、ありがとう』とってもらえる住宅じゅうたくやしていきたいとおもいませんか?」とげかけます。

日々ひび自分じぶん家族かぞく生活せいかつ快適かいてき安心あんしんなものにするために、そして日本にっぽん住環境じゅうかんきょう全体ぜんたいをよりいものにしていくためにも、断熱だんねつ興味きょうみをもち、そのさを実感じっかんする機会きかい積極せっきょくてきさがしてみることが「しあわせならし」への第一歩だいいっぽになるかもしれません。

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連載れんさい 断熱だんねつしん時代じだい 住宅じゅうたく性能せいのうなかでも、おおきく関心かんしんたかまっているのが「断熱だんねつ性能せいのう」。技術ぎじゅつ進化しんかによりエコ貢献こうけんがアップデートされ、健康けんこうごすために必要ひつようという認識にんしきたかまりました。断熱だんねつ重要じゅうようし、れるうごきがいま加速かそくしています。
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