住まいは生活の場所そのものですから、つねに快適で居心地がよく、本当にくつろげ、安らぎのある空間でありたいものです。また、家族の団らんやコミュニケーシヨンがはずむ場所であってほしいとだれでも思うものです。住まいの広さや間取り、また持ち家、賃貸にかぎらず共通のものではないでしようか。そうした思いを実現できるかが住まいの値打ちを決めると言えますが、住居設備が整っていて、機能性が高いだけでは本当の快適な暮らしは望めません。それぞれの家庭に合った住まい方と住居が調和して初めて快適さがもたらされるのです。
手入れで住まいを長持ちさせる秘訣
新たに住宅を購入した場合などは、いつまでもその新鮮さと美しさを保ちたいと、最初の頃こそ住まいの手入れや掃除をしっかりするものですが、だんだん年数が経ってくると、つい忙しさにかまけて掃除の回数も減りがちになります。
しかし、手入れや掃除がおろそかになると、室内や外まわりに汚れが目立つようになり、不都合の生じる所も出がちになります。一般的には住まいをメンテナンスしなかった場合、5年くらいで建具や門扉が傷んだり、排水管の具合が悪くなるといつた症状が出たりします。ところが、普段からこまめに手入れしている住まいは、傷みも少なく耐用年数もずっと長くなります。
耐用年数は木造30年程度、鉄筋コンクリート造60年程度と言われていますが、手入れや掃除をよくすれば最低でも2倍くらい寿命を延ばすことができます。「住宅は生き物」と言われるように、手入れや掃除によって住まいの寿命は長くも短くもなり、住む人の愛情が住まいを元気にさせるとも言えるのです。
普段の掃除が第一歩
では、住まいを長持ちさせるために、具体的にどんな手入れや掃除をすればよいのでしようか。手入れや掃除というと、メンテナンス(=維持管理)ということから補修、修繕を真っ先に思い浮かべると思いますが、手入れや掃除で一番大事なのは普段の掃除なのです。
というのも住宅の老化や傷みは、汚れや湿気が原因になることが多く、普段の掃除をしているかいないかでは、汚れ具合が全然違ってくるからです。また、木材は停滞した空気の中では老化が激しく、動く空気の中で長持ちするとも言われます。
普段からしっかり掃除しておくことは、住まいの長持ちにつながるのです。それに、いつも掃除していればどこに傷みが出てきたかもすぐにわかり、早めの対応もできます。そして何よりも、快適な暮らしの条件のひとつは、室内が美しく輝いていることでしょう。
定期的なメンテナンスも必要
しかし、こまめに掃除していても、長い間には素材そのものが劣化することは避けられません。また住まいのすべてをいつもフォローしておくことは不可能です。そこで劣化を進ませなないためには、普段の掃除に加えて、定期的に住まいを点検し、補修、修繕することが大切です。
たとえば、いつも目配りできる部分であるキッチンやトイレ、浴室の水漏れ、パイプの詰まりなどは月に1度は点検したいものです。屋根や外壁など外まわりは3か月に1度、住まいのまわりをぐるっと回って、モルタル壁のひび割れや剥がれ、雨樋の詰まりなどを点検しましょう。大がかりな工事や複雑な作業は専門家に依頼するとしても、ちょっとした日常のメンテナンスを自分の手でするように習慣づけることは、住まいの寿命を延ばすうえで大切であると同時に、わが家に対する愛着も大きくなってきます。もちろん、床にワックスがけをしたり、 ドアや塀の塗装を塗りかえることは、素材を保護して長持ちさせるとともに、住まいの美観を保つ重要な手入れのひとつです。
楽しみながらお手入れをしましょう
ホテルや旅館に行って、部屋の中の掃除が行き届いていると、精神的にもゆったりし、体ものびのびしてくるものです。それをに対して、なんとなく薄汚く電気も暗い感じだと、それまでの旅の疲れがドッと出て、沈んだ気分になってしまいます。いつも暮らしている住まいも同じで、手入れや掃除が行き届いていると、精神的にも肉体的にも心地いいものです。
ところが困ったことに、ホテルや旅館は誰かが掃除してくれるのに対して、自分の住まいは自分たちで掃除しなければならない所が大違いです。快適で長持ちする住まいであるためには、普段からの掃除が何よりも大切とは言うものの、普段はゆっくり掃除をしている余裕がないというのが本音かもしれません。
発想の転換で掃除を前向きに考える
たしかに毎日の生活では食事の支度から後片付け、洗濯などの家事労働に加えて、掃除機がけや雑巾がけが重なると、専業主婦でもかなりの時間が割かれてしまいます。まして仕事やパートで外に出ている人は、朝の5分は貴重な時間です。かといって夜やろうと思っても…。
そんなことから、部屋の掃除は後回しになってしまいがちですが、時間のない人でも掃除をしっかりしている人はたくさんいます。その人は「汚れが気になるから」「キレイにしたいから」と答えるかもしれません。掃除が苦にならない人は、性格もあるでしょうが、「キレイにしてもっと快適に過ごしたいから」という気持ちが強い人でもあります。
もし、あなたが掃除を苦になると思っていたら、「面倒」「義務感」という意識を捨てて、「快適な空間を創造する」という意識に発想を転換してみたらどうでしょうか。見方を変えると、いままでいやだと思っていた掃除も楽しくなるものです。
また、掃除や手入れは主婦がやるものという発想もこの際転換しましょう。夫婦と子供さんの核家族の家庭では、夫や子供さんは貴重な戦力ですし、主婦である自分の負担が少なくなれば掃除の重圧からも解放されるでしよう。それに夫や子供さんが掃除の楽しさを発見してくれることもあります。
掃除や手入れを積極的に楽しむ
快適な空間を創造するということは、新しい何かをするための空間を創り出すということです。むずかしく考える必要はありません。たとえば、リビングでの家族の語らいを想像してみましょう。もし、テーブルに食事のあとの食べカスが残り、インテリアにはホコリがうっすら、カーテンが薄汚れて色あせていたら…。そうではなくて、キレイに拭かれ塵ひとつないテーブル、素敵なインテリア、落ち着いた色のカーテン、そんなシチュエーションなら会話もはずみます。その光景を想像すると、きっと積極的に手足が動くに違いありません。
トイレや浴室も同じです。後始末と考えるのではなく、次に快適に使うために手入れしておくというふうに思うと、ヤル気が出て段取りも自然に決まるものです。
床のワックスがけや、換気扇の汚れ落としは、大変な反面、やり終わったあとの気分はスツキリして爽快です。これらの作業は夫に頼んでやってもらいましょう。DIYでイスを作ったら、それが面白くて趣味にしている人はかなりいます。壁の破れなどちょっとした修繕にも直す喜びがあります。
手入れに完全さを求めない
掃除を楽しんでするようになると、あれもキレイにしよう、ここも手入れしようという気になり、自然と室内はピカピカになってくるものです。それは非常によいことで、それが住まいの快適さと長持ちにつながることは言うまでもありません。でも、時間のないときは、思っていても実行できないこともあります。
あまり神経質になりすぎると、また重圧感を背負うことになりかねません。完全さを求めないことも心得ておきましよう。