むすびこぶ

(むかしむかし、ひとりのむすめがいました。)

むかしむかし、一人ひとりの娘むすめがいました。

(このむすめはとてもびじんですが、たいへんななまけもので、だらしのないおんなでした。)

この娘むすめはとても美人びじんですが、大変たいへんななまけ者もので、だらしのない女おんなでした。

(いとをつむぐときにあさのなかにちいさいむすびこぶでもあると、)

糸いとをつむぐ時ときにアサの中なかに小ちいさいむすびこぶでもあると、

(もういやになってしまって、)

もういやになってしまって、

(そのもつれたたまぜんたいをひきちぎって、わきにほうりだしてしまうのです。)

そのもつれた玉たまぜんたいを引ひきちぎって、わきに放ほうり出だしてしまうのです。

(ところが、そこのいえにひとりのはたらきもののじょちゅうがいて、)

ところが、そこの家いえに一人ひとりの働はたらき者ものの女中じょちゅうがいて、

(むすめがすてたあさくずをひろいあつめると、)

娘むすめが捨すてたアサくずを拾ひろい集あつめると、

(それをあらってじょうずにつむいで、)

それを洗あらって上手じょうずにつむいで、

(きれいなきものにおってもらいました。)

きれいな着物きものにおってもらいました。

(さて、あるわかいおとこのひとがそのなまけもののむすめをおよめさんにほしいといって、)

さて、ある若わかい男おとこの人ひとがそのなまけ者ものの娘むすめをお嫁よめさんにほしいといって、

(いよいよけっこんしきをあげることになりました。)

いよいよ結婚式けっこんしきをあげることになりました。

(そのまえいわいのばんに、はたらきもののじょちゅうさんがきれいなきものをきて)

その前祝まえいわいの晩ばんに、働はたらき者ものの女中じょちゅうさんがきれいな着物きものを着きて

(たのしそうにおどっていますと、はなよめがいいました。)

楽たのしそうにおどっていますと、花嫁はなよめが言いいました。

(「あのじょちゅう、あたしのいとくずのきものをきているのよ」)

「あの女中じょちゅう、あたしの糸いとくずの着物きものを着きているのよ」

(それをきいたおむこさんが、)

それを聞きいたおむこさんが、

(「それは、どういういみだね？」)

「それは、どういう意味いみだね？」

(と、はなよめさんにたずねました。)

と、花嫁はなよめさんに尋たずねました。

(そこでおよめさんは、)

そこでお嫁よめさんは、

(「あのじょちゅうは、わたしがすてたあさくずでおったきものをきているのです」)

「あの女中じょちゅうは、わたしが捨すてたアサくずでおった着物きものを着きているのです」

(と、せつめいしたのです。)

と、説明せつめいしたのです。