解説かいせつ

インフラが増加ぞうか–急激きゅうげきな商業しょうぎょう化かで見みえてくる地産ちさん地ち消けし型がた「宇宙うちゅう経済けいざい」という未来みらい

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　細こまかいことを抜ぬきに説明せつめいすれば、インフラとは社会しゃかいを動うごかすために使つかう一連いちれんの道具どうぐ、と言いえる。インフラを構成こうせいする道具どうぐの種類しゅるいが増ふえるにつれ、地球ちきゅうの外そとで動うごくものも増ふえてきた。宇宙うちゅうで運用うんようされる、この種たねのインフラのおかげで、通信つうしんや環境かんきょう観測かんそくの性能せいのうが向上こうじょうし、ナビゲーションに頼たよって移動いどうできるようになった。

　人類じんるいが宇宙うちゅうへ進出しんしゅつしてから、まだ日ひは浅あさい。しかし、ここ最近さいきんの宇宙うちゅうインフラに対たいする取とり組くみはとても積極せっきょく的てきで、測位そくいや通信つうしん、気象きしょう監視かんし、災害さいがい監かん視しなどあらゆるものが対象たいしょうだ。

そもそも何なん機きの衛星えいせいが飛とんでいるの？

　国際こくさい連合れんごう（国連こくれん）宇宙うちゅう局きょく（United Nations Office for Outer Space Affairs：UNOOSA）によると、2021年ねんの1年間ねんかんだけで1674個この物体ぶったいが打うち上あげられたそうだ。この数字すうじは、地球ちきゅうの周回しゅうかい軌道きどうに乗のらなかったものを勘定かんじょうに入いれていない。

　打うち上あげられる物体ぶったいの数かずは、間違まちがいなく急増きゅうぞうしてきている。2000年ねんから2009年ねんにかけては年とし平均へいきん98個こ、という国連こくれんのデータがある。2010年ねんから2019年ねんは2倍ばい以上いじょうに増ふえ、年とし平均へいきん243個こになった。その後ごも急増きゅうぞうは続つづき、直近ちょっきんの2年間ねんかんだと、2020年ねんは1273個こ、2021年ねんは1800個こ以上いじょうという具合ぐあいだ。

急激きゅうげきに進すすむ商業しょうぎょう化か

　世界せかい経済けいざいフォーラムの調査ちょうさでは、現在げんざい運用うんようされている米国べいこくと関係かんけいする衛星えいせいの54％以上いじょうが民間みんかん用途ようとだという。

　「宇宙うちゅう分野ぶんやが商業しょうぎょう化かしたことで、宇宙うちゅうに関かんする活動かつどうの成長せいちょうカーブが変化へんかしました。長ながい間あいだ、国家こっかのものだった宇宙うちゅうに、商用しょうよう宇宙うちゅう旅行りょこうサービスや衛星えいせいコンステレーション、宇宙うちゅうステーションの建設けんせつ、月つきや火星かせいを目指めざす計画けいかくを手てがける民間みんかん企業きぎょうが進出しんしゅつしています。これほど急きゅうに変化へんかすると予想よそうした人ひとは多おおくありません。打うち上あげ施設しせつ建設けんせつに対たいする民間みんかん投資とうしの意欲いよくは強つよく、人類じんるいの宇宙うちゅう活動かつどう能力のうりょくを高たかめ続つづけるでしょう。同時どうじに、宇宙うちゅうをどのように管理かんりしていくか、きちんと検討けんとうする必要ひつようが生しょうじます」（米国べいこく電気でんき電子でんし学会がっかい＝IEEE上級じょうきゅう会員かいいんのPaul Kostek氏し）

　数すう万まん機きの衛星えいせいをインターネット接続せつぞくや観測かんそく、通信つうしんサービスといった目的もくてきで地球ちきゅう低てい軌道きどう（LEO）へ投入とうにゅうしようとしている民間みんかん企業きぎょうが、複数ふくすう存在そんざいする。そのため、各国かっこく政府せいふ間あいだの協調きょうちょうを強化きょうかしていかなければならない。さらに、現在げんざい唯一ゆいいつの宇宙うちゅう利用りように関かんする国際こくさい的てきな合意ごうい事項じこうである、国連こくれん宇宙うちゅう条約じょうやくの改正かいせいも必要ひつようだ。

　「人工じんこう衛星えいせいは、衛星えいせい同士どうしで衝突しょうとつしないよう監視かんししなければなりません。最近さいきんも、ある国くにが組くみ立たてている宇宙うちゅうステーションに衛星えいせいコンステレーションの衛星えいせい2機きが接近せっきんしたせいで、衝突しょうとつ回避かいひ行動こうどうを強しいられました」（Kostek氏し）

　宇宙うちゅうを利用りようしたサービスで最もっとも知しられているのは、スマートフォンで居場所いばしょを確認かくにんしたりナビゲーションしたりするための全ぜん球たま測位そくい衛星えいせいシステム（Global Navigation Satellite System：GNSS）だろう。

　主要しゅようなGNSSは5種類しゅるいあり、米国べいこくが「Global Positioning System（GPS）」、中国ちゅうごくが「北斗ほくと（BeiDou）」、ロシアが「Global Navigation Satellite System（GLONASS）」、欧州おうしゅう連合れんごう（EU）が「Galileo」を運用うんようしている（編集へんしゅう部ぶ注ちゅう：日本にっぽんには準じゅん天頂てんちょう衛星えいせいシステム＝Quasi-Zenith Satellite System：QZSS「みちびき」がある）。

　この中なかではGPSの規模きぼが最大さいだいで、運用うんよう開始かいしは30年ねんほど前まえだ。いずれのシステムも、衛星えいせいに加くわえ、宇宙うちゅうや地上ちじょうのシステムを多数たすう組くみ合あわせて精度せいどを高たかめている。

　つまり、GNSSにとても依存いぞんして生活せいかつしているが、それは宇宙うちゅうインフラのほんの一部いちぶにすぎない。

新あらたに登場とうじょうする宇宙うちゅう関連かんれんの製品せいひんやサービス

　GNSS以外いがいの技術ぎじゅつも登場とうじょうしてきた。

　世界せかい各地かくちの企業きぎょうが、インターネット接続せつぞくサービスや5Gなどの通信つうしんサービスを提供ていきょうする衛星えいせいコンステレーションを構築こうちくしようと、しのぎを削けずっている。

　衛星えいせいの運用うんようには、莫大ばくだいな経費けいひがかかるものだった。それが、衛星えいせい製造せいぞうに3Dプリンターを使つかうという地上ちじょうでの工夫くふうにより、コストを数すう分ぶんの1に下さげられた。宇宙うちゅうでの工夫くふうには、新あらたな通信つうしん用ようコンステレーションを構築こうちくする際さいに、各かく衛星えいせいを軌道きどう上じょうのしかるべき位置いちへ動うごかすために使つかう、新型しんがたの自動じどう化か「宇宙うちゅうタグボート」がある。

　「今いままで商業しょうぎょう宇宙うちゅう活動かつどうによる収益しゅうえきのほとんどは、宇宙うちゅうで作つくられ地球ちきゅうで利用りようされる製品せいひんやサービスから得えられていました。そのようなものには、衛星えいせい通信つうしんやインターネットインフラ、ジオリファレンスサービス、衛星えいせい打うち上あげサービスがあります。ただし、数すう年ねん後ごには、製品せいひんやサービスを地球ちきゅう外がいで地産ちさん地ち消けしする新あたらしい宇宙うちゅう経済けいざいが開花かいかしそうです。たとえば、宇宙うちゅう旅行りょこう、月つきでの採鉱さいこう、新しん素材そざいの開発かいはつ、長期ちょうき居住きょじゅう施設しせつの建設けんせつ、各種かくしゅ支援しえんサービス、無む重量じゅうりょう環境かんきょうで使つかうための消耗しょうもう品ひんが考かんがえられます」（IEEE終身しゅうしん上級じょうきゅう会員かいいんのRaul Colcher氏し）