特集とくしゅう

人工じんこう衛星えいせいの開発かいはつや運用うんようが根底こんていから覆くつがえる–「軌道きどう上じょうサービス」に注目ちゅうもくすべき理由りゆう

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宇宙うちゅうで人工じんこう衛星えいせいの燃料ねんりょう補給ほきゅうに成功せいこう–軌道きどう上じょうサービスとは

　まだ使つかえるにもかかわらず引退いんたいを余儀よぎなくされた人工じんこう衛星えいせいに、第だい二にの活躍かつやくの場ばを与あたえる「中古ちゅうこ衛星えいせい市場いちば」について先日せんじつ、記事きじを掲載けいさいした。

　「中古ちゅうこ衛星えいせい」を買かおうかと迷まよった場合ばあい、気きになるのが衛星えいせいの状態じょうたいだ。あとどのくらい使つかえるのか、そもそも健全けんぜんに動うごくのか。宇宙うちゅうにあるからもちろん衛星えいせいを触さわることはできないが、中古ちゅうこ車しゃや中古ちゅうこ航空機こうくうきを選えらぶときのように、機体きたいをぐるりと見みて回まわって自分じぶんの眼めで確認かくにんできたら…。スペースデブリ（宇宙うちゅうゴミ）がぶつかって傷きずやガス漏もれしているところがないか、温度おんどが異常いじょうに高たかいところや低ひくいところがないか。データ上じょうは問題もんだいなくても、外観がいかんを見みてわかることがあるかもしれない。そういった点検てんけんを行おこなう人工じんこう衛星えいせいのニーズが出でてくるだろう。

　点検てんけんの結果けっか、「燃料ねんりょうが残のこり少すくない」とわかれば燃料ねんりょうを補給ほきゅうするサービスが出でてくるはずだ。また通信つうしん衛星えいせいの場合ばあい、機器ききを4G対応たいおうから5G対応たいおうにアップデートできれば中古ちゅうこ衛星えいせいの価値かちは上あがるだろう。

　「宇宙うちゅうで中古ちゅうこ衛星えいせいの点検てんけん、燃料ねんりょう補給ほきゅう、機器きき交換こうかんなどを行おこなう『軌道きどう上じょうサービス』と呼よばれる分野ぶんやが新あらたな市場いちばとして出でてくるのではないか」。そう語かたるのは事業じぎょう開発かいはつグループ J-SPARCプロデューサーの上野うえの浩史こうじ氏しだ。

　人工じんこう衛星えいせいは一度いちど打うち上あげたら修理しゅうりはできない。それが宇宙うちゅう業界ぎょうかいの常識じょうしきだった。燃料ねんりょうがなくなったら給油きゅうゆするとか機器ききを取とり換かえるなんて、夢ゆめのような話はなしにも聞きこえるが、世界せかいではそんな動うごきが既すでに始はじまっている。

　たとえばNorthrop Grummanの子会社こがいしゃSpaceLogisticsが開発かいはつした人工じんこう衛星えいせい「Mission Robotic Vehicle（MEV）-1」は2020年ねん2月がつ、通信つうしん衛星えいせい「Intelsat 901」にドッキング（2機きの商業しょうぎょう衛星えいせいの軌道きどう上じょうドッキングは世界せかい初はつ）。Intelsat 901は2001年ねんに打うち上あげられた衛星えいせいで、通信つうしん放送ほうそうを行おこなう機器ききには問題もんだいないものの、軌道きどうを維持いじするための燃料ねんりょうが不足ふそくしていた。

　そこでエンジン類るいを搭載とうさいしたMEV-1がドッキングすることで軌道きどう維持いじの役割やくわりを担にない、2025年ねんまで5年間ねんかん、Intelsat 901の寿命じゅみょうが延長えんちょうされることになった。その後ご、MEV-1はIntelsat 901を離はなれ、別べつの衛星えいせいに同様どうようのサービスを実施じっしすることが可能かのうだという。

　2021年ねん4月がつにはMEV-2が別べつのIntelsatにドッキング。2004年ねんに打うち上あげられた同どう衛星えいせいは約やく5年間ねんかんの運用うんよう期間きかん延長えんちょう予定よていだ。通信つうしん衛星えいせいの寿命じゅみょうは約やく15年ねんとも言いわれるが、20年ねん以上いじょうにわたる長寿ちょうじゅ命いのち衛星えいせいが実現じつげんすることになる。

　「ただし、このサービスは事業じぎょう性せいという観点かんてんではあまり魅力みりょく的てきではない」。上野うえの氏しはそう指摘してきする。

　「MEV-1、2が軌道きどう維持いじを担になうには5年間ねんかんずっとドッキングした状態じょうたいを保持ほじしていなければならない。仮かりにMEVの寿命じゅみょうが15年間ねんかんとすると最大さいだいで3機きしかサービスできない。そんなにいいタイミングで別べつの衛星えいせいにサービスできるのか。1機きの衛星えいせいに対たいして1機きがサービスするなら、新あたらしい衛星えいせいを打うち上あげた方ほうがコストや機能きのう面めんを考かんがえると利点りてんが多おおい」（上野うえの氏し、以下いか同おなじ）。人工じんこう衛星えいせいの寿命じゅみょうを延長えんちょうできることは技術ぎじゅつ的てきには画期的かっきてきだが、事業じぎょうとして行おこなう段階だんかいにはまだいっていないという。