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インターステラ、小型ロケット「ZERO」のエンジン燃焼器単体試験に成功
2023.12.08 10:09
飯塚直
インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は12月7日、小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」のエンジン「COSMOS」の燃焼器単体試験に成功したと発表した。
北海道大樹町の商業宇宙港「北海道スペースポート」(HOkkaido SpacePOrt:HOSPO)内の射場「Launch Complex-0」(LC-0)で試験した。今回の試験では、家畜のふん尿から製造した液化バイオメタン(Liquid Biomethane:LBM)を燃料として使用。十分な性能を有していることも確認した。
バイオメタン活用を発表しているのは、欧州宇宙機関(ESA)が開発しているロケットエンジン「Prometheus」に続き世界2例目。民間ロケット会社としては初になるという。
液化メタンは価格、燃料としての性能、扱いやすさ、入手性、環境性などで総合的に優れており、Space Exploration Technologies(SpaceX)の巨大ロケット「Starship」をはじめ欧米や中国のロケット各社で開発に注力していると説明。ロケット燃料には不純物を含まない高純度メタンが必要なことからインターステラは燃料に液化メタンを選定した2020年以来、その調達方法を検討してきた。
エア・ウォーター北海道(札幌市中央区)は北海道の十勝エリアを中心に、家畜ふん尿から発生するバイオガスを液化天然ガス(LNG)の代替燃料となるLBMに加工し、域内で消費する地域循環型のサプライチェーン構築に取り組んできた。2022年10月には、帯広市にLBMの製造工場を国内で初めて稼働させ、実証を進めている。
今回の試験で使用するLBMは、バイオガスの主成分であるメタンを分離、精製し、約マイナス160度で液化したもので、従来ロケット燃料に使用されるLNG由来の液化メタンと同等の純度(99%以上)という。インターステラはその性能に加えて、同じ十勝エリアにある工場から入手できるという調達性などを総合的に勘案し、ZEROの燃料として採用することに決めた。
インターステラによると、ZEROの燃焼器はすべて自社設計。SpaceXのエンジンでも使われているピントル型インジェクターを採用している。
ピントル型は一般的に十分な性能が出にくいといわれているが、東京大学との共同研究に加えて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新事業創出プログラム「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)での共創活動などを通じて、設計上の工夫でデメリットを克服、高い燃焼効率を達成しているという。
こうしたことから、部品点数を従来型エンジンの数十分の1に削減し、全体の製造コストの半分を占めるといわれるロケットエンジンを低コスト化できるとしている。
今回の燃焼器は、60kN級のサブスケールモデルでの試験となり、この設計から製造、試験の過程で得られた知見をもとに130kN級の実機モデルを開発、製造していくという。
ZEROは、推進剤として燃料にLBM、酸化剤に液体酸素を使用する液体ロケット。エンジンは、ガスジェネレーターで発生させたガスの力でターボポンプを駆動し、タービンを1分間に数万回転と高速回転させることで燃焼器に推進剤を高圧で送り込むガスジェネレーターサイクルを採用している。燃焼器を冷やすこともできる再生冷却方式も取り入れた。
これまでに燃焼器、ターボポンプ、ガスジェネレーターそれぞれを試験しており、今後はそれらを組み合わせたエンジン統合試験へと進む予定。
エンジン名のCOSMOSは、秋桜が北海道大樹町の花であること、エンジンの特徴であるピントル型インジェクターの噴射形状が秋桜の花びらに似ていることから、開発部メンバーを中心に選定したという。
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インターステラプレスリリース