シネマ報知 | ブルーリボン賞ヒストリー

ブルーリボン賞しょうヒストリー

桃井ももいかおり初はつの主演しゅえん女優じょゆう賞しょうに「これが欲ほしかったのよね」

第だい22回かい（1980年ねん2月がつ14日にち）＠イイノホール（東京とうきょう・内幸町うちさいわいちょう）

　「もう頬ほおづえはつかない」が桃井ももいかおりに人生じんせい初はつの主演しゅえん女優じょゆう賞しょうをもたらした。

　「これが欲ほしかったのよね、スゴクうれしかったわけ」授賞じゅしょう式しきでも“桃井ももい節たかし”は全開ぜんかい。ブルーリボン賞しょうはほか2作品さくひんも対象たいしょうになったが、「やっぱり『もう頬ほおづえ』が印象いんしょうに残のこってる。当あたりそうもない映画えいがなのに客きゃくが入はいってるのよね。これがうれしくて。あたし、V2なんてしたいな」会場かいじょうをどっとわかせるトークは、20代だいにして既すでにベテランの域いきに達たっしていた。

　残念ざんねんながら連覇れんぱはならなかったが、桃井ももいはその後ご、第だい31回かい、第だい40回かいで主演しゅえん女優じょゆう賞しょうを獲得かくとく。3度どの主演しゅえん賞しょう、それも20代だい、30代だい、40代だいの各かく年代ねんだいで受賞じゅしょうしたのは桃井ももいだけの勲章くんしょうだ。そして50代だいでは監督かんとく業ぎょうにも挑戦ちょうせん。06年ねんの初はつメガホン作さく「無花果いちじくの顔かお」が07年ねんの第だい57回かいベルリン国際こくさい映画えいが祭さいで最優秀さいゆうしゅうアジア映画えいが賞しょう、第だい5回かいウラジオストク国際こくさい映画えいが祭さいで最優秀さいゆうしゅう作品さくひん賞しょうを受賞じゅしょうし、監督かんとくとしても非凡ひぼんなところを見みせた。

　今村いまむら昌平しょうへい監督かんとくが9年ねんぶりにメガホンを執とった「復讐ふくしゅうするは我がにあり」は作品さくひん、監督かんとくと助演じょえん男女だんじょ優ゆうの4部門ぶもんを独占どくせんした。今村いまむら監督かんとくは75年ねんに横浜よこはま放送ほうそう映画えいが専門せんもん学院がくいん（現在げんざいの日本にっぽん映画えいが学校がっこう）を設立せつりつ。後進こうしんの指導しどうに当あたっていたが、「学院がくいんへの受験生じゅけんせいが俺おれの映画えいがを見みたことがないという。俺おれがいかに試行しこう錯誤さくごして苦くるしむか、一度いちど身近みぢかに見みせてやろう」と再ふたたび映画えいが界かいに戻もどってきた。

　直木賞なおきしょうを取とった佐さ木き隆三りゅうぞう氏しの原作げんさくをめぐっては、今村いまむら監督かんとくのほか黒木くろき和雄かずお、藤田ふじた敏さとし八はち、深作ふかさく欣二きんじの3監督かんとくが映画えいが化か権けんを争あらそい、一時いちじは黒木くろき監督かんとくと原田はらだ芳雄よしお主演しゅえんのコンビも有力ゆうりょくだった。最終さいしゅう的てきには今村いまむら監督かんとくが緒形おがた拳けんの主演しゅえんで作品さくひん化か。08年ねんに肝かんがんのため急逝きゅうせいした緒形おがたにとって、真まっ先さきに代表だいひょう作さくにあげられる作品さくひんになった。

　同どう作さくで助演じょえん男優だんゆう賞しょうの三さん國連こくれん太郎たろうは、第だい2回かいで新人しんじん賞しょう、第だい11回かいには主演しゅえん男優だんゆう賞しょうを受賞じゅしょうしており、主演しゅえん・助演じょえん・新人しんじんの3部門ぶもんを制せいした初はじめての俳優はいゆうに。「何なん十じゅう年ねんも役者やくしゃをやっていると職人しょくにん的てきになったり、自己じこ主張しゅちょうが強つよくなったりする。そうしたマイナスを今村いまむら監督かんとくが補おぎなってくれたおかげ」と19年ねんぶりの受賞じゅしょうに喜よろこびもひとしおだった。

　また新人しんじん賞しょうにはプロ野球やきゅう400勝しょう投手とうしゅ・金田かねだ正一しょういち氏しの長男ちょうなん・金田かねだ賢一けんいちが輝かがやき、新風しんぷうを吹ふき込こんだ。

第だい22回かいの受賞じゅしょう者しゃ・受賞じゅしょう作さく

■作品さくひん賞しょう: 「復讐ふくしゅうするは我がにあり」今村いまむら昌平しょうへい監督かんとく
■監督かんとく賞しょう: 今村いまむら昌平しょうへい「復讐ふくしゅうするは我がにあり」; 「久々ひさびさの映画えいがで焦あせりもあった。みなさんの耳目じもくにふれたとすれば、役者やくしゃの火花ひばなを散ちらしたせめぎあいの面白おもしろさじゃないですか」
■主演しゅえん男優だんゆう賞しょう: 若山わかやま富三郎とみさぶろう「衝動しょうどう殺人さつじん・息子むすこよ」; 「金かねもうけや賞しょうをとることを目的もくてきにした映画えいがでなかっただけに、予想よそうもしない受賞じゅしょうは身みに余あまる光栄こうえいです」
■主演しゅえん女優じょゆう賞しょう: 桃井ももいかおり「もう頬ほおづえはつかない」「男おとこはつらいよ・翔とんでる寅次郎とらじろう」「神様かみさまのくれた赤あかん坊ぼう」; 「女優じょゆうになって9年ねん、主演しゅえん賞しょうは初はつ体験たいけんだけにうれしい。賞しょうをもらったとき、よしよしと頭あたまをなでてくれる恋人こいびとも欲ほしいな」
■助演じょえん男優だんゆう賞しょう: 三さん國連こくれん太郎たろう「復讐ふくしゅうするは我がにあり」; 「（倍ばい賞しょうと濡ぬれ場ばを演えんじて）アントン（倍ばい賞しょうの夫おっと・アントニオ猪木いのき）さんに殴なぐられるんでは!?」
■助演じょえん女優じょゆう賞しょう: 倍ばい賞しょう美津子みつこ「復讐ふくしゅうするは我がにあり」; 「一番いちばん喜よろこんでくれたのはアントンよ。私わたしが長ながいすで寝ねていたら、午前ごぜん4時じに起おこされて、みそ汁しるから朝あさご飯はんまで全部ぜんぶ作つくってくれたの」
■新人しんじん賞しょう: 金田かねだ賢一けんいち「正午しょうごなり」; 「（父ちち・金田かねだ正一しょういち氏しから会場かいじょうの息子むすこに電話でんわでメッセージ）オヤジは世間せけんで評判ひょうばんが悪わるいから、せめて息子むすこだけでもみんなから愛あいされるように」
■外国がいこく映画えいが賞しょう: 「ディア・ハンター」マイケル・チミノ監督かんとく
■スタッフ賞しょう: 千葉ちば真一しんいちとジャパンアクションクラブ（日本にっぽん映画えいがのアクション技わざへの貢献こうけんに対たいして）
■特別とくべつ賞しょう: 岩波いわなみホール総そう支配人しはいにん・高野たかの悦子えつこと岩波いわなみホール（内外ないがいの埋うずもれた名画めいがを公開こうかいし、実績じっせきをあげた活動かつどうに対たいして）

邦画ほうがベスト10: あゝ野麦峠のむぎとうげ（山本やまもと薩夫）; 赫い髪かみの女おんな（神代かみしろ辰巳たつみ）; 神様かみさまのくれた赤あかん坊ぼう（前田まえだ陽一よういち）; 月山がっさん（村野むらの鐵太郎てつたろう）; Keiko（クロード・ガニオン）; 衝動しょうどう殺人さつじん・息子むすこよ（木下きのした恵めぐみ介かい）; その後ごの仁義じんぎなき戦たたかい（工藤くどう栄一えいいち）; 太陽たいようを盗ぬすんだ男おとこ（長谷川はせがわ和彦かずひこ）; 復讐ふくしゅうするは我がにあり（今村いまむら昌平しょうへい）; もう頬ほおづえはつかない（東陽とうよう一いち）

洋画ようがベスト10: イノセント（ルキノ・ヴィスコンティ）; インテリア（ウディ・アレン）; 女おんなの叫さけび（ジュールス・ダッシン）; 木靴きぐつの樹き（エルマンノ・オルミ）; 旅芸人たびげいにんの記録きろく（テオ・アンゲロプロス）; チャイナ・シンドローム（ジェームズ・ブリッジス）; チャンプ（フランコ・ゼフィレッリ）; ディア・ハンター（マイケル・チミノ）; ビッグ・ウェンズデー（ジョン・ミリアス）; プロビデンス（アラン・レネ）