先日、訳あって、
欧米の先進メディア事例に学ぶ2009年日本メディア業界の将来図
という講演会に行ってきました。
講師は、ロイター通信の日本法人「トムソン・ロイター・ジャパン」のメディア事業部ゼネラルマネージャー、楠山健一郎氏。トムソン・ロイター社は、世界17カ国でニュースサイトを持っています。欧米の新聞・テレビなどの大手メディアの弱体化を受け、自ら媒体を持つにいたったそうです。
楠山氏ご自身もおっしゃっていたとおり、全体的に広く浅い内容でしたが、いくつかびっくりしたことがあり、大変参考になりました。
まず、アメリカの記者の仕事です。
ノートパソコンを持ち歩く記者が、ニュースの現場からネット向けに出稿し、新聞用の原稿も書き、時にはデジカメの前で動画ニュースも自分で撮って送信する…というところまでは、産経新聞社でも目指していないことはないのですが、さらに加えて、SEM(Search Engine Optimization=サーチエンジン最適化)対策もするという話でした。
SEO対策をするということは、検索サイトに引っかかりやすい原稿を書くということです。それでは読者におもねるばかりになりがちでしょう。
読者をリードすジャーナリズムとSEO対策を両立する術が必要になってくるわけです。
次に広告費。
Emarketer社の昨年12月の予測によると、2011年にはネット広告が新聞広告を逆転する可能性が大きいとのこと。
この流れは、遅かれ早かれ、日本にもくるでしょう。
もっとも、欧米の新聞業界の収入のうち20%が購読、80%が広告。日本は70%が購読、30%が収入となっているそうです。日本の方が購読に頼れる分だけ影響が少ないものの、ビジネスモデルの転換は待ったなしと言って良さそうです。
ただし、楠山氏は慧眼にも、日本の購読による収入は購読を維持するための支出で帳消しになっていると考えていると指摘していました。
続いて、特徴的な3媒体について紹介がありました。3媒体とは、ニューヨークタイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、フォーブスです。
NYタイムズはご存知の通り、1851年創刊の米国で最も伝統のある新聞。発行部数は、110万部。
ところが、株価は2004年の53ドルから、すでに5ドルへ下がりました。S&Pは同社株の格付けを「ジャンク」としているとのことです。
本社は、ニューヨークの一等地もありますが、ビルを抵当にして延命中。保有するレッドソックス株も売りにだしているという苦境ぶりです。
NYタイムズは戦略として、ネットに力を入れており、アメリカのニュースサイトでは1番だそうです。
中でも、先進的な試みの1つは、「オープン化」。
これまで、新聞社は外部にリンクを張りたがらなかったのですが、自社の記事に他紙のサイトへのリンクを張ることにしたそうです。裏サイトを作り、ウォールストリートジャーナルやロサンゼルス・タイムズにリンクを張っています。
ウォールストリートジャーナル(WSJ)は1889年の創刊。ダウ・ジョーンズ傘下にあったが、マードックのニューズ・コーポレーションに買われた。発行部数210万部で、金融情報が強みの新聞です。
こちらは、NYタイムズと違い、有料化路線。1年間89ドルで記事を見ることができ、購読数100万人ですから、年間89億円の収入になります。
もっとも、最近はマードック路線との折衷案で一部無料化が進み、ページビュー数が増え、広告も増加傾向だったとのことです。
フォーブス誌は、1917年創刊の月刊誌。発行部数90万部。ビジネスウィークやフォーチュンなどと並ぶ世界有数の経済誌で、長者番付が有名です。
1996年にフォーブス・ドット・コムを立ち上げて上場し、キャピタルゲインを得たうえ、さらにアグレッシブなサイトの作りをしています。
サイトを開設すると、雑誌の部数が減ると言われていたが、フォーブスは逆に部数を増やしたそうです。まさに、ネットとの両立成功モデルです。ちなみに、フォーブスは紙の編集部とネットの編集部の2つの編集部はいらない、としています。
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by hiro
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