描き手が集まり「梁山泊」
写真の 拡大![共通の仕事場で後輩にアドバイスするヒロユキさんと「コミックギア」の第1号](https://web.archive.org/web/20100427130205im_/http://www.yomiuri.co.jp/g1/b_plus.gif)
共通の仕事場で後輩にアドバイスするヒロユキさんと「コミックギア」の第1号
マンガの成長に行き詰まりが見える中、新しい作り方を模索する動きが出てきた。描き手が集まってコミック誌を出したり、海外向けの作品を戦略的に作ったりする試みだ。(佐藤憲一)
「マンガ誌の作り方 変えてみました」――先月、表紙でそう宣言する「コミックギア」(芳文社)が創刊された。連載マンガ家全員が毎日、東京都内の仕事場に集まって、一つの雑誌を作っているのが特色だ。
製作総指揮を執るマンガ家歴5年のヒロユキさん(27)は、「みんなで技術や知識を共有するメリットは大きい」と仲間に参加を呼びかけた狙いを語る。面白い雑誌作りを目指す有志が集まった、いわば、マンガの梁山泊だ。
アシスタントを含め約40人がかかわり、創刊号の連載陣9人中、4人が若手のプロで5人が新人。最終的な編集権は出版社が持ち、作品も個人が描くが、メンバーは、1日1度、その日できた全員の原稿を回し読み。そこで出た意見を参考に作品を練り上げていく。ヒロユキさんは「従来の編集方法では担当編集者1人の意見しか聞けないが、同業者のさまざまな見方を知り勉強になる」という。
新人の育成という意味でも、利点は大きい。大阪から上京し同誌でデビューした櫻井マコトさん(29)は、「大阪では独学でマンガの描き方を学び投稿していた。『ギア』に参加してパソコンを使った仕上げの方法など、先輩からいろんなことを教わった」と語る。
「コミックギア」は現在流通上は単行本扱いで第2号は11月刊行の予定。来年の隔月刊化を目指している。
今年8月、日本発のマンガ、YOYO『VERMONIA』(全10巻)の第1巻が米英豪3国で出版された。4人の子供が異世界の戦いに巻き込まれていくファンタジーだが、日本では未刊行で、最初から海外市場を意識して作られた。
きっかけは、ベテラン文芸編集者の宮田昭宏さん(65)が、アメリカの児童出版社と日本マンガの新しい刊行方式を模索していたこと。暴力や性表現の規制が厳しい海外では、日本マンガをそのまま翻訳出版しても年齢制限される場合があり、最初から幼い子供も読める配慮をした作品を作ろうという狙いだった。
新鮮な才能を探す中からアニメの専門学校の卒業生、SAKIさん(25)を登用し、彼女を中心とした創作グループ「YOYO」を結成。肌の露出や暴力表現を抑え、日系人、アフリカ系など多様な主人公を配置し人種問題にも配慮した。
いきなり海外で本格デビューすることになったSAKIさんは、「5度、6度と描き直し、難しい面もあったが、海外の人に広く読んでもらえれば」と期待する。イタリアでの出版も決まっている。
(2009年9月28日 読売新聞)
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