子育て応援団 話そう聴こう 育児の悩み
(下)家庭訪問 親の話し相手に
ボランティア「友だち」として
「ホームスタート」を利用した折茂さん親子(左)とボランティア。「訪問してもらい、気持ちが前向きになりました」(東京都清瀬市のピッコロ事務所で)
東京都清瀬市のNPO法人「子育てネットワーク・ピッコロ」は今春、ボランティアが無料で子育て中の家庭を訪問し、話し相手になったり、一緒に家事をしたりする取り組みを始めた。
1歳の長男を育てている同市内の主婦折茂雅子さん(41)は、今月4回、ボランティアの訪問を受けた。地元の子育てひろばでスタッフに声をかけられ、サービスを知った。「昼間は子どもと2人っきりで、子連れでは外出もなかなか大変。行き詰まった感じになりがちでした」
1回の訪問は2時間程度。雑談したり、子どもと一緒に遊んだり、家事をしたり、買い物に出かけたり――。「自宅に来てくれ、一緒に行動してもらえるので心強かった。いい気分転換になりました」と折茂さんは話す。
育児相談は、地域の育児支援施設などで広がっている。ただ、子どもが複数いて外出が簡単ではなかったり、人が集まる場所が苦手だったりする親もいる。家庭へ出向いて、育児の悩みを受け止める訪問型の支援をすることで、施設での支援を補完できる。
この試みは、「ホームスタート」と呼ばれ、1973年に英国で始まった。日本でも「ホームスタート・ジャパン」(東京)が昨年、試行事業を行った。ピッコロのほか全国約10か所で準備が進んでいる。
研修を受けた育児経験者が、定期的に未就学の子どもがいる家庭を訪問する。相手を否定しない「傾聴」を基本姿勢とし、育児の指導者ではなく「友だち」としてかかわる。より専門的な研修を受けた責任者が、訪問家庭とボランティアの状況確認をする。
ピッコロ代表の小俣みどりさんは「最初は暗かった親の顔が次第に明るくなり、育児に対する意欲を向上させる効果は大きい。ボランティアの側にもやりがいがある」と話す。
児童虐待が大きな問題となる中、厚生労働省は、生後4か月までの子どもがいる全家庭に対し、保健師らを訪問させる事業を進めている。ただ、実施は自治体によってばらつきがある。また、対象も乳児に限られる。
大正大学教授で、「ホームスタート・ジャパン」代表の西郷泰之さんは「ホームスタートの活動は、問題が起きる前に支援をするので予防効果も大きい。深刻化しそうな場合は、地域の育児支援施設などとも連携する。行政などの協力を得ながら活動を広げていきたい」と話す。
多様な育児相談の試みが広がってきた。親も悩みを一人で抱え込まずに、さまざまな機会をとらえ、利用してみてはどうだろう。(伊藤剛寛)
(2009年8月29日 読売新聞)