台北
繁華街のマンション11階 周家
広々 装飾スッキリ
台北市に隣接する台北県永和市。人や車、オートバイでごった返す繁華街の一角に、周世育さん(42)一家のマンションがある。周さんは、中国の上海でスポーツ用品を扱う現地企業に転職し、今年4月から単身赴任中だ。代わって自宅を案内してくれたのは、妻の陳慧真さん(41)と、長女の周?凌ちゃん(7)、長男の周代翔君(5)の3人だ。
水墨画が飾られたリビングルームでくつろぐ陳さん(中央)ら
「ここからの眺望が一番のお気に入りなんです」。11階建ての最上階。陳さんがリビングルームから指さす窓の向こうには、台北のランドマークである、508メートルの高さを誇る「台北101」ビルなどが見える。台湾の都市部では、ビルなどの乱立で景観を欠くマンションが一般的だ。これだけの景観は、なかなかお目にかかれない。
「シンプルが一番」との陳さんの好みで、どの部屋も余計なインテリアが置かれていない。空間が広く見える。生活の場というよりは、モデルルームのようだ。
やんちゃ盛りの子どもがいる家庭にありがちな、床に転がるオモチャや絵本などがなぜか見あたらない。陳さんは「遊ぶ場所を決めていますから」と説明してくれたが、それなりに散らかった子ども部屋を見て、ちょっぴり安心させられた。
夫妻は結婚10年目。現在のマンションは、元銀行マンで、しっかり者の周さんが結婚前に実家近くに購入した。そのため、「夕食は実家でとっています」。子どもたちは、祖父母に甘えられ、いとこと遊べるとあって、夜は3人の楽しみの時間だ。家族だんらんを大切にする台湾では、典型的なライフスタイルだ。
父親がいない生活も4か月、2人の子どもも寂しさを募らせているが、間もなく再会できそうだ。生活基盤を整えた周さんから、「上海に引っ越しておいで」と声がかかっているのだ。周さんのように中国で活躍する台湾人は増加中で、中国に単身乗り込んだのも「台湾よりも発展がすごい」(周さん)と判断したため。台北と上海を結ぶ直行便就航で往来も便利になった。
年内にも上海で4人そろっての新生活が始まる。新居はメゾネットタイプのマンション。現在の2倍近くの広さがあり、客室を作り、台湾から親族や友人を招こうと夢を膨らませている。
もう一つの楽しみは自転車遊び。人や車などで混雑する台湾の都会では、子どもが自転車を覚えるのは簡単ではない。新居付近は広々としているといい、「休日は皆でサイクリングを」が合言葉だ。今の家は「そのまま残します。子どもの休暇ごとに帰るつもりです」。やはり愛着のある家は手放せないようだ。(台北 源一秀、写真も)
(2009年7月24日 読売新聞)