マンションで1人暮らし、階下から何度もクレームが…
分譲マンションの5階(築40年、9階建て)で独り暮らしをしています。2年前、1階下に入居する事務所が「水漏れで機材が破損した」とマンション管理会社を通じて苦情を言って来ました。「もしトラブルになったら…」という恐怖心から、よく調べないまま弁償や修理の要求に応じてしまいました。修理した業者の方は「穴の空き方が不自然だった」と話していました。その事務所が、また同じ苦情を言ってきたのです。女の一人暮らしという“弱み”につけ込まれている気がします。マンション管理会社も保険会社も「自分で解決してほしい」と言うのですが、きちんと交渉できるかとても不安です。
(東京都 女性 32歳 会社員)
まずは事実確認、不安があれば法律相談を活用してください
2年前のトラブルと同じ事務所が同じ苦情・・・。事実関係を落ち着いて確認することが第一です。あなた一人での交渉に不安があれば、弁護士に相談して代理人をつけることをお勧めします。
このようなトラブルが発生したら、何よりも事実関係の正確な把握が必要です。具体的にはあなたの部屋の下の階の事務所が「水漏れで機材が破損した」との苦情ですので、まず、専門の修理業者に水漏れがあったか否かについて、その事実の有無を判断してもらいます。
次に、事実があったとして、水漏れの責任があなたにあるか否かを判断してもらいます。裁判で争いになれば、最終的には専門修理業者の鑑定意見で裁判所が判断します。交渉の段階では、2年前と同じ修理業者に現場を見てもらえば、おおよその水漏れの原因が判明すると思います。
2年前と同じ事務所が同一の苦情を言ってきたことや、2年前のトラブルで修理業者が「穴の空き方が不自然だった」との言があったことからすると、今回も要注意のクレームであり、安易に相手方の要求に応じてはいけません。
結論として、あなたは専門修理業者の公正な意見に基づいて、自分に責任がありそうでなければ、断固この事務所の要求を拒否すべきです。
なお、法律的には、今回のトラブルは不法行為になるか否かの問題です。すると、損害が発生したという主張とその根拠となる証拠による証明も、すべてを請求者である事務所の側でしなければいけません。
相手との話し合いによる交渉に不安があるときは、近くの法テラス(日本司法支援センターという国の機関です)で、弁護士が担当している法律相談をまず受けてください。相談は無料です。
その上でも、あなた自身での交渉に不安があるときは、希望すれば弁護士に代理人を委任することもできます。応分の費用はかかりますが、法テラスの紹介ですので、費用も割安になっています。
プロフィール |
青木 孝 あおき・たかし 弁護士 青木孝法律事務所( 東京都中央区八重洲2−11−7 他に 所属弁護士3 人)。 (財)法律扶助協会本部審査委員長、 日弁連法律相談センター 監事等を 経て、 現在、 東京都技術専門学校特別講師。 地方自治体、 銀行総研、 新聞社、 商工会議所など 各団体のセミナー 担当。 著書に『 軽犯罪スレスレ 事典』『 法律を 味方にする 六〇の 知恵』 等、 共著に『 家庭の 法律』『 暮らしの 法律相談室』 等。
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(2009年10月13日 読売新聞)