「米新聞ネット版有料化へ」…ニューズ社マードック会長
ルパート・マードック
ニューズ・コーポレーション会長
オーストラリア・メルボルン生まれ。父親から引き継いだ豪メディア企業ザ・ニューズを積極的な買収策で拡大。1974年に拠点を米国に移し、米映画の20世紀フォックス、英紙ザ・タイムズに加え、2007年にはWSJも傘下におさめた。
(小西太郎撮影)
【ニューヨーク=佐々木良寿】10月5日に都内で開かれる「世界経済カンファレンス」(ダウ・ジョーンズ主催、読売新聞社協力)に出席する米メディア大手ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長(78)=写真=は29日、ニューヨークで読売新聞のインタビューに応じ、新聞のネット版有料化について、「1〜2年以内に(米国内の)どの新聞も有料化に踏み切るだろう」との見通しを示した。
読者は信頼で得られる
【ニューヨーク=佐々木良寿、山本正実】ニューズ・コーポレーションのマードック会長へのインタビューの一問一答は以下の通り。
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――苦境が続く米メディア業界の現状をどう見るか。
「各都市では、地元紙が1紙しか残らないような状況になろうとしている。新聞経営は米経済を反映している。金融危機による広告収入の打撃は、テレビや新聞をはじめあらゆる媒体に及んだ。われわれは極めて困難な時期に直面してきたが、今年7月に回復し始め、ここ数週間で、強い回復がみられるようになった。ただ、失業者は多く、デフレ懸念もある。米経済は力強く回復するだろうが、長い時間がかかる」
――新聞各紙は将来に向け、ネット版の有料化の動きを強めているが。
(小西太郎撮影)
「1〜2年以内にどのメディアも有料化に踏み切るだろう。新聞ばかりか、インターネットや携帯電話、読み取り専用携帯端末など配信手段は多様化しているが、今後もニュースに対する需要の強さは変わらないだろう。高いブランド力と正確さや公正さに対する信頼感があれば、読者を獲得できる」
――ニューズ・コーポレーションがネット有料化に関して他社との共同事業を計画していると伝えられるが。
「選択肢の一つとして検討中だが、1回の課金で5〜6紙のニュースを読めるサービスなら、読者には魅力的だろう。何社かと交渉中だ」
――ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙電子版の日本語サイトをスタートさせるが、中国やインドでの事業展開はどうか。
「WSJ電子版の中国語版やインド版はすでに始めた。インドに関しては、ダウ・ジョーンズのニュース配信部門で、インド専門のビジネス記者を増員した。われわれは経済大国、なかでも安心して事業を展開できる日本やインドなど民主主義国を重要視している」
――鳩山政権をどう見るか。
「首相は、日本が国際社会で独自の役割を果たすのに熱心と見えるが、それでも、米国とは強い友好関係を続けるだろう。ただ、首相が資本主義グローバル化の行き過ぎを批判するのには、全面的には賛成できない。日本はグローバル化の恩恵で成功してきた。私は、開かれた自由市場経済の信奉者だ」
――オバマ大統領への評価は。
「米国が新たなページを開いたとか誰とでも対話する用意があると世界に向けて語ることが、問題の解決に結びつくわけではない。また、米財界は、開かれた市場に好意的ではない政権が突然現れたと見て、神経質になっている」
(2009年10月1日 読売新聞)