前向き人生 貫いて
米大リーグから日本球界に転じて9年。1500本安打を達成した巨人の強打者にして、「ゲッツ!」などのパフォーマンスでもファンを沸かす人気者が、自らの半生を振り返る本を出した。「時間はかかったけど、満足のいく内容だよ」。その言葉通り、シーズン中にもかかわらず、口述した文章に何度も手を入れて完成させた力作だ。
「一番伝えたかったのは、ポジティブ=前向きに生きることの大切さなんだ」。故国ベネズエラの生家は貧しかった。電気代節約のため夜はろうそくをともす日々。食料にするイグアナを狩りにいくこともあった。だが、自らを信じて野球に打ち込んだ末、米プロ球界への道が開かれる。
来日後も、真っ向勝負を挑んでこない日本野球に戸惑ったが、「環境に順応して“チェンジ”することは大事だとわかっていたからね」。その後の活躍はご承知の通り。逆境では米国時代に入信したキリスト教の教えにも支えられた、という。明るい外見の下には、きわめてまじめでクレバーな素顔があるようだ。
本書には、いつか日本で監督になりたいとも記した。「日本野球は大好きだし、外国から来る選手の気持ちもわかるから」。当面の目標である2000本安打の向こうに、もう一つのでっかい夢が待っている。(中央公論新社、1400円)(時田英之)
(2009年9月15日 読売新聞)
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