外債投資もインデックス・ファンドで
株式のアクティブ・ファンドが、平均的に見て、TOPIXなどの市場平均に勝てないことについては、かなり広く知れ渡ってきたようだ。たとえば、日本の株式ファンドマネジャーは市場の平均よりも電気業種の株を多く持ち、金融株を少なく持つような傾向があるので、市場の動きとこうした傾向が合致したときには、アクティブ・ファンドの平均が市場平均を凌駕するデータが出ることがあるが、長い目で見ると、日本のみならず米国でも、アクティブ・ファンドは市場平均、そしてインデックス・ファンドに勝てないことが多い。
その最大の原因は手数料率の違いだ。年間数十ベイシス(1ベイシスは100分の1%)の差であっても、継続的に影響するので、市場平均と戦うファンドマネジャーにとっては重い負担になる。
この傾向は、運用対象が変わっても同じだ。「日本経済新聞」(10月11日朝刊)に「シティグループ世界国債インデックス」をベンチマークとする外債ファンドとして、アクティブ・ファンドの「グローバル・ソブリン・オープン」(運用は国際投信)と、インデックス・ファンドの「PRU海外債券マーケット・パフォーマー」(同プルデンシャル投信)の8年間の運用成績の比較が載っていた。騰落率の累積(分配金は税引き前で再投資を仮定)で47.1%に対し37.5%と、約1割の差を付けて「PRU海外債券マーケット・パフォーマー」が勝っていた。両ファンドは、信託報酬が60ベイシス強(1.31%対0.68%)異なるが、外債とはいえ、債券の運用でこの差は重い。
「PRU海外債券マーケット・パフォーマー」は、外国債券に投資するリテール販売される投資信託としては信託報酬を抑えているが、それでも、債券の運用で68ベイシスの手数料は小さくないと筆者は思っていた。
すると、喜ばしいことに「上場インデックスファンド海外債券毎月分配型」(運用は日興アセットマネジメント)というETF(上場型投資信託)がつい最近上場された。運用のベンチマークは同じく「シティグループ世界国債インデックス」だ。顧客が実質的に負担する信託報酬は年率約0.2625%(税込み)である。
ETFなので取引単位がやや大きい(約50万円から)し、毎月分配という点が資産形成のための運用を考える上では余計だし、分配金の再投資も自動ではできないが、この程度まで信託報酬が下がってくると、一般的な個人の資産運用でも投資を検討していい対象になるだろう。出来立てのETFなので、慎重を期するなら、運用資産額が十分増えるか、売買が活発になるか、といった点を見極めてから投資すべきだが、注目しておきたい。
外国債券は、数十億円単位の資産を持っているのでなければ、投資信託に投資するのが無難だ。最大の理由は、債券投資のポイントである信用リスク(と利回り)の判断が、専門家以外には難しいからだ。より正確にいえば、専門家(債券ファンドマネジャー)の場合はポートフォリオで分散投資することができるので、債券で運用できているといえる。少数銘柄にしか投資できない場合、デフォルト(利払い・元本償還の失敗)が起こると影響が大きいし、すぐにそうならないとしても、信用度が顕著に低下すると流通価格が大きく下がる。その段階で持ち続けるのはリスクが大きいし、売却すると損失が確定する。
また、債券は専門の業者同士の相対取引なので、証券会社の顧客である個人の立場ではフェアな市場価格が分かりにくく、価格の中に大きな手数料を含められてしまうリスクがある。加えて、外債の場合は、為替のやりとりにも手数料がかかる。
何はともあれ、ローコストで運用の中身が分かりやすいインデックス・ファンドに、個人投資家が投資を検討するに値する商品が増えたことは歓迎したい。
(2009年10月16日 読売新聞)