(4)高齢者の代わりに お使いへ
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「元気そうやね」。買物くらし応援団のスタッフ、嵯峨さん(右)は配達先で高齢者の様子にも気を配っている
スーパー元店長 「応援団」結成
「元気そうやね、変わりない?」。富山県高岡市のNPO法人「買物くらし応援団」のスタッフが、配達先の女性に声をかけた。買い物が困難なお年寄りから電話で注文を受け、自宅まで食品などを届ける活動をしているボランティア団体だ。
利用者のひとり、安藤美智子さん(77)は、「歩いて行ける距離に店がなくなってしまったんです」とため息をつく。
近所にあった食品店が2年ほど前に店を閉めた。その後は、手押し車を押しながら、約1キロ先のJR高岡駅近くにある「高岡サティ」まで歩いていたが、そのサティも、郊外に出店した大型ショッピングセンターなどの影響を受けて、今年1月に閉店してしまった。
安藤さんは腰が悪く、長い距離は歩けない。夫(82)は体力の衰えから昨年夏にマイカーを手放した。近くのバス停には、数時間に1本しかバスが止まらない。
今は「応援団」に週2回、食品を届けてもらって暮らしている。「本当に助かっています。でも、自分で買い物に行きたい。新聞折り込みのスーパーのチラシを見ながら、気を紛らわせている」という。
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JR高岡駅の周辺から北に広がる中心市街地や住宅街は、市内でも最も高齢者が多い地域という。「応援団」は、この地域のスーパー「ヒラキストア大坪店」内に事務所を置き、3年前から、周辺約4キロに住む会員に同店の商品などを配達している。配達の手数料は1回100円、年会費1000円。午前中に電話で注文を受ければ、その日の午後に配達する。約140人の会員のほとんどは高齢者だ。
代表を務める能崎博さん(67)は、現役時代、別のスーパーの店長をしていた。定年退職して地域に目を向けたら、自宅近くで小さなスーパーが閉店し、高齢者が遠くの商業施設への往復に苦労していた。能崎さんにはスーパー側の事情もよくわかった。大型店の出店による競争激化で、中小スーパーは経営が厳しい。「配達してほしい」という高齢者の要望は強いが、店にもそれだけの余裕がない。
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そこで「高齢者の手助けをしよう」と昔の同僚らに呼びかけたのが、「応援団」設立のきっかけとなった。現在、スタッフは9人で、定年後の男性が多い。
常連客からの注文が途絶えると、スタッフは電話をかけて安否確認をする。「娘が帰省して買い物してくれたの」。そんな声を聞いてホッとすることもあるが、「体が衰えて料理ができなくなった」「骨折して動けなくなった」というケースが多い。
スタッフの嵯峨幸雄さん(65)は、「ヒラキストア」に買い物に来る高齢者から「もし、歩けなくなったら、うちにも配達をお願いね」とよく声をかけられる。買った商品が重くて持てず、「応援団」に配達を頼んでいく高齢者も多い。
「お年寄りにとって、買い物は本当に大変なこと」としみじみ語る。
(2009年6月5日 読売新聞)