「トキよ再び空へ」 歌手・高岡さん絶唱
江戸東京博物館で29日
「トキが大空を羽ばたいている喜びを表現したい」と話す高岡さん
歌と語りをギターに乗せて独自の世界を紡ぐシンガー・ソングライター、高岡良樹(りょうじゅ)さん(72)が29日、墨田区の江戸東京博物館ホールでのコンサートで、30分を超す代表作「朱鷺(とき)絶唱」を披露する。大作のため演じる機会が少なく、歌うのは2年ぶりになる。国の特別天然記念物トキの野生復帰を願うとともに、自身の目の病もあって「今こそ、この歌を歌いたい」と決意したという。(佐々木大輔)
高岡さんは1962年、ジャズシンガーとしてデビュー。その後、地域に密着した活動に転じ、音楽と語りを交えた「歌物語」という世界を作り出した。
「朱鷺絶唱」は、その代表作で、夫鳥を撃ち殺されたトキが、狩人の目の前で自らの胸をくちばしで突き破り、命を絶つという物語。トキが繁殖し、再び大空を羽ばたくよう願いを込めた作品で、1987年に文化庁芸術祭賞を受賞した。
昨秋、今秋と、野生のトキの復活を目指し、新潟県佐渡市で放鳥が行われる中、高岡さんは、久しぶりにこの歌を歌うことを決めた。今年1月、視界がゆがんだり、視野が狭くなったりする黄斑変性症という目の病気にかかったこともあり、「歌える今、コンサートを開きたい。悲しい物語の中で、喜びの感情を表現したい」と強く思ったという。
コンサートは「平成浄るり」と題し、「朱鷺絶唱」に加え、伊能忠敬の襟裳岬越えを描いた「伊能忠敬物語」、長野県に伝わる民話をもとに乙女の愛を歌う「つつじの乙女」を披露する。高岡さんの長女、潮見佳世乃さんがパーカッションで共演し、チェロや尺八、しの笛などのミュージシャンがバックアップする。
高岡さんは「多くの人を勇気づけるコンサートにしたい。若い人たちもぜひ聴きに来てほしい」と話している。当日は午後4時開演。入場料4000円(当日4500円)。問い合わせは高岡さんの事務所(043・222・0319、正午〜午後6時)へ。
(2009年11月5日 読売新聞)