妻に財布握られ不満
まもなく50歳になる会社員男性。妻と子ども2人。酒もたばこも賭け事もしない男です。そんな私のことを、妻は「つまらないヤツ」と言います。確かに休日は何となく過ごしています。ですが、これは妻のせいでもあります。
私には基本的に一銭も自由になる金はありません。お金は必要になった時、その都度、妻からもらうことになっていますが、決まって「酒もたばこも賭け事もしないのに、なぜ必要なの」と妻に言われます。趣味を持とうとしても、何か買うにはいちいち妻に説明し、納得してもらわないといけません。
気晴らしに地域のボランティアに参加しようとすると、「そんなの一銭にもならない。庭の草でも抜いておいて」といった態度です。反面、子どもには湯水のようにお金を使います。「これから先があるのよ。先行投資ね」と。私は何を楽しみにすればいいのでしょうか。(群馬・K男)
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奥様に言われっ放しのご様子ですが、たまにはい返してやりましょう。「つまらないヤツ」とののしられたら、「そのい方こそつまらない。もっとましな表現はないのか」とか。夫婦生活はお互い様。つまらないならそのつまらなさと共に向き合ってこそ夫婦なのではないでしょうか。
何か趣味を、とお考えのようですが、「趣味」には英語の「TASTE(テイスト)」の意味もあります。つまり娯楽ではなく、「味わい」。ジョギングが趣味という人は、ジョギングを楽しんでいるというより、走る時のつらさ、苦しさを味わうことが好きなのです。習い事にしても「できない」から面白いのであって、すぐにできたら飽きてしまいます。趣味とはいうなれば不完全の面白み。人生も楽しむためではなく、味わうためにあるのではないかと私は思います。
他に「楽しみ」を求めるより、夫婦関係をよくよく吟味してみてください。奥様の言うとおり、庭の雑草抜きもよいかもしれません。雑草も一見つまらない植物ですが、じっくり付き合うと、つまらないものに限って味わい深いものです。
(高橋 秀実・作 家)
(2009年11月7日 読売新聞)