女性の健康Q&A 「骨粗鬆症」<3>
第13テーマ「骨粗鬆症」
質問<3>
実際に骨粗鬆症になってしまった場合、特に専門の外来のようなところがあるのでしょうか?また、どのように治療をするのですか?治療薬にはどのようなものがあるのでしょうか?(50代主婦)
回答は、宮川めぐみ(みやかわ・めぐみ)先生
回答<3>
実際に骨粗鬆症と診断された場合、内科特に内分泌代謝科や老年科、または整形外科で専門にみてもらうことができます。「骨粗鬆症外来」として専門に診断・治療を行なっている病院もあります。骨粗鬆症の治療薬としては骨形成を促進する(より骨をがんじょうにする)ものと、骨吸収を抑制する(骨からカルシウムが溶け出さないようにする)ものとがあります。骨形成を促進するものとしてはカルシウム、ビタミンD、ビタミンK2などがあり,逆に骨吸収を抑制するものとしてはエストロゲン、カルシトニン、イブフラボン、エチドロネート製剤があります。
薬剤による治療効果の指標には骨密度を測定したり、血中や尿中の骨代謝マーカーを測定したりします。実際、骨密度の上昇や骨代謝マーカーの改善は骨折をおこすリスクを減らすことがわかっています。最終的に骨折を起こすかどうかを調べた臨床試験の結果からは、椎体骨折(注1)を抑制する治療薬として、経口ビスホスホネート(アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート)、塩酸ラロキシフェン、活性型ビタミンD、エストロゲンの有効性が確認されています。また、大腿骨近位部骨折を主とする非椎体骨折を抑制する治療薬として、アレンドロネートとリセドロネートおよびエストロゲンの有効性が確認されています。またこれらの薬で治療することで、腰痛など慢性的な痛みが改善することもしばしば経験されています。治療後の効果判定の中で、骨密度の変化は治療後6か月目以降に認められますが、骨代謝マーカーは数か月目から変化が現れます。最も大きく低下する治療薬はビスフォスフォネート製剤であり、次いでエストロゲン、その次がラロキシフェンであるといわれています。
骨粗鬆症の質問1の回答でも述べましたが、骨粗鬆症の危険因子といわれるものには、以下のようにさまざまな要因があります。遺伝的因子、病気によるやむを得ないもののほかに、自分でコントロールが可能な生活習慣、また無理なダイエットなどがありますので、薬剤による治療以外にも、いろいろ自分でできる点は日常生活の中で積極的に取り入れていってください。
(1)遺伝に関係するもの ― 閉経の時期、痩せ型、家族歴、人種
(2)病気に関係するもの ― 卵巣の病気、胃切除、糖尿病、 甲状腺機能亢進症、高カルシウム尿症、 ステロイド剤(グルココルチコイド剤)投与、 原発性副甲状腺機能亢進症、腎不全
(3)生活習慣に関係するもの ― 運動不足、多量のコーヒー カフェイン・アルコール摂取、喫煙、日光照射不足、塩分過多
(4)無理なダイエット ― カルシウムやビタミンDをはじめとする種々の栄養不足
また、骨粗鬆症による骨折が生じた場合、高齢者ではその後の生命予後まで低下するといわれています。実際に大腿骨頚部骨折があると骨折後の死亡する相対危険度が7倍に増加するともいわれています。普段から骨折しないよう足腰を鍛える運動を取り入れ、天気のよい日には日光を浴びながら外出したり、普段の食事内容や嗜好品にも気をつけて、元気で楽しく老後を過ごしましょう。
注1) 推体骨折(ついたいこっせつ): 推体とは背骨を構成する臼状の骨で24個が弓なり連なっている。推体骨折とはこの推体がつぶれるようになる骨折のことをいう。
プロフィール
宮川めぐみ(みやかわ・めぐみ) 東京女子医大を卒業後、東京女子医大内分泌センター内科に勤務。助手、講師を経て平成16年より虎の門病院健康管理センターに勤務。現在同病院の内分泌代謝科に所属し、甲状腺や糖尿病などの代謝疾患の診療にあたっている。平成16年より東京大学腎臓内分泌代謝科の非常勤講師を兼任。また厚生労働省の薬事食品衛生審議会専門委員も担当している。医学博士号、日本内科学会認定専門医、日本内分泌代謝専門医・指導医、日本超音波医学会認定超音波専門医・指導医、マンモグラフィー読影専門医などの資格をもつ。
(2009年11月6日 読売新聞)