マツイ世界一 大願成就
ヤンキース世界一の瞬間、拍手や万歳をして優勝を喜ぶ来館者たち(能美市山口町の松井秀喜ベースボールミュージアムで)影
石川が生んだ大打者、米大リーグ・ヤンキースの松井秀喜選手が、ついに世界の頂点をつかんだ。第6戦ではチームの優勝を決定づける大活躍で、シリーズ最優秀選手(MVP)にも選出される快挙。「世界一になるため」に日本を飛び出した“背番号55”に、県内のファンからは「石川県の誇りだ」と惜しみない祝福が送られた。
■地元
能美市山口町の「松井秀喜ベースボールミュージアム」では、来館者約20人がテレビの前にくぎ付けになり、優勝の瞬間には、拍手や万歳をして歓喜の声を上げた。津幡町加賀爪、無職谷口一隆さん(70)は「(松井選手は)石川の誇りです。こんなにうれしいことはない」と、拍手していた。
松井選手にちなんだ「怪物ホームランパイ」などを販売する能美市大成町の菓子店「清水屋」の店長山田功夫さん(64)は「松井選手といえばホームラン。そのイメージ通りのワールドシリーズだった。早速、ホームランパイの問い合わせもあった。これからは、いつもより多く店に並べたい」と意気込んでいた。
■両親
「マツイコール」に包まれたヤンキースタジアム。その興奮の真っただ中の一塁側スタンドで、松井選手の父昌雄さん(67)と母さえ子さん(59)は、歓喜の瞬間を見届けた。
松井選手は、今季もひざの痛みに苦しんだが、昌雄さんはシーズン中、ずっとメールで激励を続けた。松井選手も、その度に「ありがとう」と律義にメールを返してくれたという。昌雄さんは「契約最終年でプレッシャーもあっただろうが、最後に最高の結果を出せて、充実したシーズンを送れたと思う」と話し、「実家に戻ってきたら『今年1年、素晴らしかったよ。本当にご苦労さま』とねぎらいたい」と話していた。
■恩師
母校・星稜高(金沢市)では、山下智茂野球部総監督も興奮を抑えきれず、すぐに、携帯電話で祝福メールを送った。1打席目の先制2ランを「感動的で最高だった」とたたえ、「(自分が)ガッツポーズしました」と笑った。
山下総監督は「今年は本当に表情が良かった」と振り返り、「僕も松井も飲めないが、コップ一杯くらいは乾杯したい」と、早くも正月の教え子との祝杯を心待ちにしていた。
根上中時代の野球部コーチで能美市職員の高桑充裕さん(46)は「チャンスに強いあの子らしさが出た。代打出場が続き悔しい時期もあっただろうが、MVPは自分で勝ち取った栄誉。本当に素晴らしい」と感慨深げに話し、「もう『すごいやつだ』の一言に尽きる」と教え子に感服した様子だった。
(2009年11月6日 読売新聞)