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北総線5%値下げ…千葉
地元負担年3億円「成田新高速」開業機に
5%の運賃値下げで合意した北総線
北総線の運賃問題で、千葉県の森田知事は5日、来年夏頃までに予定される成田新高速鉄道の開業に合わせ、運賃を約5%値下げすると発表した。
北総鉄道の親会社・京成電鉄と交渉していた国土交通省が提示した調整案を、千葉県と沿線自治体が了承した。値下げに伴う北総鉄道の減収分として、千葉県と6市2村が年間計3億円、京成電鉄と北総鉄道も合わせて同額を負担する。
千葉県交通計画課は、値下げ後は初乗り運賃が現行200円から190円、京成高砂―印旛日本医大間は820円から780円になると試算している。通学定期の割引率は沿線市村全域で60%から70%になるが、通勤定期は現行より1%程度の割引にとどまる見通し。
運賃問題は、北総線を走行する成田新高速鉄道の開業予定が迫ったのを契機に2007年11月頃から議論が本格化した。今年9月、千葉県と沿線市村は年間計4億円を北総鉄道に支援し、京成側にも同額の負担を求め、運賃の最低5%値下げなどを目指す内容で合意。京成側や前原国交相に、この枠組みを了承するよう要請していた。
しかし、京成側が年間約4億円を負担することに難色を示し、千葉県などが譲歩することになった。このため、北総鉄道への支援額は年間6億円になり、値下げ幅は要請より小さくなる。
この日、値下げを発表した森田知事は「(国の調整案を)受け入れることで合意した。もちろん地元市村が十二分に満足する案ではないが、更なる運賃値下げへの大きな第一歩と考え、これからも働きかけたい」と話し、今後も運賃5%以上の値下げを求める方針を示した。要請では5年での見直しが明記されていたが、調整案では期限が削除された。知事は「一応5年と考えている。それでその後、頑張って更なる見直しができたらいいなと考えている」と述べるにとどまった。
◆「下げ幅小さい」不満の住民団体 決裂回避、評価する声も
北総線の運賃値下げに向けた千葉県や京成電鉄などによる支援の枠組みが固まり、難色を示す京成側を押し切ってこぎつけた合意を評価する一方、値下げ幅が小さいことへの不満の声が地元から相次いだ。
補助金による経営支援ではなく、出資方式による支援を主張していた白井市の横山久雅子市長は「ほぼ絶望的であった枠組みが再構築され、安堵(あんど)している。さらに北総鉄道の過去の建設コストを利用者が高運賃で支払い続ける仕組みの是正も必要」と指摘した。
値下げを求める約10万人分の署名を国交相に提出した「北総線の運賃値下げを実現する会」の吉田治男会長は「沿線住民は本当に困っている。5%の値下げでは話にならないし、知事の実績とも言えない。今後も活動を継続したい」と憤る。同会は5日午後、千葉県の担当部署を訪れ、北総鉄道の債務圧縮など抜本的な解決策を求めたという。
沿線自治体で最大の年6750万円を負担する印西市の山崎山洋市長は「値下げの実施時期が来年4月ではないなど、不十分な点はあるが、総合的に判断し、この案を受け入れた。さらなる運賃値下げの余地は残されているのではないか」と注文をつけた。
◆渋る京成に妥協 完全解決程遠く
北総線の運賃問題は、千葉県や地元自治体が難色を示す京成電鉄に妥協する形で決着した。約5%の運賃値下げに対する沿線住民の不満は根強く、運賃問題が解決したとはいえない。
特定の民間事業者を税金で支援することに賛否はあるが、過去の建設費の償還に伴う経営難のつけを沿線住民が負わされてきただけに、さらなる運賃の値下げを求める声は大きい。
鉄道運賃を巡っては、国土交通省が認可権を持ち、京成側が主導権を握る。蚊帳の外に置かれた千葉県は、成田新高速鉄道の開業により北総鉄道の収益が改善されると見込み、「さらなる値下げも期待できる」(千葉県交通計画課)としているが、具体的な見通しは立っていない。
就任時から10%以上の値下げを訴えてきた森田知事は、今回の合意は「大きな第一歩」と位置付けたが、その言葉を忘れないでほしい。(八角一紀)
(2009年11月7日 読売新聞)