晩秋散歩 わたし流
色づく街 空から一望 ヘリ遊覧
秋も深まり、季節は冬へと移ろうとしている。年末の慌ただしさが始まる前のひととき、手軽に楽しめる小さな旅に出かけてみてはどうだろう。行く秋を惜しみ、気分を大いにリフレッシュしたい。
ヘリから眼下に見える大山古墳(16日、大西健次撮影)
鳥になった気分で非日常の世界を味わった。ヘリコプターの遊覧飛行だ。街の中でも大パノラマで紅葉を楽しめると聞き、今月中旬、ヘリコプターの遊覧飛行会社「小川航空」(大阪市)を訪ねた。
同社でパイロット歴約15年の枡田英樹さん(46)の操縦で大阪湾の人工島・舞洲の「舞洲ヘリポート」を出発。わずか数十秒で上空300メートルに達し、時速200キロで湾岸エリアを南下した。ジオラマのような街並みに突如現れたのが百舌鳥古墳群(堺市)。中でも国内最大の前方後円墳・大山古墳(仁徳天皇陵)は圧巻だった。
「わっ、きれい」。同乗した女性会社員(27)がカメラを手に歓声を上げる。丘陵を覆う樹木が赤や黄に鮮やかに色付いていた。その後、北上して見た大阪のメーンストリート・御堂筋のイチョウ並木は黄金の帯のよう。大阪城と紅葉の絶景も堪能し帰路についた。あっという間の20分間。「空気が澄んだこの時期、紅葉や夕焼けの美しい情景につい見とれてしまいます」と枡田さん。高所恐怖症の記者はヘリコプター初搭乗だったが、興奮のあまり怖さも忘れていた。
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眼下に見える御堂筋。黄色の帯が見ごろを迎える(16日、大西健次撮影)
同社のヘリコプターの遊覧飛行は年間約3000人が利用する。利用者の要望でコースを設定でき、リピーターも少なくない。
さいたま市の2級建築士高井優一さん(25)もその一人。大阪市内に実家がある高井さんは今年の元日、ヘリコプターで初詣でをしようと同市の大阪天満宮を巡るコースを両親と弟、祖母の4人にプレゼントした。父親の幸造さんは末期のがんだった。「初詣での人ごみで父に負担をかけたくなかった」と高井さん。
わずか12分の飛行だったが、家族5人で空の旅を満喫した。参拝客で込み合う大阪天満宮上空では一緒に手を合わせた。病院に戻った幸造さんは「息子のプレゼントや」と看護師に自慢していたという。幸造さんは8月に他界。「父も喜んでくれたと思います」
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東京都心などの空撮で知られる写真家の渡部まなぶさんは「限られた時間を有意義に過ごすためにも、晴天の予報の日を選んで予約し、地図を手に見たいスポットを探すなど、各自で工夫してみて」とアドバイスする。
料金は少々高めだが、間違いなく気分転換できるし、親しい人と最高の思い出を作れると感じた。(岩浅憲史)
貸し切りコースも
ヘリコプターの遊覧飛行は各地に登場している。小川航空では相乗りや貸し切りができ、大阪城などを巡る5コースを展開。大人3500円(約3分)〜。貸し切りの場合、1分ごとに5250円で延長可能。エクセル航空(千葉県浦安市)では東京や横浜、浦安上空の7コース。大人4000円(約5分)〜。朝日ヘリコプター(東京都江東区)では東京・銀座、新宿上空の2コース、大人9000円(約10分)〜。セコ・インターナショナル(名古屋市)では名古屋城や名古屋テレビ塔などを巡る8コース。2万円(約7分、貸し切り、3人まで)〜。
(2009年11月25日 読売新聞)