母親が殺人容疑で再逮捕された大阪市の2児虐待死。事件からどんな課題が浮かんだのか。
事件発覚2カ月半前の5月18日早朝。現場マンションの近隣住民から「子供が泣いている」と通報があった。児童相談所の職員が訪れたのは約10時間後の午後4時ごろ。通報はその前と合わせ計4回あったが、2児の存在さえ把握できなかった。
虐待通報は24時間受けているが、夜間や早朝は職員を自宅から呼び出すため対応が遅れがちだった。教訓として市は児童相談所に児童福祉司らが24時間常駐する方針を決め、緊急時は市消防局の救助隊らが急行し強制的に立ち入って安否確認する全国初の制度導入も決めた。市は「消防法の人命救助に関する規定を広く解釈すれば可能」と説明するが、総務省消防庁は「消防法は火災や救急搬送の要請を想定している」と難色を示す。
一方、児童相談所の職員が4、5月に家庭訪問した際、連絡を求めて集合ポストに残した手紙は室内の簡易キッチンで見つかった。母親は手紙を手にしながら自ら連絡を取ろうとはしなかった。昭和22年の児童福祉法制定以来、福祉的アプローチを基本としてきた児童相談所だが、事件が浮き彫りにしたのは従来の福祉の「支援」にさえ近づかない母親たちの存在だった。
警察幹部は「早期の連絡があれば救えたかもしれない」。児童相談所との連携強化に取り組むが今回連絡はなかった。現行の児童虐待防止法で警察の役割はあくまで児童相談所の「援助」。厚生労働省によると児童相談所の援助要請による警察官の同行は平成19年度の342件から20年度は255件に減った。
警察庁によると、警察と児童相談所・児童福祉部局は24都道府県で人事交流してきたが、必ずしも連携が進んでいない現実も今回、明らかになった。
特集 【児童虐待を考える】